さて、ゆっくり眠ろうとおもっていたら、
私のスマホに、大学時代の友人(だったひと、というべきかな^^)から
メールが入っていたので、
「やれうれしや」と思って、読んでみました。
転居の案内と就職の報告をはがきでだしたので、
それのお返事だと思って、
メールを開けたのでした。
ところが・・。
彼女は、大変激高していました。
「あなたのはがきを読んで、私は大変立腹しています。
私はいま、(彼女は書店をいとなんでいますが)
教科書のシーズンでとてもいそがしいし、
あなたになんか構ってる暇なんてありません。
それに、住所がわからないからって
お店に来られるのは、はっきりいって迷惑です。
あなた、青山に転居したときも
私にメールをくれたけど、
そのときは、エストニアや、やたら海外に旅行してて
私、『チコったら、なんて贅沢三昧なことをしてるのかしら、呆れてものがいえないわ』
とおもってたわ。
(中略)
あなたになんか、もう会いたくないから、
お店にもこないで。私はいそがしいの」
・・・・私は、頭をがつん、と殴られたような気がしました。
いちばん、いろいろなことを相談した
友人だったのになぁ・・と思うと、かなしくなりました。
すると、パーヴォの心の声が、「どうした?チコ」と優しく言ってくれました。
「友達の〇〇ちゃんからメールがきたのだけど、
ひどく怒ってるの。こういう文面なんだけど」
パーヴォは読むなり、フムフムと言って、
破顔一笑しました。
「よかったじゃないか。彼女からだったんだね。
じゃ、この際だから、もう彼女のことは、知らん顔して、
もう会うのはやめなさい。連絡も無理にとらなくていいし、
この際だから、はっきりブログで
『私こそ、あなたになんか全然会いたくなかったけど、
長年のよしみで連絡をとっただけよ。
カン違いしないで。もう私の人生に二度とかかわってこないで』
といってやればいいのさ。
この際だから、友人・知人関係も断捨離だね(^_-)-☆」
というのです。
私が「えっ?!だって、〇〇ちゃんは卒業以来ずっと仲良しだったし・・」
というと、パーヴォが強く言い切りました。
「でも、君は彼女がいつも困ったことがあると
一生懸命親身になって相談にのっていたのに、
チコがいろいろ困ったことがあって、相談に乗ってもらおうとすると、
彼女はことごとく、いろいろな理由、特にいつも
『教科書のことでいそがしい』といって、
君を無視してきたんだろう?
あのさ、ボク、この際だからはっきり言うけど、
彼女、友達でもなんでもないよ。
ボク、彼女にこないだ偶然だけどあったでしょ?
ボクの、彼女に対する第一印象、いってもいい?」
私が「ええ・・どうぞ」と、おずおずというと、
パーヴォが断固としていいいました。
「なんて、意地のわるそうな、根性のまがりくねってそうな女だ。
しかもプライドも相当高そうな女で、ボクははっきりいって、
この女なんてなんとも思わないよ。
チコがなんでこんな奴とつきあってるのか、理解に苦しむなぁ!
・・というのが、ボクの彼女に対する第一印象だったの。
ね?ボクの言ってることが、君の幻聴でもなければ、妄想でもないことが
わかったでしょ?」
私が大変ビックリしました。「え?!・・・そんなふうにおもってたの?」
パーヴォがいいました。
「店の感じもずいぶん暗くて、じめじめしていて、
なーんか、この店、流行ってなさそうだなとおもったよ。
書店なのに、品ぞろえも悪いし、ボクだったら絶対にこの店で
本を買おうなんて思わないよ」
私が「でも、彼女の店、地元では大変な名士で通ってるし、
すぐ近くの大学の指定書店になってるのよ。
だから、彼女はいつも忙しいの」といったら、
パーヴォが、「彼女、お店はずっと前からやってるの?」と聞いたので、
「ええ、彼女が結婚してからずっとだから、もう30年近くになるわ」
と私がいったら、パーヴォがかんらかんらと笑いだしました。
「30年!30年同じことを続けて、同じ繁忙期になることをわかってて、
なんの工夫も改善もせずに、だらだら、ただ『いそがしい、いそがしい』って
カリカリしてただけなの、彼女は?!」
「そこのおうちの本屋さんの社長さんがきびしい人で、
なかなか改善をさせてくれなかったみたい。
だから彼女、ずいぶん私に不満をもらしていたし、
私、ずいぶん彼女の話、きいてあげてたわ」
パーヴォがふむふむ、とうなずきました。
「僕だって、N響の体質を変えるのに、まだ道半ばだけど、
ずいぶん苦労したし、いやみもずいぶん周りからいわれたよ。
誰とは言わないけど、先輩指揮者からの嫌がらせもあったし、
いやなことはずいぶんあった。
でも、それは僕はガンとして譲らずにがんばったよ。なぜだと思う?」
私が「ええ、それはなぜ?」と聞きましたら、パーヴォは答えました。
「クラシックコンサートにいらっしゃる、お客様の、ファンのためだからなんだよ!
