海自部隊も迅速に協力

 北部航空方面隊司令官は、第1救難区域指揮官として、ただちに「救難運用本部」(ROC)を開設します。ROCは通常の場合、方面隊の指揮所である「作戦指揮所」(SOC)の中に開設されます。

 墜落の可能性が懸念されたため、ROCは、即座に関係部署、特に救難を専任とする救難隊に連絡したはずです(今回の場合、時刻が19時27分頃なので、当直であったかもしれません)。

 指揮系統としては、救難隊は方面隊司令官の指揮下にはありません。航空総隊、そして航空救難団の指揮を受けているため、正式な航空救難の命令は、総隊、そして航空救難団が出すことになります。ただし、“統制”と呼ばれる実質的な指揮は区域指揮官が行いますので、救難隊は区域指揮官から連絡を受けた段階で緊急発進の準備を始めたはずです。

 今回の場合、航空救難を専任とする救難隊が三沢基地には存在しないため、初動は、近隣の松島基地(宮城県東松島市)と秋田分屯基地(秋田市)から発進した模様です。また、洋上にいる海自艦艇も、航空救難の大きな力となるため、ROCは、関係部隊として海自部隊に通報するとともに協力を依頼したでしょう。航空救難に関しては、相互に協力することが定められており、今回も海自部隊は、救難隊にほとんど遅れることなく(わずか3分後に)迅速に協力を開始したようです。また、協力を期待できる米軍や海保にも連絡します。

「ベイルアウト」した位置はどこか?

 洋上で捜索・救難にあたるのは、こうした救難隊の航空機や、海自などの艦艇および航空機ですが、ROCには非常に重要な仕事があります。それは、捜索すべき場所を決定し、捜索にあたる各種ユニットの分担を決めることです。

 レーダーロスト(レーダーから消失)した場所が分かっているのだから捜索は簡単だろうと思う人が多いかもしれません。しかし、それほど単純ではありません。というのも、地球が球形であることから、地上のレーダーサイトからは低高度が見えないのです。そのため、レーダーから消失した地点は上空なのです。他国の例では、乗員が脱出した航空機が、そのまま飛び続けて別の国まで飛んで行ってしまったなどという事例もあります。