38歳、女性右翼活動家がアメリカと断固闘い続ける理由

右翼と愛国──若き活動家の主張
安田 浩一 プロフィール

反主流派の右翼として

それにしても、彼女はなぜ、米軍の新基地建設に反対するのか。

いや、私自身も基地建設には反対だし、沖縄県民の半数以上もそうだろう。

だが、仲村はれっきとした右翼だ。

 

私は基地建設の現場で、多くの右翼を目にしてきた。いずれも、建設に反対する人々を恫喝し、嘲笑する者ばかりだった。

座り込む市民に対し、「出ていけ」とあらん限りの悪罵をぶつける右翼がいた。

デモ隊に街宣車で突っ込もうとする右翼がいた。

反対派市民のテントを破壊しようとして逮捕された右翼もいる。

ときには元在特会(在日外特権を許さない市民の会)メンバーが主体となっている差別者集団も姿を見せる。

彼らは高齢者を指さして笑いながら「臭い!」とわめき、さらには民族差別を煽るヘイトスピーチを繰り返していた。

そう、右翼は常に基地建設に反対する市民に向けて吠えていた。

だが、仲村は違う。彼女の視線の先にあるのは米軍基地であり、そして日本政府だ。

「(基地建設反対は)民族派としては当然の主張だと思うんです」

仲村は気負うことなく、穏やかな口調のままに話を続けた。

「他国の軍隊が居座っているような状態を許容するほうがおかしい。自然を破壊され、主権を踏みにじられているというのに、黙っているわけにはいきません」

米軍基地ゲート前で演説する仲村

右翼が米軍基地を批判しないのは、なぜ?

仲村が右翼の世界に飛び込んだのは20年前、18歳の時だった。

右翼の街頭演説を聞いたことで、社会に関心を持ったのだという。

右翼団体の中では大手とされる「大行社」に籍を置き、さまざまな活動に関わってきた。

北方領土返還運動や拉致問題解決の要求、日教組大会に出向いての街宣──。自民党本部で消火器をぶちまけて警察に拘束されたこともある。

彼女は間違いなく武闘派に数えられる右翼人士のひとりだった。

だが、活動を続けるなかで小さな矛盾が仲村の中に芽生えた。

それは、やがて大きな塊となって、彼女を苦しめる。拭い去ろうにも、微動だにしない矛盾──右翼としての仲村を苦しめたのは、沖縄の「基地問題」だった。

なぜ、右翼は真正面から米軍基地を批判しないのか。

なぜ、右翼は圧倒的に日本が不利な日米地位協定に反対しないのか。

なぜ、右翼は米軍基地に反対する市民をすべて"左翼"だとして片づけてしまうのか。

右翼の運動が「反左翼」を主軸としてしまったがために、基地問題を都合よく合理化させているようにしか思えなくなった。

「右翼は国体の護持を主張しながら、沖縄に米軍が駐留している現実に大きな関心を寄せていない。いまでも占領下にあるのと同じことではないですか」