統一地方選の前半、無投票が首都圏でも広がる。地方政治への関心がますます低くなることが心配だ。議員は危機感を持って、有権者との距離を縮める議会改革を自ら進めるべきだ。
首都圏では神奈川県、相模原市の首長選、東京都と茨城県以外の県議選、政令市議選があった。
相模原市長選では四選を目指した現職に、多選批判や世代交代を訴えた新人三人が挑み、元衆院議員の新人が勝利を収めた。
選挙という制度があるからこそ、有権者がトップ交代も実現できるわけだが、身近な代表を選ぶ機会を奪われた人々が今回も大勢いる。埼玉県議選では五十二選挙区中、過去最多の二十二選挙区が無投票に。有権者の三人に一人が投票できなかった。
神奈川県議選では横浜市都筑区、相模原市中央区が今回初めて無投票になった。議員のなり手不足は、小規模自治体で深刻となっている印象があるが、権限や財源の一部が都道府県から移譲されている政令市では、その分、県議の存在感が薄いと感じられていることが影響しているようだ。
しかし、県議の仕事は選出された地域の課題に取り組むことだけではないだろう。
福祉や教育、環境など自治体全体にかかわる特定分野に精通することも一つの道だ。
人口が減少する中、施設の老朽化が進む水道事業をどうやって維持していくか。高齢化が進み、車を運転できなくなる人も増えていく中で、どう地域の足を確保していくか。広域で将来像を考えていくべき課題はいくらでもある。
過疎化によって、山村部の選挙区が合区となり、選出議員の数が減ることで声が届きにくくなることが懸念されている。全域に目配りできる議員がますます必要となる。有権者も、議員が選出区の枠を超えて広域の課題に取り組む姿も評価に加えるべきだろう。
北海道浦幌町議会では、前回の統一選で定数割れしたことをきっかけに、スーパーの一角で議員と住民が意見交換する「まちなかカフェDE議会」を開催するなど議会改革を進めてきた。
長野県飯綱町では、住民が議会とともに政策を議論する政策サポーター制度から新たな議員も生まれている。
首都圏の議会も、無投票は地方政治、ひいては自治体の足腰を弱めていくことにもつながりかねないと自覚し、方策を考える時期に来ているのではないか。
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