Ⅲ 彗星を追ってハワイへの旅 3月10日の22時。関西空港を発ってから2時間ばかり経過した頃だ。座席が右側の窓際だったことを幸い、星が見えるだろうかと外を覗いてみた。しかし1つの星も見えず眼下は一面の、まるでじゅうたんを敷き詰めたような雲だった。時々雲が切れるが1万500米の上空から見た太平洋の海は眠っている。ただ暗いだけで1つの明かりも見えぬ。あきらめて寝ようとしたがエンジンの音が高くてなかなか寝つかれない。さらに1時間くらいして、室内灯が消えたのを機にもう1度窓外に目をやった。そこには驚くべき光景が私を待っていた!ケンタウルス座の星であろうか。南天で日本から馴じみの薄い星座であるが、20度ばかりの広大な空間に、まるで全部の星が1等星であるかのごとく、ものすごい輝きをもって暗黒の宇宙空間に展開しているのである。成層圏に近い高空を、偏西風に乗って飛ぶ関係か、機体は実に安定し、翼の尖端にくっついた2等星が翼から一向に離れようとも隠れようともしない。そして、そのケンタウルス座からさらに南に目を転ずると、なつかしい南十字の星が水平からはるか下に見えている。 |