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(なつ)これは 何?
(泰樹)これは わしの夢じゃ。
バターチャーンだ。バターチャーン?
ああ 牛乳からバターを作る道具じゃ。
バター…。そう。
日本一の… いや いや いや…世界一のバターを作るんじゃ。
世界一のバター!?
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
明治35年 わしは たった一人で富山から北海道に渡ってきた。
18歳の時だ。
十勝に入植して必死に 荒れ地を耕したがここらは 火山灰地といって 土が悪く歯が立たんかった。
この十勝には 晩成社といって先に来た開拓団の人々がいた。
わしは その人たちを訪ねて学んだんじゃ。
そして 牛飼いを勧められた。
その晩成社が バターを作っておった。
バターを…。
それを 初めて食った時わしは 何としても生きようと決意した。
この北の大地で新しい時代が始まろうとしている…。
そう実感したんだ。
わしも うまいバターを作りたい!
ハハハ… そう思った。
お前が 大人になる頃には日本人も当たり前のようにバターを食うようになってるだろう。
その時どこにも負けない おいしいバターをうちの牛乳から作れたら…。
それが わしの夢じゃ。
私も バター作りたい!
そうか?うん。
バター作ってみるか?えっ?
はい!
次の朝です。柴田家の長男 照男君が初めて 搾乳の仕事に挑戦しました。
(鳴き声)
うわ~…。(悠吉)危ない! 大丈夫か?
こりゃ もう ダメだわ。
(剛男)大丈夫だよ。牛に バケツをひっくり返されるなんてしょっちゅうだ。
照男 お前 そんな焦らんでもいい。お前は 一生 それを仕事にできるんだよ。
(照男)はい…。
けど 自分から教わりたいなんて頼もしいんでないかい おやっさん2代目は。 ハハハ…。
(菊介)おやじ 2代目は剛男さんになるんじゃないのかよ?
あっ! 間違えた…。
申し訳ない! つい 口が滑ったんだ。
申し訳ない!いや いいんだわ。
そんなに 真剣に謝られると余計 傷つくんで。
気にしないで下さい。申し訳ない…。申し訳ない!
よいしょ…。
今度 バター作ることにした。
バター?ああ。ここで作るんですか?
そうだ。懐かしいなあ おやっさんのバターか。
何で また?売る方法でも見つかったんですか?
いや それは まだ先の話だ。
とにかく また作ってみたくなった。
なあ なつ。はい!
なっちゃんもかい? バターをね。
そりゃ ぜいたくな話だべ。
(菊介)ぜいたくなのか?バターを作ることは。
そりゃ そうだ。
これっくらいの 一塊を作るのに牛乳を タンクで 何本も使うんだ。
そうなんだ。だけど 食べてみたいな。お義父さんのバター。
(富士子)バター?また作るの? あの臭いやつ。
えっ?(夕見子)臭いの?
臭いよ。 牛乳よりも乳臭い。
絶対に食べない。
私は食べてみたい。バター 食べたことない?
あります。 お父さんが…。
あっ… なっちゃんのお父さん料理人だもんね。
(剛男)そうだ。
ホットケーキを作ってくれました。
ホットケーキに バターか。
何? それ。小麦粉で作るやつ。
小麦粉があれば 作ってあげるのにねえ。
ねえ 学校遅れるよ。
そだね。小麦粉の前に 時間がない。
(3人)行ってきま~す。(富士子 剛男)行ってらっしゃい。
じいちゃんは なっちゃんのためにバターを作りたいんだ。
えっ どうして?
分からないけど あんまり食べたいなんて言わない方がいいよ。
ダメなの?だって 牛乳がもったいないだろ。
そうか…。牛乳なんか 何さ。
どうなったって いいべさ。夕見子!
お前にはじいちゃんの苦労が分かってないんだ!
何よ 跡取り気取っちゃって。
男って 考えることが 本当に狭いよね。
そして 次の日曜日なつたちは バターを作りました。
牛乳から とれたクリームをなこうやっておんなじ速さで回してやるんだ。
そしたら 小さな塊が出来る。
それが バターになるんじゃ。
やってみるか? なつ。はい!
座って。
そうそう 同じ速さでな。
そう そう そう… おお うまい。
このまま 30分ぐらい回し続けるんだ。
楽でねえな なっちゃん。 ハハハ…。
頑張れ なつ。40分かな。
おばさん バターが出来た!
