<社説>桜田五輪相の更迭 政権の体質に問題がある

 閣僚の任に堪えられないことは明らかだった。桜田義孝前五輪相のことである。自民党の高橋比奈子衆院議員のパーティーで「復興以上に大事なのは高橋さんだ」と発言し更迭された。

 東日本大震災の復興の重要性を全く理解していない。被災者を傷つける、政治家としてあるまじき暴言である。
 桜田氏は昨年10月の五輪相就任以来、資質を疑わせる失言や不適切な発言を繰り返してきた。野党が罷免を要求したほどだ。
 国会で東京五輪・パラリンピック関連予算を「1500円」と述べたり「答弁書を間違いのないように読むことが最大の仕事」と答えたりした。
 競泳の池江璃花子さんが白血病を公表した際には、記者団の質問に「本当にがっかりしている」と配慮のないコメントをした。
 五輪憲章を読んでいるかを問われ、「話には聞いているが、自分では読んでいない」と答弁している。衆院予算委に遅刻して、審議の中断を招いたこともあった。
 致命的だったのは、復興五輪と位置付けているのに、震災の実態を把握していない点だ。津波被害に関し「まだ国道とか交通、東北自動車道も健全に動いていたから良かった」と事実誤認の発言をしている。今月の参院内閣委では宮城県石巻市を「いしまきし」と3度も言い間違えた。
 その都度、批判を浴びたが、安倍晋三首相は桜田氏の言動を事実上、放置してきた。任命した首相の責任は重大だ。
 五輪相は大会の円滑な準備・運営に関する施策を推進する重要なポストである。誰にでも務まると首相が考えたのなら五輪軽視も甚だしい。
 これまでの不適切発言も踏まえ、責任を取らせることにしたのは、21日に投開票される衆院大阪12区、沖縄3区両補欠選挙を前に、これ以上、目をつぶるわけにはいかないと判断したためだろう。
 浮かび上がってくるのは身内に甘い政権の体質だ。わけても、暴言、放言への鈍感さは目に余る。
 首相は、麻生太郎副総理兼財務相が不適切な発言をするたびに、不問に付してきた。
 「ドイツのワイマール憲法はいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」「何百万人を殺したヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目だ」「(財務事務次官のセクハラに関し)はめられ訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」「子どもを産まない方が問題だ」
 全て麻生氏の言葉だ。いまだに閣内にとどまっているのは不可解極まりない。
 今回の更迭劇は桜田氏だけの問題ではない。暴言、妄言に寛容な政権の姿勢が問われてこよう。政治家の言葉には責任が伴う。国会議員は、国民の模範となるような言動を心掛けるべきだ。