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【社会】

空自機、青森沖で墜落 F35A大量購入に影響も

 防衛省は十日、青森県沖の太平洋上で訓練中に消息を絶った航空自衛隊三沢基地(青森県)の最新鋭ステルス戦闘機F35Aの尾翼の一部が周辺海域で見つかったとして、機体が墜落したと断定、F35Aとして世界初の墜落事故と明らかにした。操縦していた四十代の男性三等空佐の行方は分かっておらず、自衛隊は米軍や海上保安庁と捜索を続けた。

 岩屋毅防衛相は記者団に、操縦士が「訓練を中止する」と無線で通信した後、消息を絶ったと説明。空自の航空事故調査委員会は操縦士が何らかの異変を認識していた可能性があるとみて原因を調べる。操縦士の無線通信以外に原因を示唆する記録はなく、機体の欠陥か人為的なミスか、調査は難航も予想される。

◆原因究明 長期化の恐れ

 F35Aは、防衛省が「防空の要」と位置付ける最新鋭の主力戦闘機で、昨年十二月に派生型のF35Bを含めて米国から大量購入する方針を決めたばかりだった。航空自衛隊は事故原因の特定を急ぐが、米国はF35の機密情報の管理に神経をとがらせている。調査が難航し、今後の調達や配備計画に影響が及ぶ恐れが出ている。

 F35Aの日本への初配備は二〇一八年一月。政府は昨年十二月にF35A六十三機、短距離離陸・垂直着陸が可能なF35B四十二機の計百五機の追加購入を決め、これまでに導入を進めてきたF35Aの四十二機を含めて計百四十七機態勢にする方針を固めていた。

 F35Aは米国が示す金額や納期を日本が受け入れる「対外有償軍事援助(FMS)」でしか購入できず、一機当たりの取得価格は一八年度段階で約百十六億円と高額だ。事故原因によっては、今後の調達計画に影響を与えかねず、防衛省幹部は「残念だしショックだ」と話す。

 空自は九日夜に事故調査委員会を設置。ただ交信記録や一緒に訓練した隊員らからの聴取で原因が特定できない場合、調査は長期化する可能性がある。墜落した機体は海底約一五〇〇メートルに沈んだ可能性があり、見つかっても引き揚げは簡単ではない。

 さらに引き揚げられても、米国のロッキード・マーチン社製のF35Aは、FMSで購入した「非常に機密性が高い戦闘機」(空自幹部)だ。今回の墜落機には三菱重工業が組み立てに関わったものの、「機密性の高い部分は日本側はほとんど製造に関わらせてもらっていない」(空自関係者)と明かす。

 米国は今回の事故を受け、捜索に協力するとして米軍の哨戒機に加え、艦艇二隻を現場周辺に派遣した。防衛省は米国と協力して原因究明する方針だが、元空自幹部は「もし機体の問題だった場合、米側が機密をどこまで開示するか懸念はある」と漏らす。

  (原昌志、上野実輝彦)

 

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