統一地方選の前半戦が終わり、選ばれた首長、議員には新たに四年の任期が与えられた。この間、住民のために何をすべきか。常に自問しながら、有権者の選択に応える政治の実現に努めてほしい。
きのう投開票が行われた統一地方選の前半戦。十一道府県の知事と六政令指定都市の市長、四十一道府県議会と十七政令市議会の議員が決まった。
知事と市長がそろって辞職し、立場を入れ替えて立候補する「クロス選挙」となった大阪府と大阪市では、大阪維新の会の候補がそろって当選を決めた。松井一郎新市長らは「大阪都構想」実現のための住民投票再実施に向けた動きを加速させる見通しだ。
有権者の判断は尊重するとしても選挙の私物化との批判は免れまい。異例のクロス選挙に至った経緯は厳しく問われるべきである。
十一道府県知事選のうち福井、島根、徳島、福岡の四県では自民党の分裂選挙となった。
安倍晋三首相率いる自民党政権が長期化する一方、旧民主党の分裂で自民党に対抗する勢力が弱体化したため、自民党内で緊張感が緩み、内輪もめの余裕が出てきたことが背景にあるのだろう。
特に、福岡では麻生太郎副総理兼財務相と反りが合わない現職知事に対抗馬を立て、麻生派の副大臣が選挙応援で「首相や麻生氏への忖度(そんたく)」を公言。批判を受けて発言を撤回し、副大臣を辞任した。
一連の言動には住民代表を選ぶ選挙という自覚が感じられない。
自治体議会が直面する数々の課題も見えてきた統一選だった。
身近な選挙にもかかわらず、関心は年々薄れている。一九四七年の第一回統一選では都道府県議選の投票率は81・65%に達していたが、近年40%台にまで落ち込み、反転上昇の兆しは見えていない。
無投票当選の増加も深刻な問題だ。四十一道府県議選で総定数に占める無投票当選の割合は26・9%と過去最高になった。議員のなり手不足を象徴する実態である。
投票機会を奪い、有権者の選択を経ない議員が多くなれば、民意と議会意思とが乖離(かいり)しかねない。議会の重要な役割である行政監視が機能するだろうか。
女性候補は三百八十九人で、割合は12・7%と過去最高を更新したが、男女均等には程遠い。
二十一日には市区町村の首長、議員選が行われる。より身近な選挙だ。選択に応える政治が行われるよう、有権者として主体的に関わり、権利を行使したい。
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