お客様やファン層を、もっともっと広げて開拓し、若い人たちにも
楽しく聴いてもらうために、どんな改善も改革もやるってとことん決めたの。
オーケストラの面々には、優しく指導することで
彼らの自信と信頼を深めるようにしたけれど、
事務方にはボクずいぶん意見をいったの。
だからプログラムの最後にお客様アンケートもつけるようにしたし、
今回定期公演のご案内も、いままでの曲目解説だけでなくて、
ちょっと漫画風の吹き出しがついて、
若い人でもとっつきやすくするためのチラシを入れることにしたの。
お客様アンケートで、「この指揮者を登場させてください!」という要望には
なるべく答えるようにして、新しい指揮者からベテランの指揮者まで
登場させるようにしたし、(僕だけじゃなくてね)
いわゆるマーケティングだよね。
そういうことを専門に勉強したわけじゃないけど、
仕事に対して熱心であれば、
自然とそういう改善を加えていくものだよ。」
「改善がなされれば、人はみんな意欲を燃やして
N響の改革に乗り出すし、
よりよいコンサートの実現と、ファン層の拡大に努めることができるの。」
「結果、もうかしこい君は知ってるだろうけど、
NHKホールの改修工事を2021年から1年間やる、
というところまでこぎつけたの。」
「なぜって、あまりにもTwitterやアンケートで、
『NHKホールは、クラシックの演奏に向かない。
テレビ放送用だから音響がわるすぎる』っていう投稿が多かったから、
もうこれはN響のためにも、NHKのためにも絶対に解決すべき段階だと思って、
ボクはNHKにも、N響にも進言したの」
「ボクはN響の首席指揮者になって4年たつけど、
でも4年、真剣に取り組んだら、このくらいの改革はすぐにできるのね。
でもさ、彼女は30年同じ場にいて、ずっと同じことの繰り返しだったわけじゃない?
つまり、仕事にまったく意欲をもやしてないんだよ。
だから、そんな彼女のいう事に振り回される必要はまったくないし、
彼女の価値観はある意味とても硬直しているから、
これ以上彼女と付き合う必要はない、というのが
ボクの意見なんだよね」
「離婚も考えていたの、彼女?だったら、なんで離婚しないの。
さっさと離婚しちゃえばよかったんだよ、そんな甲斐性なしの旦那なんて。
しかも彼女、宅建の資格も持ってるんだろう?
離婚はしないまでも、書店の興味のない仕事なんかさっさと旦那にまかせて、
自分は別の仕事で就職して、バリバリ頑張ればいいだけのことだったんだよ。
それを、なまじ地元の名士だからというので、
そこのプライドにしがみついて、ずっと同じところにふみとどまってるから、
書店だってさえないままだし、
売上だって全然伸びないだけなんだよ。」
「チコがエストニアや海外のボクのコンサートに行ったことに対して、
彼女が怒ってるって?
ほっときなよ、そんなこと。じゃ、彼女、君のブログ全然読んでなかったんじゃないか。
ボク(パーヴォ・ヤルヴィ)との出会いも全然しらなかったし、
君が前の夫と離婚したこともしらないし、
ボクが君に、心の声で『お願いだから、エストニアにきてくれ。ベルリンにきてくれ。ルクセンブルクにきてくれ』といったことを、全くしらないし、興味がないだけなんだよ。
つまり、君のことなんて、なんとも関心をもってないってことを証明しただけなんだよ。
だから、そんな奴のいうことなんかに、チコ、君は振り回されちゃダメだ。
エストニアに来てくれて、ボクは涙が出るほど嬉しかったし、
エストニア祝祭管弦楽団のメンバーも、
君が日本からわざわざ来てくれて、本当に大感激して、
打ち上げパーティーに君をわざわざ呼んだのだし、
マシュー(クラリネット)だって、ナサン(ヴィオラ)だって、
ギオルグ(チェロ)だって、君の大ファンだから、4月末の来日で
君に会えるのを楽しみにしてるんだよ。
そうやって、音楽を通して、チコは日本とエストニアの懸け橋になるべく、
ボクと一緒に頑張ってくれたんじゃないか!