おじいさんのバターが出来たよ!
こっちも ちょうど出来たわよ。
はい お待たせ。
ジャガイモ?そう。
子どもの頃 食べた記憶がある。
お母さんが考えたのよね?
ばあちゃんが?そうだよ~。
お芋に このバター載っけて食べるとおいしいよ~っておばあちゃんのうれしそうだった顔思い出す…。これ 好きだったのよね。
若くして死んじゃったけど。
さあ 召し上がれ!
なしたの?
これで死んじゃったの…?
バカモン! バターは 体にいいんじゃ!
は… はい! 頂きます!
頂きます。頂きます!頂きます。
ん~… 何だ これは! うまい!うまいべさ。
おいしい!(富士子)でしょ~?
牛乳の香りも ちゃんとするなあ。
夕見子も 熱いうちに食べてみなよ。
このバターが溶けてるとこがおいしいんだから。
いらない いらない!おいしいってば。
いらないってば。いいから食べてみなさい 夕見子。
♪~
どう?うまいしょ?
やった!夕見子ちゃんが 牛乳食べられた!
いかったな 夕見子。バターでしょ? 牛乳じゃないもん。
え~?(一同)ハハハ…。
(雪之助)載せるぞ~。はい 載せたぞ~。 バター。
(とよ)バター載せんのかい。
よ~し 蜜かけるぞ~ 蜜。
おお~…!
全部かけたいか お前ら…。(雪次郎)わ~い!
はい はい~ お待たせいたしました!
これが ホットケーキ?(雪之助)うん そうだよね? なっちゃん。
僕もね 東京で食べたことあるんだわ。
東京にいたんですか?うん 戦争前にね 修業に行ってたんだ。
さあ… 召し上がれ。(一同)頂きま~す!
こんなもの よく作れたな。
小麦粉をひいた時に残ったカスみたいなふすまという粉を使ってビートを煮詰めて作った蜜かけてみました。
おっ これは うまい!
おいしい!おいしいわねえ。
夕見子ちゃんは?
うちのバター使ってんだからおいしいのは当然よ。
夕見子 お前 バターは自慢すんのか。
うちのバター使うとこんなおいしいもんが出来るんですね。
はい そのとおりです。
本当に 恩着せがましいんだから家族して ハハハ…。
(妙子)奥さん おいしいのはうちの人の技術もあるからですよ。
あら それは分かってますよ 奥さん。
まっ 私は あんまり好きじゃないけどねバタ臭くて。
バターですから。
(雪之助)けど 新鮮だからもう製品化されたバターよりは臭みがない。やわらかくて 香りもいい。柴田さん このバター 是非 売って下さい。
これからは 十勝のお菓子はバターの時代 来ます。
このバターは わしが作るのではない。(雪之助)えっ?
なつたちが大きくなったら開拓すればいいんだ。
開拓…?
照男や なつたちが仕事として 売る方法も考えてもっと おいしいもの作りゃいい。
それが わしの夢じゃ。
ハハ。 ハハハハ…。
(雪之助)じゃ 売ってくんないってことですか?
ああ ハハハハ…。
(雪之助)じゃあ 雪次郎の時代になバター売ってもらって。
なつは バターと一緒におじいさんの夢を味わいました。
そして…。
皆さん 来週は いよいよこの学校で 映画会があります。
え~!やった~!
(大作)チャンバラだよな? 先生。
チャンバラだよね?
いいえ 今度の映画はお待ちかね 漫画映画です!
あっ… 皆さん漫画映画見るの初めてですか?
先生も 一度しか見たことないんだけど楽しみにしてて下さいね。
(一同)はい!チャンバラがいいよな!
はい。家族の人 み~んな来ていいですからそのように伝えて下さい。
(一同)はい!チャンバラがいい!
はい。 それでは 皆さん さようなら。
(一同)さようなら。チャンバラ チャンバラ…!
ねえ 漫画映画って どういう映画かな?
(天陽)見たことないの?ないよ。 あるの?
あるよ。漫画映画って 漫画が うつってるのかな?
絵が動くんだよ。
絵が動くのか…。
そうだと思った!フフフ…。フフフ…。
楽しみだね。うん。
なつは もう一つの夢を味わうことになるのです。
♪~
なつよ さあ 始まる。
♪~