高校野球の選抜大会で、千葉・習志野高が敗れはしたものの、準優勝を遂げた。大会前は優勝候補に挙がらなかったが、地元出身の選手を中心に、チームの魅力を発揮したことをたたえたい。
高校野球とは、たとえればまとまりの美学だ。甲子園での試合を見るたびに、そう感じ、どちらを応援するでもなく、球児たちに熱いまなざしを注ぐファンは多いのではなかろうか。
今大会の習志野高は、まさにそのような試合を見せてくれた。
一九五七年創立の市立高で、OBには中日ドラゴンズで首位打者をかつて獲得した谷沢健一氏、阪神タイガースの主砲だった掛布雅之氏、東京ヤクルトスワローズの小川淳司監督ら、そうそうたる顔触れがそろう。しかも夏の甲子園では二度の全国優勝を果たしている名門だが、それらを感じさせないフレッシュな戦いぶりで胸を熱くさせてくれた。
その背景にあるのは地域密着のチームであることだろう。地元出身の選手で固めたチームの強みは、何といっても気持ちが通じ合っていることだ。選手のほとんどは子供の時から交流があり、性格や悩みも知り尽くしている。
全国各地の優秀な選手が集まる強豪校も多い中で、そのようなチームは一つの目標に向かって全員が突き進み、窮地に陥った時はお互いが思いやりを持って助け合い、大きな力を発揮する。地元の応援にも熱が一層入り、選手たちを後押しする。
優勝候補の星稜高を下した二回戦、1点ずつを積み重ねて逆転した準々決勝の市和歌山高戦、初回に3点を先制されながら粘り抜いて決勝進出を決めた明豊高戦は、ベンチが一体となっていたことの現れで、昨夏の甲子園で準優勝を遂げた秋田・金足農業高をほうふつさせた。
今年もさまざまな感動とともに幕を閉じた選抜大会だが、惜しむらくはサイン盗み疑惑が再び浮上したことだった。二回戦で敗れた星稜高の林和成監督が、試合後に習志野高に対して捕手のサインを盗んでいたと抗議。審判団はそのような行為は確認できなかったとし、林監督も翌日に謝罪したが、各校がそのような疑念を抱きながら試合を行っていることが明るみに出た。
勝利に固執したサイン盗みは選手の実力、価値を貶(おとし)める。指導者はそのことを肝に銘じ、フェアプレーの精神を徹底してほしい。
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