解答編
問題
複素数 α, β, γ, δ および実数 a, b が、次の3条件を満たしながら動く。
条件1: α, β, γ, δ が相異なる。
条件2: α, β, γ, δ は4次方程式 z4−2z3−2az+b=0 の解である。
条件3:複素数 αβ+γδ の実部は 0 であり、虚部は 0 でない。
(1) α, β, γ, δ のうち、ちょうど2つが実数であり、残りの2つは互いに共役な複素数であることを示せ。
解答
(1)
条件3より、 α, β, γ, δ がすべて実数になることはない。なので、少なくとも1つは虚数である。
α を虚数としてよい。このとき、条件2から、 α は実数係数の4次方程式の解なので、共役複素数 ¯¯¯¯α もこの方程式の解となる。よって、 β, γ, δ のどれかは、 ¯¯¯¯α と一致する。
もし、 β=¯¯¯¯α だとすると、 γ, δ は、ともに実数か、互いに共役複素数の関係にあるため、 αβ+γδ は実数となってしまう。これは、条件3を満たさない。
よって、 γ, δ のどちらかが ¯¯¯¯α と一致する。 γ=¯¯¯¯α として一般性を失わない。
ここで、もし、他の2つも虚数なら、 δ=¯¯¯β なので、
¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯αβ+γδ=¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯¯αβ+¯¯¯¯¯¯¯αβ=¯¯¯¯¯¯¯αβ+αβ=αβ+γδとなるため、 αβ+γδ は実数となり、条件3を満たさない。よって、 δ=¯¯¯β とはならず、 β, γ はともに実数となる。
以上から、 α, β, γ, δ の中には、ちょうど2つ実数があり、残りの2つは互いに共役な複素数であることがわかる。
((1)終)
解答編 つづき
問題
(2) b を a で表せ。
解答
(2)
(1)での議論から、 α, β のどちらかが実数でどちらかが虚数であり、 γ, δ のどちらかが実数でどちらかが虚数であることがわかる。
よって、実数 p,q,r,s を用いて、 α と β は、どちらかが p+qi でどちらかが r であり、 γ, δ は、どちらかが p−qi でどちらかが s である、としてよい。ただし、 q≠0 であり、条件1より r≠s である。
αβ+γδ=r(p+qi)+s(p−qi)=p(r+s)+q(r−s)iであるから、条件3より、 p(r+s)=0 である。
条件2から、α, β, γ, δ は、 z4−2z3−2az+b=0 の解であるから、この左辺は
(z−p−qi)(z−p+qi)(z−r)(z−s)={z2−2pz+(p2+q2)}{z2−(r+s)z+rs}と一致する。
ここで、 z2 の係数を比較すると
(p2+q2)+rs+2p(r+s)=0が得られる。先ほど、条件3から p(r+s)=0 が導けていたので、これより、p2+q2=−rs⋯ (∗)が得られる。
続いて、 z3 の係数を比較すると
−2p−(r+s)=−2が得られる。条件3から p(r+s)=0 だったので、 p=0 とすると r+s=2 であり、 r+s=0 とすると p=1 であることがわかる。
定数項から
rs(p2+q2)=b−r2s2=bが得られる。
最後に、 z の係数を比較して
−2prs−(p2+q2)(r+s)=−2a−2prs+rs(r+s)=−2ars{−2p+(r+s)}=−2aが得られる。 p=0, r+s=2 のときは、この式から a=−rs が導かれ、 p=1, r+s=0 のときは a=rs が導かれる。どちらの場合も、 r2s2=a2 なので、b=−r2s2=−a2となる。
((2)終)
解答編 つづき
問題
(3) 複素数 α+β がとりうる範囲を複素数平面上に図示せよ。
解答
(3)
ここまでの議論から、 α,β のどちらかは複素数で、どちらかは実数であることがわかる。以下では、(2)と同じ記号を用いる。
(i) p=1, r+s=0 のとき
(*)より、1+q2=−r(−r)=r2が成り立つ。これを満たす r,q のうち、 q≠0 となるものを1組定めると、複素数 α, β, γ, δ と実数 a,b が定まり、3つの条件を満たすことがわかる。
α+β=X+Yi とする(X, Y は実数)と、1+r=X,q=Yであることから
1+Y2=(X−1)2(X−1)2−Y2=1が得られる。
(ii) p=0, r+s=2 のとき
(*)より、q2=−r(2−r)=(r−1)2−1が成り立つ。これを満たす r,q のうち、 q≠0 となるものを1組定めると、複素数 α, β, γ, δ と実数 a,b が定まり、3つの条件を満たすことがわかる。
α+β=X+Yi とする(X, Y は実数)と、r=X,q=Yであることから
Y2=(X−1)2−1(X−1)2−Y2=1が得られる。
以上より、複素数 α+β がとり得る範囲は、双曲線 (X−1)2−Y2=1 から Y=0 となる点を除いた部分となる。

(終)