F35墜落、原因究明を阻む「日米間のブラックボックス」の実態

日本に責任が押し付けられる可能性も…
半田 滋 プロフィール

このまま導入を進めていいのか

もうひとつ懸念されるのは、「現代ビジネス」でも以前指摘した通り、F35Aが「未完成の機体」ということである(2017年10月5日、「自衛隊の次期戦闘機・F35 、実は『重要ソフト』が未完成だった」

米会計検査院(GAO) は昨年1月、F35に未解決の欠陥が966件あると発表した。このうち少なくとも180件は、国防総省の計画によれば、フル生産前に解決されない見通しとなっている。

966件の欠陥のうち、111件は「安全性や重要な性能を危険にさらす問題」とされ、残りは「任務遂行に支障を及ぼす問題」だった。

一昨年6月には、ルーク空軍基地に所属するF35Aで操縦士が酸素不足に陥る事例が5件も発生。いずれも低酸素症のような症状を示したものの、予備の酸素を使って機体を安全に着陸させた。「息ができない戦闘機」が事故を起こさなかったのは奇跡である。

 

そもそもF35は開発が大幅に遅れ、すでに開発を始めてから20年近く経過している。米軍は試験運用を続けながら改修し、完成に近づける「スパイラル開発」と呼ばれる手法をとっている。つまり、未完成のまま使い続けているのだ。

米軍は開発終了を急ぐあまり、肝心な安全性の確認を疎かにしてはいないだろうか。また、それはステルス機を渇望し、ライバル機との飛行テストを排除して、カタログ性能だけでF35Aを選択した航空自衛隊にも共通の問題ではないか。

航空自衛隊はこのF35Aを42機導入するが、昨年12月の閣議了解と合わせれば今後63機を追加導入し、105機まで増強される。さらに、空母化される護衛艦「いずも」に搭載するため、垂直離着陸ができるF35Bも42機導入することになっている。

このF35Bにはすでに墜落の前例があり、昨年9月、米サウスカロライナ州で米海兵隊機が墜落している。幸い死者はなかったが、エンジン燃料管の不具合が原因とみられ、米軍はF35B全機を一時飛行停止とした。

F35Aの追加、そしてF35Bの導入を提言したのは航空自衛隊ではなく、自民党国防族だった。これを丸飲みして導入を決めたのは、安倍政権である。勇み足だったのではないだろうか。

次々にF35を導入したとしても、FMSという理不尽なしくみが、今回の事故原因の調査にまで影響を及ぼす可能性もある。事故の原因が明らかになるまでF35の導入は当面、見合せるべきだろう。F35にこだわるのをやめ、戦闘機の選定をやり直すのもひとつの方法ではある。