「『そういえばセキュリティソフトなんてあったね』──10年後にはこんな風に言われているのではないか」
セキュリティソフト「PC Matic」を販売する、ブルースターの坂本光正代表(PC Matic アジア太平洋地区責任者)は、「個人向けセキュリティソフトは今後なくなるだろう」という予想を記者に話した。
坂本代表は、「個人版はそもそも大して儲からない上に、今やサードパーティー製のWindows向けセキュリティソフトのインストールはかえってセキュリティホールにすらなる」と現状を認識する。
「Microsoftが『Windows Defender』に本腰を入れ始めた時点で、セキュリティソフトはそうなる流れだった」と坂本代表。
「Microsoftがエンタープライズ向けに提供している『Windows Defenderシリーズ』は、クラウドベースで端末を保護することから、攻撃者がDefenderの穴を調べられない。未知の検体を世界中から集め、クラウドで検出アルゴリズムを進化させているため、ウイルスに対して相当に強い」とWindows Defenderを評価する。
このように、Windows Defenderが高い防御性能を発揮するため、他社の個人向けセキュリティソフトは転換を迫られるだろうというのが坂本代表の考えだ。
「セキュリティソフトは、今後10年で資産管理ソフトにシフトしていくだろう。法人向けに関しても、ウイルス対策というよりは資産管理や遠隔管理にシフトしていくのではないか」(坂本代表)
Microsoftが本腰を入れている以上、サードパーティーの立場が厳しくなるだろうという展望は納得感も大きいが、それではPC Maticとしてどのように導入メリットを打ち出すのか、という疑問も出てくる。
これについて坂本代表は、(1)エンタープライズ向けWindows Defenderと同様のグローバルホワイトリスト方式、(2)開発国とスパイウェア、(3)Windows XPから10までのサポート──などを挙げる。
PC Maticは、エンタープライズ向けWindows Defenderと同様に、クラウドベースでウイルスを検査し端末を保護する「グローバルホワイトリスト」を採用している。このため、Defenderに引けを取らないウイルス検出が可能だという。PC MaticをインストールしたPCでは、2017年、18年のウイルス感染PCはゼロ台だったとも語る。
しかし、それでもWindows Defenderに対して優位とはいえない。坂本代表は、「各国諜報機関のスパイウェアツールさえブロックするのが、他社セキュリティソフトに対する優位点なのだ」という。
「中国では金盾(グレートファイアウォール)があるため、Googleのサービスは利用できない。しかしWindowsは売られていて、MicrosoftのOutlook.comにだってアクセスできる。なぜか。Microsoftが中国の諜報ツール(スパイウェア)をスルーしているからだ」(坂本代表)と独自の理論を展開する。
「セキュリティソフトの開発元の国と、販売先はよく確認するべきだ。各開発元は、『特定国のスパイウェアを通すことはない』というだろうが、疑ってかかることに越したことはない」という。
そしてPC Maticの開発企業は米国にあり、中国やロシアはもちろん、米NSA(国家安全保障局)の諜報ツールもブロックすると坂本代表は話す。
「NSAのツールさえブロックしているので、うちの社長(Rob Cheng CEO)はいつか海に浮かぶんじゃないかと思っている」
しかし、開発企業が米国にあるPC Maticをどう信用したらいいのか? 記者がこう聞くと「おっしゃる通り。(社長のポリシーを信用してもらった上で)まだ社長が生きているということで判断してほしい」(坂本代表)
PC Maticのもう1つの利点は、「Windows XPまで対応できる」ということだ。これがあるため、法人からの引き合いが大きいという。
「ある大手航空会社のチェックイン機が実はいまだにXPで動いていて、うちの大口顧客になっている」
社会インフラ系のシステムでは、このようにXPで稼働しているところもいまだにある。Windows 10向けのPC Maticの開発に比べ、XP向けの開発には工数が3倍ほどかかるというが、需要があるため提供を続けているという。
Microsoftは2014年4月にXPのサポートを終了しているため、本来であれば使用すべきではないところだが、「PC Maticはホワイトリスト方式のため、動作していいアプリしか動かない。Windowsの汎用性はかなりなくなるが、ネットにつないでもウイルスには感染しない」という。
前述のウイルス検出の考え方の一方で、PC Maticはゲーマーから支持があることでも有名だ。
PC MaticがPCのCPU負荷をモニタリングし、高負荷時に検査や更新をせず(=ゲームを邪魔しない)、適切なタイミングで全自動でアプリを最新版にアップデートすることなどが支持の要因だ。
PC Maticは2016年にプロゲーマーチーム「DeToNator」とコラボ。さらに2019年にはプロゲーマーチーム「SunSister」ともコラボし、SunSister仕様のパッケージをパソコンSHOPアークで発売した。
コラボパッケージを購入すると、売上の一部がSunSisterにも入り、応援になるという。
「最近活躍を重ねているSunSisterさんを応援できたらと思い、アークさん経由でお声がけした」(坂本代表)
SunSisterのCrazySum選手は「現在のPCで特にセキュリティソフトは入れていなかったが、PC Maticの説明を聞いて魅力に感じた。今後使っていきたい」と同社の姿勢に共感した。
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