著者メッセージ: 坂上琴さん 『踊り子と将棋指し』
『踊り子と将棋指し』で、第10回小説現代長編新人賞をいただいた坂上琴です。よくペンネームの由来を訊かれるのですが、琴というのは、我が家の愛犬(ヨークシャーテリア、雌、5歳)の名前なんです。私が自宅で執筆し
ていると、膝の上に上がって、じゃれついてきます。可愛いもんですねえ。
うちの琴は、作品中でも、踊り子の飼い犬として全国を旅する設定になっています。「マイ」という犬のモデルです。大阪・天満の劇場や、南紀白浜のストリップ小屋の楽屋で、踊り子の姐さんたちから可愛がられます。琴がいなかったら、小説は書いていなかったかもしれません。主人公の三ちゃんと踊り子の聖良、そしてマイのロードムービーならぬロードノベルです。
大人のファンタジーという側面もあります。書いているうちに今まで出会ったストリッパーのお姐さんたちが、浮かんできて、頭の中を村下孝蔵が歌う「踊り子」の曲がグルグル回り始めました。
聖良に特定のモデルはいませんが、SMショーを演じてくれたお姐さんに感 謝です。
三ちゃんは私自身かもしれません。将棋はあまり強くないので、そこだけ は三ちゃんとは違いますが、アルコール依存症でのたうっていた日々は、私自身の実体験です。依存症になっていなかったら、小説は書いていなかったでしょう。
受賞は、依存症のおかげという面もあるのですが、やっぱり、お酒が飲めた方が、絶対にいいですよ。人生楽しめなくなるし、周囲の人に、余計な気を遣わせてしまいます。「今度、飲みに行こう」と誘うのはだけは、やめて
くださいね。 (坂上琴)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2016年1月1日号より)
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