英語学習の世界には、さまざまな勉強法が溢れている。最新の脳科学の観点から、どの方法が本当に効率的かを考えてみよう。 「単語や文法は、単語帳や教材で読んでインプットする。長文を読んでわからない単語が出てくれば、すかさず辞書で調べる。苦手なリスニングは、海外のニュースを見て英語をシャワーのように浴びて耳を慣れさせる…」 このような学習スタイルで英語を勉強している人がいるとしたら注意が必要だ。これらの勉強法は、脳科学の観点からすると効果的な勉強法とは言えないからだ。 人間の本能である言葉は、すべて脳から説明がつく。例えば、日本人が英語をうまく話せないのは、脳が日本語にチューニングされていないからだ。その脳で英語を聴くと日本語のように話してしまう。情語が上達しないのは、センスがないからではなく、優れた日本語感覚を持っているからなのだ。 ただ一度、日本語にチェ―ニングされたからといって、他の言語に対応できないわけではない。 すべての人間の脳は複数の言語に対応できる柔軟性を持っている。たとえばスイスのようにフランス語やドイツ語、英語を使う多言語の地域で育てば、こどもは自然にバイリンガルになるもの。要は学習方法次第なのだ。 では、どのような学習をすると新たに英語脳や英語耳を作れるのだろうか。まず、単語の学習についてだが、通勤電車内で単語帳をめくりながら、覚えているかどうかを頭の中でチェックしている人をよく見かけるが、この勉強法は実はかえって忘れやすいのだ。 脳に何かを記憶させるには、できるだけ手掛かりが多いほうがいい。単語を覚えるよりも文章全体を丸ごと暗記し、音で聴いたり、声に出したり、あるいは英語を書いて、さまざまな方法でインプットしたほうが脳への定着がよくなり、記憶を引き出すときも簡単になる。 記憶を定着させるには、学習ツールも慎重に選んでいきたいもの。最近はどこにでも持ち運び可能なスマホのアプリを利用する人が増えてきた。しかし、脳科学の観点から、紙の辞書を持っておいたほうがいい。 その理由は2つある。1つはインプットした手かがりが増えること。紙の辞書を引くと、「この辞書の真ん中あたりの左側にあった」という物理的な位置情報が記憶されていて、それが思いだすための手がかりになる。また、少ない動作で目当ての単語にたどり着ける電子辞書や英辞郎やweblioなどの辞書サイトは、便利な半面、記憶の手がかりが少ない。 また、電子辞書や辞書サイトは一覧性が低いこともデメリットになる。辞書で単語を引くと、さまざまな語彙やその例文が出てくる。このように日本語と英語の関係は「個対個」ではなく、「多対対」で複雑だが、一覧性のある紙の辞書ならたくさんの語彙や例文が自然と目にとまり、辞書を引くたびにさまざまな言語の特徴が脳に蓄積されていくのだ。 |