BS-TBS

人間の戦場Ⅱ ダビデの歪んだ星~イスラエルvsパレスチナ~

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11/07/03(日)
19:00~20:54

被害者から加害者に転じたユダヤの過去に学び、これまでになかった視点からパレスチナ問題に迫ります。( 平成15年度(第58回)文化庁芸術祭優秀賞)

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番組内容

新たな文明への序曲にも思えるユダヤとパレスチナの死闘は、今、文字通り泥沼にあります。憎悪がひとつの流血を生み、流血への憎悪と報復が新たな流血をもたらす報復の連鎖…。 "我の他、神無し"と過激に強いる唯一の神「ヤホベ」。その神がモーゼについてこう語ります。 「我はお前の主…お前は神…我は熱情の神…我を否む者には父祖の罪を3、4代までも問う」 神がモーゼに与えた"約束の地"を守るため、ユダヤは自らを繰り返し「聖戦」に駆り立てます。もし"幸福な民族には歴史がない"という言葉が真実だとすれば、ユダヤが経験したいくつもの不幸は彼らに数奇な歴史をもたらしたことになります。ユダヤ「イスラエル」の国家はなぜ戦いを続けるのでしょうか? 彼らの神「ヤホベ」と歪んだ歴史の裏に、何が刻まれているのでしょうか…? イギリスの歴史家、ポール・ジョンソンは語ります。 「現代にテロを持ち込んだのはユダヤ人だ…」 強硬路線を踏んだベギン元首相、同じ策をとるシャロン首相。二人は"テロ"を、占領者に対する"抵抗"と位置づけています。「テロではない。祖国の解放だ」と。 共通する二人の思考の原点に、故郷ベラルーシのブレストでの悲劇がありました。1939年、ブレストに3万人いたユダヤ人はナチスとの戦いで5年後、10人にまで減ることになります。家族を奪われたベギンは激しい憎悪を胸にイスラエルに渡り、イギリス相手に爆弾闘争を展開しました…。 また、過激派組織ラヒに所属していた女性も同じように語ります。「パレスチナの目的はテロ、そしてイスラエルをつぶすこと。でも私たちは違う。自分の国を解放すること…」と。 ユダヤを歪めた理由はヨーロッパにあります。オーストリアの聖ステファン教会にある三位一体像、ペスト塔。1600年代後半に700万人を死に追いやった病原菌ペストの病因はユダヤに押し付けられました。1348年、スペインでユダヤ人医師が拷問の末、ペスト並みのルサンチマンを井戸に撒き、ヨーロッパ全土を苦しめた。この歴史的背景が同胞を追い詰めることになります。マインツのライン川には1万2千人ものユダヤ人が川に浮かんだといいます。残党は比較的寛容だったポーランドに逃げ込みますが、600年後、その末裔たちはナチスに苦しめられることになります。 「ゲットー」とはユダヤ人を閉じ込める"檻"という意。幅50m、長さ300mの狭い檻に3000人が住んでいました。 第二次世界大戦中のポーランド、"ワルシャワゲットー"には悲しみ、絶望、死臭が漂っていました。ゲットーからは出られず、もし出れば死刑。辺りには死体が転がっていました。ヒトラーは、「ユダヤ金融資本による"赤色革命"は許さない」とユダヤ抹殺の戦いを強いります。600万人は今のオシフィエンチム、アウシュビッツに収容されました…。毒ガス室で、命を落とした人は1日5万人とも言われています。 ドイツ人よりもドイツ語をうまく話し、文化、芸術で秀でた才能を示したユダヤ人は、徐々にドイツ人にねたまれました。罪はありません。同化しすぎたのかもしれません…。 1948年、イスラエルはパレスチナを征服し、自分たちの国を手に入れました。しかし、両国の争いは今もなお続きます。テロは新たな憎悪を生むばかりで、報復の連鎖は終わりません。「聖地で一緒に暮らせばいいじゃないか」という声もあります。一方、「50年後、100年後になるかわからないが、どちらかの民族しか存在しないだろう」という声も。 なぜ血の争いを断ち切れないのでしょうか、これまでの歴史から何を学んできたのでしょうか。ユダヤ人が歩んできた軌跡を辿りながら、パレスチナ問題を考えます。 平成15年度(第58回)文化庁芸術祭優秀賞受賞作品