東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

大学共通テスト 本番は「満点」の態勢に

 二〇二〇年度から始まる大学入学共通テスト。本番前最後の試行調査では記述式で公平性が担保されるかなど課題が残った。受験生には節目の年に当たったことが「不運」では片付けられない。

 大学入試改革で、センター試験に代わって実施される共通テストでは、思考力・判断力・表現力を測ることに重点が置かれる。その柱の一つとして導入されるのが国語・数学の記述式問題だ。

 一七年から一八年にかけ、実際に高校生に解いてもらう形で試行調査が実施された。

 四日に公表された一八年調査の分析結果では、この目玉とされる記述式問題をめぐり、いくつか心配な点が残っていることが明らかになった。

 一つは採点にばらつきが出る可能性が除去できないことだ。今回は七万人弱の解答を、国語・数学合わせて約二千人が採点した。センターで点検し、採点結果が修正される事例が見られた。本番では五十万人規模の受験が見込まれ、採点する人数も五倍程度になると想定されている。採点基準の統一が徹底できるかは大きな課題だ。

 採点結果と受験生の自己採点が一致しない割合も国語の記述式では約三割に上った。受験生や学校、予備校関係者は志望校選びの時に苦慮する場面も出てきそうだ。

 大学入試センターでは採点の質を確保するため、本年度も記述式問題を約一万人の高校生に解いてもらう準備事業を実施。正答の条件などの考え方を受験生に分かりやすく示せるよう、改善を図るとしている。

 〇六年、英語のリスニングが初めて導入されたセンター試験では、試験に使うICプレーヤーが故障するなどトラブルが続発。全国で四百人以上が再試験を受けることになり、当時の小坂憲次文部科学相が会見で「心からおわびしたい」と受験生に陳謝する事態となった。同じ失態を繰り返してはならない。

 共通テストのもう一つの柱として、英語では民間検定試験が、センターが作成する試験と併存させる形で導入される。七団体八種類が認定されている民間試験の中には、現状で万単位の受験料が必要なものもある。共通テスト本体の受験料も記述式の採点者の人件費などを考えればセンター試験(三教科以上で一万八千円)より値上げされる可能性もある。

 経済的な事情で受験生が泣くことのない措置も、考えていく必要がある。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】