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【経済】

新紙幣、24年度から 元号発表直後、政権浮揚の思惑

 政府は九日、一万円、五千円、千円の各紙幣を約二十年ぶりに刷新し二〇二四年度前半に発行すると発表した。すかしの精度を高めるなど偽造防止対策の強化が主な目的。ただ、過去二回の刷新は発行の二~三年前に発表していたが、今回は五年前。国民が好感した新元号の決定後、間髪入れずに明るい話題を提供することで、政権への追い風を強める狙いもありそうだ。 (渥美龍太)

 新紙幣のデザインは、表面の肖像、裏面の風景などを変更する。一万円札は「日本の資本主義の父」と呼ばれる実業家の渋沢栄一と、赤れんが駅舎として親しまれる東京駅丸の内駅舎。五千円札は津田塾大を創立した教育者の津田梅子と藤の花、千円札には破傷風の血清療法を確立した医学者の北里柴三郎と葛飾北斎の代表作「富嶽(ふがく)三十六景」を採用した。あわせて五百円硬貨の素材を変更し、二一年度前半から発行する。

 新元号決定から一週間余りで発表したことについて、麻生太郎財務相は九日の記者会見で「たまたま重なった」と述べた。発行まで五年あけるのは、試作品完成に二年半を要し、現金自動預払機(ATM)など民間側の対応にも二年半かかるからだと説明した。

 ただ、デザイン刷新の準備期間は、前回の〇四年が二年三カ月、前々回の一九八四年も三年四カ月で、五年は異例の長さ。今回の「早すぎる発表」には、夏の参院選もにらんだ政権浮揚の思惑ものぞく。

 政策の方向性もちぐはぐだ。政府は十月の消費税増税にあわせてポイント還元制度を始め、小売店は「キャッシュレス決済」のための設備導入に追われている。一方、紙幣刷新への対応に企業は負担を強いられることになり、キャッシュレス化で現金流通の社会的なコストを抑えるという大義名分は揺らぎかねない。

 

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