ブレードランナー

1982年 アメリカ

キャスト:ハリソン・フォード(デッカード)ルトガー・ハウアー(バッティ)ショーン・ヤング(レーチェル)エドワード・ジェームズ・オルモス(ガフ)M・エメット・ウォルシュ(ブライアン)ダリル・ハンナ(パリス)ウィルアム・サンダーソン(セバスチャン)ブライオン・ジェームズ(レオン)ジョー・ターケル(タイレル)ジョアンナ・キャシディ(ゾラ)

監督:リドリー・スコット

「二十一世紀初め、アメリカのタイレル社は人間そっくりのネクサス型ロボットを開発。それらはレプリカントと呼ばれた。特にネクサス6型レプリカントは体力も敏捷さも人間に勝り、知力もそれを作った技術者に匹敵した。レプリカントは地球外基地の奴隷労働や他の惑星の探検などに使われていたが、或る時反乱を起こして人間の敵に回った。地球に戻ったレプリカントを処分するために、ブレードランナー特捜班が組織された」

ロサンゼルス、2019年11月。タレイル社でVKテストを受ける新入社員で廃棄物処理技術者のレオンは感情の刺激に対する瞳の反応速度でレプリカントであることが判明するが、試験官のホールデンを射殺して逃走する。チャイナタウンでヌードルを食っていた元ブレードランナーのデッカードがガフという男に連れられ、かつての上司のブライアンのところに連れて行かれる。

レプリカントが四匹紛れ込んだ、とデッカードに話すブライアン。「スペースシャトルを攻撃して乗員を皆殺ししやがった」「やばいな」「大した騒ぎになるまいよ。お前が処分すれば」「俺は辞めた。ホールデンを使え」「使ったさ。でも死んだ。奴はお前より残念ながら劣る。今度の相手は面倒だ。ベテランでないとな」「俺はもう辞めたんだ」出て行こうとするデッカードに権力には勝てんぞ、と声を掛けるブライアン。「強制か」「強制だ」

テストを受けているレオンのビデオをデッカードに見せるブライアン。「レプリカントたちは三日前にタイレル社を襲った。雇われている危険もあるのでホールデンに新入社員にテストさせた。するとこのレオンという男がテスト途中でホールデンを殺して逃げた」「なぜ地球に戻ってきたんだ。なぜタイレル社に」「それを調べるんだ」

たくましい男の顔写真が画面に映る。「バッティ。戦闘型ロボットだ。どうやら首領らしい」続いて女の顔写真が映る。「このゾラも人殺しの訓練を受けている。美女で野獣だ」また別の女の顔写真が映る。「可愛い子ちゃんタイプのブリス。宇宙基地の兵隊慰安用だ」奴らは感情以外は人間と変わらないと話すブライアン。「製造後、数年たてば感情も生じるらしい。それだと面倒だから安全装置を組み込んだ」「どんな」「四年の寿命だ」「……」「タレイル社にも一匹いる。テストしてこい」

適当なところまでやってズラかろうと考えながら、ガフと一緒にタレイル社に向かうデッカード。(このガフはどうせ出世亡者だ。俺が途中でいなくなれば喜ぶさ)タレイル社で社長のタレイルの秘書のレーチェルと会うデッカード。「わが社の産物は有害だと思う?」「レプリカントが機械なら問題ない。反抗しなければね」

VKテストが人間に対して有効か見たいとデッカードに言うタレイル。「レーチェルをテストしてくれ」レーチェルをテストしたデッカードはすぐに彼女がレプリカントであることを見抜く。タレイルはレーチェルが自分がレプリカントかどうか疑っているとデッカードに話す。「彼女に話してないのか」「わが社は人間以上のロボットを目指している。彼女はその試作品だ」「……」「感情が生まれてきて、そのために何か苛立っている。数年分の経験しかないからな。過去を作って与えてやれば、感情も落ちつき、制御も楽になる」

バッティとレオンはタイレル社のハンニバルの実験室に行く。ハンニバルに質問するバッティ。「俺たち構造と製造年月を教えろ」「そういうことは知らない。私、目を作るだけ。目の設計以外知らない」「俺の眼が見たものを貴様に見せてやりたい。答えろ。誰ならわかる」「タイレルなら。社長だ。君らの頭脳を設計した天才科学者」「だが、奴には簡単に会えん」「セバスチャンが案内できる」

