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なつよ さあ 始まる。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
♪~
♪~(笑い声)
♪~
(拍手)
♪~
(夕見子)ねえ 何してるの?
(なつ)えっ?
もしかして 漏らしたの?
私は ずっと我慢してた。
先 行くね。
天陽君!
あっ 郵便屋さん。
(正治)やあ 君は 柴田牧場さんとこの…。
天陽の友達だったのか。はい。
(天陽)えっ 知ってるの?
うん 手紙を… ね。
あの まだ来ませんか?
うん… そうみたいだね。
来たら すぐに届けるから。
あなたが 東京から来た子ね。
はい。いろいろ 大変なことがあったんでしょうね。
天陽と 仲よくしてやってね。
はい。 あっ 面白かったね!
えっ?漫画映画 すごく面白かった!
あっ そうか。天陽君は 面白くなかった?
そんなことないよ。前見たのは 白黒だったけど今のは天然色だったし。色が すごくきれいだった。
やっぱり アメリカの映画は進んでるなあ。
兄ちゃんが言ってたけど アメリカにはディズニーっていう漫画映画があるんだって。
それは すごいらしいよ。わあ~ 見たいなあ。
しかし 恐ろしい爆弾も作ればああいうものも作るんだからな。
学校も すぐに アメリカ礼賛っていうのはどうなんだろうな。
さんざん 鬼畜米英だと教育しといて。あなた…。
(剛男)なっちゃん 帰ろう。 夕見子は?
お便所。あ~…。(富士子)あら 郵便屋さん。
こんにちは 柴田さん。山田の家内です。
いつも 学校で 息子がなつさんと仲よくしてもらってるようで。
ありがとうございます。こちらこそ。
なんだ そだったの?
はい。それじゃあ これで。
さようなら。 失礼します。さようなら。
今度 うちに 遊びに来いよ。えっ?
うちに 絵の具があるんだ。絵を描かしてやるよ。
本当に? いいの? 行っても。いいよ。
天陽 あんな家に 柴田さんのお嬢さんを招くなんて 失礼だぞ。
ダメですか?
あの~ もしよかったら 是非。
あっ… そりゃ もちろんうちは構いませんが。
はい… いつでも どうぞ。
♪~
それから ある日のこと。学校帰りに なつは天陽君と一緒に その家に向かいました。
天陽君の家は 本当に小さな家でした。
こっちは 馬小屋なんだ。 行こう。うん。
わあ~ すごい!
これ 天陽君が描いたの!?
違うよ。 それは 兄ちゃんが描いたんだ。
お兄さんが?うん。
中学で 美術部に入ってるんだ。
兄ちゃんの絵 すごいだろ。
父さんも 兄ちゃんのために無理して 絵の具を買ってるんだ。
僕の絵は こっちだよ。
ここで 死んだ馬を描いたんだ。
だから黒いの?そういうわけじゃないよ。
黒い絵の具は赤や黄色よりも安いんだって。
それに あんまり 兄ちゃん使わないから。
何か描く?
ここにあるやつ どれ使ってもいいって兄ちゃんに言われてるんだ。
あっ… いいよ。
せっかく来たのに。
遠慮するなよ。 絵 描きたいんだろ?
また 今度。
今日は 天陽君の絵を見られただけで満足。
そっか。
貧しくて驚いたろ?そんなことないよ。
私なんて ずっと家がなかったんだから。そっか。
頂きます!
冷たくておいしい!
畑が うまくいかないから… ダメなんだ。
えっ?
ここは いくら耕しても土が悪いと言われて父さんは もう耕す気もなくなってしまったんだ。
そうなの?
それで 父さんはなんとか 郵便局の仕事を見つけて母さんは 近くの畑を手伝って食べ物をもらってくるんだ。
それも 今年の秋までのことかもしれない。
えっ?
ここを離れるんだ。
東京に戻るの!?
分からない。だけど もう ここにはいられないよ。
作物が育たなければ捨てるしかないよ こんな土地。
せめて あの馬が生きていたらな…。
俺の力じゃ どうすることもできない!
農家にとって 馬の力は欠かせないんだ。
悔しいけど…。
チクショー! チクショー!
天陽君は 農家をやりたいの?
そりゃ やりたいよ!俺は ここで生きたいんだ!
ここが好きなんだ!
この土に勝ちたいよ! 勝ちたい…。
くそ~! くそ~! くそ~!
あ~!
♪~
(悠吉)それは 拓北農兵隊だな。
たくほくのうへいたい?何ですか? それ。
ああ 剛男さんは戦争に行ってて知らんでしょう。
つまり 日本の政府が空襲で 家をなくした東京の人に北海道へ行って開拓しなさいよと勧めたってわけです。
なっちゃんの同級生もそんで ここ 音問別に来たんだべ。
(菊介)けど 今更来たって まともな土地はみんな 開拓されたあとでもう人が住んでるのさ。(剛男)そうだろうねえ。
(菊介)結局 たくさんの人がもう東京に帰ったって話だけどね。
しかたないもな。食うもんが作れないんじゃ。
なっちゃん?
(泰樹)ん? 何だ。
あの… お願いがあります。
天陽君を助けて下さい。
何 助ける?畑で 収穫ができるように。
親は とっくに諦めてるんだべ。
天陽君はそれでも やりたいって言ったんです。
はっきり言いました。土に勝ちたいって。
勝ちたい?はい。
土に勝たせてあげて下さい!
無理だ。
土が悪すぎる。
見てもないのに…。
見んでも分かる。
おじいさんだって最初は そうだったんでしょ?
土が悪かったって。
なつ もう ほっといてやれ。
うそつき!
おじいさんは 自分の力で働いていたらいつか 必ず 誰かが助けてくれるもんだって言ったじゃない!
天陽君は 一人で頑張ってるの!
一人で 土を耕してるの!
天陽君を 誰が助けてくれるの!?
なっちゃん 分かったから… ねっ。
♪~
なっちゃんは?部屋に行ったみたい。
そう… 天陽君が離農しそうだって本当に心配してるんだなあ。
天陽君 いなくなるの?うん。
それで お義父さんに 助けてくれって泣いて頼んでたよ。
あの子が そんなことを?優しい子だよ。
好きなのさ その子が。好きなのか… えっ?
あの子の好きな人でしょ 天陽君って。
そうなの? やっぱり。
いや いや いや いや好きとか 嫌いとかそういうもんでは ないでしょう。まだ子どもなのに。
はあ~?それは あなたがまだ子どもだと思いたいだけでしょう。えっ?
好きになった子と離れたくないのねきっと。
いやいや それは 君が 逆にあの子を子どもに見てるだけだと思うな。
あの子の怒りは そんな単純なものではなかったような気がする。
じゃあ どういうもんだ?
ああっ… あの もっと…この世界に対する 何と言うか こう…。
あの子の怒りは あの子にしか分からん。
それでいい。 ごちゃごちゃ言うな。
ごちゃごちゃ言わせてるのはお義父さんでしょう。
何?あっ いや…。
<私にもそんなことは分かりませんでした。自分が なぜ あんなに怒ったのか>
なつよ それは お前が 今少なからず幸せだからだ。