昨年、「U.S.A.」がダサかっこいいと話題になり、再ブレイクした7人組ダンス&ボーカルグループDA PUMPが最新曲「桜」を発売した。メンバーの入れ替わりが激しく、3年半以上新曲がリリースできないこともしばしば。不遇の時を経て9か月ぶりに新曲を発表。さらに、東京・日本武道館公演の切符をつかみ取り、DA PUMP旋風がさらに加速しそうだ。(聞き手・畑中 祐司、水野 佑紀)
長い冬が明け、春が訪れた。だが再び脚光を浴びてもISSA(40)の表情は硬く、地に足がついていた。
先月、最新曲「桜」を発表。7人体制になり、3年半ぶりに発売した「New Position」(14年)、さらに3年半ぶりの「U.S.A.」に次ぐ3枚目のシングル。前回からわずか9か月でリリースにこぎつけた。ISSAは「コンスタントに新曲を出したいとずっと思っていた。これまでやってきたことは無駄じゃなかった」と喜ぶ。
「生涯ファビュラス」といった独特な歌詞など前作の世界観を踏襲しつつ、和テイストな一曲となった。先月都内で行われたリリースイベントには、昨年6月の「U.S.A.」時より約1000人多い3000人が集結。枝垂れ桜をイメージした「サクラフィンガー」という振り付けをまねるファンもいた。衣装は3パターンとなり、フィッティング回数も増えた。DAICHI(30)は「これまでは一張羅だったのでいろんなバリエーションの衣装を着られるのは毎日違った雰囲気で踊れるのでワクワクします」と満面の笑みを浮かべる。
前作の社会現象化は言うまでもない。92年のユーロビートのカバーで、独特な歌詞や衣装、親指を立てる「いいねダンス」などが「ダサかっこいい」と話題になった。日本レコード大賞の優秀作品に選出され、YouTubeの再生回数は1億7000万回を突破した。世間から熱視線を受けた中での次の一手にISSAは「やっと7人でやっているんだってことを知ってもらった。これからだと思っています」。スタート地点に立ったことを冷静に強調する。
一方、新メンバーは初めてヒット曲を経験した。DAICHIは加入当時、「街を歩けなくなるかなと思ったら、あれ?って」と知名度の低さを思い知った。昨年下半期からはバラエティーなどテレビ番組に出演する機会が増え、年末には紅白歌合戦に出場。16年ぶりにやっと思い描いていた状況を迎え「見られる機会が増えたからか、みんな輝いてくるんですよ」。KIMI(35)も「ダンスや歌だけじゃなく、しゃべらなくちゃいけない。最初のうちはテレビに出ると『ワイプ抜かれているからもっといい顔してください。みんな顔が死んでます』って言われました。普段からいろんなところから盗んで勉強しなくちゃ」とうれしい悲鳴を上げた。
平成9(1997)年、4人組でデビュー。「if…」(2000年)などヒット曲を出し、98年から02年まで5年連続でNHK紅白歌合戦に出場したが、08年までに2人が脱退。ISSAは「人数を増やして面白いエンターテインメント集団になれないか」と考え、目をつけたダンサーにオファー。同年に7人の新メンバーが加入し9人となり、14年に現在の7人体制となった。
新メンバー加入後、最初にリリースした「SUMMER RIDER」(09年)はオリコン週間22位。14年、全国14都市のショッピングモールライブを行った。絶世期と比べると観客や舞台の大きさが小規模になった。
ISSA自身も08年に右大腿(だいたい)骨と骨盤を骨折し、10周年コンサートが中止。医師からは「踊るのは無理です」と宣告され、今も後遺症が残る。グループの看板を下ろすことが頭をよぎったこともあったというが、結成当時から抱き続けた「DA PUMPの名前を残すことが俺の宿命」という信念を貫いた。
6月13、14日には東京・日本武道館公演を控える。7人体制で単独として初めて。この公演に並々ならぬ思いを持つメンバーがいる。KIMIだ。
デビュー翌年、初コンサート最終日を日本武道館で締めた。当時中学3年生だったKIMIは観客席から見ていた。ドレッドヘアで歌って踊りまくるISSAの姿に「超かっこいい。これはモテるな」と憧れ、ダンスの道へ進み、ロサンゼルスにダンス留学した。
現在は、ダンスだけでなくラップなども担うISSAの右腕にまで成長した。今年2月に行われた同じ事務所に所属する歌手・三浦大知(31)の同所ライブで社長から「日本武道館2デイズ行くぞ」と告げられ、胸が高鳴ったという。「僕が初めてISSAさんを見たのが日本武道館だった。そのステージで一緒にライブができることが想像できない。日本武道館に立てるのは簡単じゃないと身に染みて分かったので、気持ちを引き締めたい」
ISSA自身も単独コンサートで武道館に立つのは02年9月以来16年9か月ぶりだが、あくまで通過点に過ぎない。
「去年『U.S.A.』という曲で歯車がいろんなものを巻き込み、幅広い世代の人に知っていただける機会ができた。それがあってからの武道館。純粋にもっとこうなりたいという目標を掲げて、今よりも進んでいかなければならない。結果を残したい。よりいいパフォーマンスができればいい」
平成に誕生し、平成最後に返り咲いたDA PUMP。大舞台で開幕する令和の時代は、さらに高く跳びはねる。
◆DA PUMP(ダ・パンプ)1997年にシングル「Feelin’ Good ~It’s PARADISE~」でデビュー。主なヒット曲は「ごきげんだぜっ!~Nothing But Something~」(98年)など。2014年1月からISSA、YORI、TOMO、KIMI、U―YEAH、KENZO、DAICHIの7人組で活動する。