NMRのはなし
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さて、これから先、ひとつひとつの原子核を磁石の絵で描くのは大変なので、矢印で表すことにします。これはNMRの世界では決まり事のようなものです。矢印の先端がN極です。

右図のようにプロトンは静磁場の向きにそって歳差運動しています。
人間でもそうですが整列!というと逆を向くへそ曲がりがいます。プロトンも然りで、全く逆を向いて歳差運動するのもあります。反抗するにはエネルギーがいりますので、こういうプロトンはエネルギーレベルが高いと言えます(図1参照)。
実際、プロトンには二つのエネルギーレベルがあります。この二つのエネルギーレベルの差ΔEは、

ΔE=hν

h: プランク定数 (6.626×10-34J ・S)
ν:共鳴周波数

このΔE に匹敵するエネルギーを与えると、低いエネルギーレベルにあったプロトンが高いエネルギーレベルに移ります。要するに反対を向いて歳差運動するプロトンが沢山出てくるわけです。そして、人間と同じく原子の世界も安定志向がありますので、元の安定な状態に戻るときに、余分なエネルギーを放出します。これをとらえるのがNMRです。(図2参照)

静磁場が2.35T(テスラ)の場合、プロトンのエネルギーギャップΔE はおよそ6.6×10-28J なので、共鳴周波数νは、100MHzとなり、ちょうどラジオ波程度となります。

さて、
プロトンは沢山あり、それぞれ別な位相で歳差運動をしていますので、円錐上のあらゆる所に分布していると考えることができます。2つのエネルギーレベルがあるのですから、逆向きの円錐状にもあるということになります。これらのベクトルを合成して考えた方がすっきりします。この合成したベクトルを磁化ベクトルあるいは、磁化といいます。(図3参照)

ここに、外部磁場B1をy 軸方向に与えると、図4のように磁化はy軸方向に倒れます。
(図4参照)このとき、磁化がZ軸となす角をフリップ角といいます。そしてフリップ角が90°になるようなパルスを90°パルス、180°になるようなパルスを180°パルスと呼びます。(図5参照)
フリップ角は、核の種類、静磁場の強さB0 が同じならば、パルスの強さとパルスの時間で決まります。

θ=γB1t    [rad]

θ:フリップ角
γ:磁気回転比(核の種類で決まっている)
t :パルス時間

 

コマのようにくるくる廻っているのを眺めると目が回ってきてしまいます。ここからは、単なる矢印で書きますが、歳差運動しているものと思ってください。(ちょうどメリーゴーランドに乗ってしまうとメリーゴーランドの馬や馬車は止まって見えますが、そんなイメージです。→回転座標系といいます。)

 

 
 

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