菅田将暉の「トイレの便座くらい開けさせてよ」

タレント連載
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#02 「女性は大変ですね②」

 映画「海月姫」の現場で、女装&メイクをしていて思うんですけど、世の女子たちは毎日これを続けていて、本当にすごいなぁと。しかも、お風呂上がりにボディクリームを塗ったりと、体のお手入れもしているわけじゃないですか。いやいや、本当に尊敬します。

 ただ、メイクした自分の顔がベストだと思い込んでいる女性の心理については、ちょっと理解に苦しむところがありますね。メイク顔を極めることは1つの美学なのかもしれないですけど、本来の顔が好きじゃないと言われたら、親御さんは悲しむんじゃないかなって思うから…。極端な話、自然治癒力を助けるために風邪薬を飲むのと一緒で、元々の顔を映えさせるための手段の一つに化粧があるんだと思うんです。でも、今はもう手段じゃなくて目的になっている。本末転倒というか、足元が見えていない感じがするんですよね。

 もちろん、自分の憧れであったり、いいなと思うことを追求していくのはアリだと思います。ただ、そこに注げるパワーがあるなら、元の自分の姿をどう磨いていけばいいのか、極力〝盛らず、足さず〟して美しく見せる方向へと考えをシフトさせるのも、またアリかなと。たとえば、目を大きく見せたかったら単純に顔をシュッとさせたり、毎日、表情の作り方から意識してみる、あるいは髪型を変えてみるといったような…。あ、でも今はメイクのグッズがたくさんあるから、それに頼っちゃうという事情もあるんですかね? これまた例えが極端ですけど、RPG(ロールプレイングゲーム)のスタート時点で、もう最強アイテムがそろっているような状態なのかな──。だとすれば、逆に気の毒な気もします。だって、好きな人に恋をして、もっとかわいくなりたいと努力して磨き上げた自分にこそ価値があるのに、労せずしてメイクでなりたい自分になれちゃうわけでしょう? 僕からするとそれって何か悔しいし、もったいない感じがしますね。そういう時代と言われてしまえば、まぁ…それまでなんですけど(笑)。

 そう言えば、いかにも今の時代ならではだな、とビックリしたことがありました。すごく目のクリクリした、かわいい子役の女の子がいたんですよ。それで、いたって素直な気持ちで「目、クリクリしてるね」と言ったら、その子が保護者として一緒に現場に来ていたお父さんに「ねぇ、これ言ってもいい?」ってヒソヒソ声で確認しているんです。「ん、何だろうな?」と思っていたら「これね、まつげエクステしてるの」って。「えっ、確か7歳って言ってたよね!?」って、思わずのけぞりましたよ。自分でエクステしたいって言ったの? と聞いたら、うなづいていました。ランドセルを背負った小学生が電車の中でケータイをいじっている姿を見ただけでも衝撃的だったのに、まつげエクステって…! 時代は確実に変わっているんだなあと痛感せざるを得ませんでしたね、はい。

 ちなみに、さっき「美学」という言葉を使いましたけど、僕にはないものだったりもします。ある意味、エゴイスティックなものじゃないですか。裏を返すと、周りに配慮している美学というのは、すでに美学じゃないような気がする。だから、「私はこれがいい」「俺はこうなんだ」という、ある種のエゴがまかり通る人のことを、〝カリスマ〟と呼ぶんでしょうね。

Masaki's shot
ケータリングがおいしそうだったので、撮った写真です


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構成/平田真人 撮影/田子芙蓉 ヘアメイク/SHUTARO(vitamins) スタイリング/伊藤省吾
衣装協力/エヌフォー(エヌフォー・サテライト・トウキョウ)、ヴィクティム(ホワイト ギャラリー)
イロコイ(イロコイ ヘッドショップ)
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