レーチェルはデッカードのアパートに行き、私をレプリカントと思うか、と聞く。「見て。子供の時の私と母親の写真よ」「覚えてるか。君は六歳の時、弟とお医者さんごっこをした。自分の見せる番になったら逃げだしたな」「……」「窓の外の茂みに蜘蛛がいた。身体が黄色い奴だ」「……」「記憶だ。タイレルの姪の記憶が移植されている」「……」「冗談だ。君はレプリカントじゃない。帰りたまえ」レーチェルの写真を見て、手の込んだことをすると呟くデッカード。「冗談じゃない。レプリカントも殺し屋も感情を持つなんて」

ブリスは人形にしか心が開けない孤独な遺伝設計技術者のセバスチャンと接触して、同居することに成功する。レオンの部屋で魚の鱗のようなものを拾ったデッカードは、それが人工蛇の鱗であることを突き止める。「作ったのはハサン。人工蛇XB71で、買ったのチャイナタウンのルイス」

ルイスの店で人工蛇を体に巻きつけて踊る娘にデッカードは接触しようとするが、娘はデッカードを突き飛ばして逃走しようとする。逃げる娘を射殺するデッカード。(レプリカントの処理とはいえ、女を殺すのは気分が悪い。おっと、また感情が出てしまった)

ブライアンはあと四匹殺せ、とデッカードに命令する。「三匹だろう」「四匹だ。タイレル社にいた女。自分がレプリカントと気づいたらしく脱走した」ゾラを殺され怒り狂ったレオンは、デッカードに襲いかかる。「俺が何年生まれか知っているか」「知らん」「2017年生まれだ。あと何年生きられるか」「あと二年」「先に死ね。死ぬのは怖いだろう」デッカードはレオンに殴り殺されそうになるが、レーチェルがレオンを射殺する。

もし私が逃げたら、あなたは私を追って殺すの、とデッカードに質問するレーチェル。「俺は追わない。借りがある。誰かが行く」「私の記録を見た?製造年月や寿命が書いてある記録」「機密になっている」「でもあなたなら」「俺は見てない」ピアノを弾くレーチェル。「うまいな」「覚えたのはタイレルの姪かもしれないわ」レーチェルにキスするデッカード。「キスしてと言うんだ」「言えないわ」「言うんだ」「キスして」もう一度レーチェルにキスするデッカード。「抱いてと言え」「抱いて」「もう一度」「抱いて。可愛がって」

セバスチャンのところにいるブリスを訪ねるバッティ。「レオンが死んだ。もう俺たち二人だけだ」「やっぱり私たち死ぬのね」「死なないさ」セバスチャンがタイレルのチェス相手であることを利用して、タイレルと接触することに成功するバッティ。「俺を修理してくれ」「もっと改良かね」「もっと重要な問題だ。長生きしたいんだよ、おやじ」「無理だな。有機体のシステムを変えることは命取りだ。生命コーディングは変えられない」「……」

「外部から干渉を受けた細胞は鼠が沈没寸前の船から逃げ出すように、パニックを起こして命を絶つ」「僕たちは寿命が短い」「明るい炎は早く燃え尽きる。君は輝かしく生きてきたんだ。私は君を誇りに思っている」「悪いことを一杯した」「業績もあげた。命あるうちに楽しめ」「生物工学の神が呼んでいるぞ」タレイルの顔を握り潰し、セバスチャンを殺害して逃走するバッティ。

セバスチャン殺害を知ったデッカードは、セバスチャンのアパートに行き、ブリスに襲われるが、なんとかブリスを射殺する。一人ぼっちとなったバッティは怒りに燃えてデッカードを襲う。「恐怖の連続だろう。それが奴隷の一生だ」力尽きて、屋上から落下するデッカードの腕をつかんで抱えあげて、デッカードの命を助けるバッティ。「お前ら人間には信じられぬものを俺は見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船やタンホイザーゲートのオーロラ。そういう想い出もやがて消える。涙のように。雨のように。その時が来た」寿命がつきて静かにうなだれて死ぬバッティ。