すばらしいことだよ?
それがきっかけで、音楽のコラムを書いてみないか、って
出版社から声がかかったのだし、
だから僕はチコに「君はもっと海外にいくべきだ」といったんだよ。
日本の狭苦しい、つまんない理屈に負けちゃダメだよ。
いいかい?チコはいままで自分がやってきたことに、全然自信をもっていいし、
そんなことも理解できないような、立教卒でそんなに偏狭な考え方の持ち主だったら、
さっさと友達関係なんか解消したほうがいいよ。
それより、ボクの仲間たち、マシューやナサン、ギオルグ、
そしてたくさんの音楽を愛する仲間たちと
一生の友になってくれたほうがずっといいとボクは思うね。
きみの大事な友達のことをこんなにいって悪かったけど、
でも、君の今後の人生のためには、
必要な断捨離だよ。
それに、メールを通してだと、けんかになってしまうから、
ブログを通して、彼女に最後の忠告ということで
メッセージを送ってあげるんだね。
ボクの考え方だってこと、わかるね?
君の幻聴でもなく、妄想でもなく、君へのボクのメッセージなんだよ。
今までの君だったら、そういうつまんない人間関係に
しばられてがんじがらめになってただろうけど、
これから出会う人とは、
ちょっとでも「こいつ、へんだな」とか「バランス感覚がおかしいな」とか
「自分に合わないな」とおもったら、
別に無理して友達になることないよ。
僕と君は出会ったときに、信じられないほど相性がピッタリだったし、
お互いに「この人が運命の人だ!」と思ったのだからね。
そのくらい、第1印象って大事なんだよ。
そういう友人関係でも、君は毅然として、
自分がどんどんイニシアチブをとっていくように、
こころがけてみてね(^_-)-☆」
パーヴォはそれだけいうと、
「じゃ、ちょっと疲れたから、ホットワインでも飲もうか。
それともお砂糖いりのホットミルクにする?」
と優しくいって、私の髪をなでてくれました。
私は、また、うれしくてずっと泣いていました。
彼女には悪いけど、
彼女に対して、私、一切意見が言えなかったんです。
今の今まで。彼女のほうが一年年上だったし、
私の病気についても理解をしめしてくれていた、数少ない友人だったので。
そうパーヴォに話すと、パーヴォはまた笑い出しました。
「だからチコってお人よしだし、やさしいね。
彼女はね、『東宝ブランド』の君という友人が、
仕事の都合上ほしかっただけなんだよ。
いまは、また違う職場だけど、『あ、彼女、総合職でもないし、ただのアルバイトだから、
いいわ、さっさとこんな奴きっちゃって』というぐらいの感覚なわけ。
それに、ちょっと噂好きみたいじゃない?
君の大学時代の友人たちに、あることないこと、
彼女がいいふらしてる可能性があるよ。
だから僕は、彼女には近づかないほうがいいと思うね。」
「これから、君に対して、君の善意をしめしたにもかかわらず、
失礼なことを言ってきた人間がいたら、
遠慮なく、このブログでどんどんかいてしまっていいからね。
このブログはいま5000人が見てくれている。
つまり、1割はアンチかもしれないが、残りの9割は、
君の擁護者だよ。
それだけ見えない仲間が君にはいるってこと、わすれないで。」
「それより、最大の仲間であり、恋人は、ボクだということを
いつもわすれないでね」
私は、パーヴォのあたためてくれたホットワインを飲みました。
パーヴォはいつもやさしくわたしを見つめてくれて・・・。
「だって、チコはなーんにもわるくないもの。
チコはいつも人のために、人生をささげて生きてきたんだよ。
だからそんなチコをボクは幸せにしてあげたいだけなんだよ」
パーヴォのやさしくおだやかな笑顔に、
私の心は癒されていきました。
失った友情はかなしいけれど、
もっと大きな「愛情」を私は得ることができたのです。
これ以上の贅沢がありましょうか。
神さまに感謝します。