挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
サラリーマンの不死戯なダンジョン 作者:昼熊

理不尽なゲーム開始

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
2/111

一回目

「んだよっ!」


 えっ? 俺の声が反響している?

 ど、どういうことだ。今俺はでかくて黒い虎に頭から丸かじりになって。


「夢か? それにしては」


 首筋に手をやると、咬み千切られた筈の首はある。でも、夢にしては生々し過ぎる。一瞬だが確かに痛みと……絶望と恐怖があった。

 体の力が抜けて、地面に尻を突いた。スーツのズボン越しに伝わってくる冷たさが、少し自分の心を、冷静さを取り戻してくれる。


 落ち着け。落ち着け。あれは夢だ、あんなことはあり得ない。

 そうだ、考えろ、考えろ。あの虎のことは思い出すな。

 あの時、俺は大手ゼネコンに図面を貰いに行っていた。それは間違いない。その証拠に今もスーツ姿だ。

 で、気が付いたら、こんな感じの洞窟にいて……洞窟!?


「えっ、さっきと似ているぞ、ここ」


 見回した視界に映るのは、剥き出しの岩肌。天井は高いが鍾乳洞にありそうな、岩のつららが並んでいる。一本道の通路のようで道幅は5、6メートルってところか。

 自然にできた洞窟っぽいのに、足元は平に均されているな。

 壁や天井が仄かに明るいのは、そこら中に点在している光る苔のおかげなのか。

 まったく一緒だ……驚くぐらい同じ光景だ。

 だったら、この後は無駄にでかい黒虎が現れて――


「グルルルルルルッ!」


 ああ、そうだあいつだ。黒い湯気が溢れている、黒い虎。って、夢じゃないのかよっ!

 いや、違う。これはリアルな夢の続きだ。そうだ、そうに決まっている。

 その証拠に、またあの黒虎は大口を開けて俺を食おうとしているじゃないか。

 おいおい、何でまた同じ夢を見てんだよ。また、頭から丸かじり何て夢にしても芸がなさす――


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。