OECDと連携:デジタル課税、国際ルール化 米国案軸に検討、G20で方向性

» 2019年04月05日 06時00分 公開
[SankeiBiz]
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 世界的なIT企業の課税逃れを防ぐ「デジタル課税」の国際ルール作りに向け、経済協力開発機構(OECD)が、ブランド力といった無形資産から生じる利益に課税する「米国案」を軸に検討を始めたことが3日、分かった。OECDと連携して検討を進めている20カ国・地域(G20)の今年の議長国である日本の財務省は、6月の財務相・中央銀行総裁会議でルールの方向性を示す考えだ。ただ、消費者がいる国の課税権が強くなりすぎるなどの懸念があるため、課税対象の絞り込みや税額の計算方法の簡素化も議論する。

photo 国境を超えたネット配信などでさまざまな国の消費者から利益を得ているGAFAに対する不満は根強い

 ルール作りの念頭にあるのは、グーグル、アップルなどの頭文字を取り「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる米IT大手4社。国境を超えたネット配信などでさまざまな国の消費者から利益を得ているが、「自国内に工場などの恒久的施設(PE)がない企業には課税できない」とする従来のルールでは、消費が行われた国で十分な課税ができないなどの問題が出ている。

 ルール作りに向けては、OECDが2月、主要な検討案を公表。このうち米国の案は、ある国での市場拡大に役立った「ブランド力」「顧客リスト」といった無形資産を評価し、それに応じて各国に課税権を配分すべきだと主張している。一方、英国の案は、GAFAなどがネット上のサービスで利益を上げるのに寄与した利用者の「個人情報」を評価し、それに応じて課税すべきだとした。個人情報には閲覧や購買の履歴などが想定されている。

 ただ、英国案には「ダミー登録のユーザーなどがいる中、精緻にデータを集められるのか」といった批判が強く、米国案が「議論の余地がある」(経団連)として有力視されている。

 3月、パリで各国政府や経済界関係者ら約400人が集まり行われた公聴会では、経団連関係者が米国案を「有力」とした上で、課税対象が広がり過ぎるのを防ぐため、「(業種の)一定の絞り込みが必要」と主張。課税権配分にあたっての企業の利益の計算では、「より簡素な計算方法を選べる余地を残すべきだ」とした。他国からも米国案を有力視する声が相次いだ。

 また、ブランド力などの無形資産だけでなく、企業が本国などで行う研究開発も利益に貢献することから、経団連は研究開発活動を重視すべきだと提言。同様の意見は欧州の製薬大手や自動車大手などからも上がった。

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