どうして俺をバッティは助けたのか、と考えるデッカード。(多分、命を大切にしたのだろう。それが自分の命でなくても。俺の命でも。彼は自分のことを知りたがった。どこから来て、どこに行くのか。何年生きるのか。人間も同じなのだ)お見事でした。とデッカードに声を掛けるガフ。「これで終わりですね」「そうだ」「彼女も惜しいですな。短い命とは」レーチェルを連れてロサンゼルスを脱出して、緑の森の中を車で走るデッカード。(ガフは彼女を見逃してくれた。四年しか生きないと思って。だが彼女の寿命は限られてないのだ。お互い何年生きるか、誰が知ろう)

★ロロモ映画評

「二十一世紀初め、アメリカのタイレル社は人間そっくりのネクサス型ロボットを開発。それらはレプリカントと呼ばれた。特にネクサス6型レプリカントは体力も敏捷さも人間に勝り、知力もそれを作った技術者に匹敵した。レプリカントは地球外基地の奴隷労働や他の惑星の探検などに使われていたが、或る時反乱を起こして人間の敵に回った。地球に戻ったレプリカントを処分するために、ブレードランナー特捜班が組織された」

ロサンゼルス、2019年11月。チャイナタウンでヌードルを食っていた元ブレードランナーのデッカードがガフという男に連れられ、かつての上司のブライアンのところに連れて行かれる。レプリカントが四匹紛れ込んだ、とデッカードに話すブライアン。「スペースシャトルを攻撃して乗員を皆殺ししやがった」「やばいな」「大した騒ぎになるまいよ。お前が処分すれば」「俺はもう辞めたんだ」奴らは感情以外は人間と変わらないと話すブライアン。「製造後、数年たてば感情も生じるらしい。それだと面倒だから安全装置を組み込んだ」「どんな」「四年の寿命だ」「……」「タレイル社にも一匹いる。テストしてこい」

もはやSF映画の古典的傑作と言った風格さえあるこの作品は、やはりこの独特の映像世界に魅せられることになり、退廃的な東洋情緒あふれるロサンゼルスのチャイナタウンが2019年に実現するかどうかは微妙なところですが、この映像でまず日本人であるロロモは圧倒されるわけです。

映画は暗い雰囲気で続きますが、それはレプリカントの悲しみを表しているとも言え、製造した当初は感情のありませんが、製造して数年もすると感情も生じる恐れがあるので、四年の寿命を組み込まれたレプリカントは、なまじ人間以上に優れているためにその短い寿命が許せないことになり、バッティとタイレルの会話はなんだか人間と神の会話のようにもロロモには聞こえるわけです。

バッティとデッカードは対決し、全てに勝るバッティはデッカードを殺すことはできましたが、自分の命が尽きることを知ってデッカードを助けるわけです。「お前ら人間には信じられぬものを俺は見てきた。オリオン座の近くで燃えた宇宙船やタンホイザーゲートのオーロラ。そういう想い出もやがて消える。涙のように。雨のように。その時が来た」寿命がつきて静かにうなだれて死ぬバッティ。

どうして俺をバッティは助けたのか、と考えるデッカード。(多分、命を大切にしたのだろう。それが自分の命でなくても。俺の命でも。彼は自分のことを知りたがった。どこから来て、どこに行くのか。何年生きるのか。人間も同じなのだ)レーチェルを連れてロスアンゼルスを脱出して、緑の森の中を車で走るデッカード。(ガフは彼女を見逃してくれた。四年しか生きないと思って。だが彼女の寿命は限られてないのだ。お互い何年生きるか、誰が知ろう)

レーチェルはレプリカントですから、長くても四年しか生きられないはずなのですが、レーチェルを愛したデッカードは彼女の寿命は限られてないと思い、人間もレプリカントもどこから来て、どこに行くか、何年生きるかわからないとデッカードは言いますが、もしかしたらデッカードもレプリカントかもと思わせて、なかなかこの辺は哲学的でロロモには理解できないラストなのでありますが、ロサンゼルスを出た二人が走る世界は希望に満ちている世界のようでありますので、何か二人には明るい世界が待っているというハッピーエンドだったのだとロロモは思い込みたいのでありました。(2013年1月)

得点 89点

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