宝塚歌劇雪組公演『Samourai(サムライ)』(梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)のネタバレ感想です。12月24日(土)公演(12時開演)の観覧です。
演目が発表になって「わぁ、面白そう!」となったものの、当たり前だけど未涼亜希は出ていないし、忙しい時期で都合がつくか分からないしどうしよう、とけっこう悩んでいました。結局、最後の一押しになったのが、ポスターの格好良さだったように思います(上記画像)。ああこれはもう行かなあかんやろ、とふんぎりが付いたのが初日1週間前。気持ちが変わらないうちに、とぴあのカウンターでチケットを買いました。イブの日になったのは、23日か24日しか行ける日がなかったことと、初日(23日)は売り切れていたことからです。ぴあのサイトでは24日昼公演は「空席あり」の○マークだったのでガラガラなのかと思っていましたが、買いに行ったときにはひとり席でもかなーり後方のかなーり上手寄りの席しか空いておらず、結局わたしが買ったのも最後列サブセンターのチケットでした。ま、ドラマシティなら最後列でもかなり見やすいので問題無し。
当日に劇場に入ってみても、当日券もいちおう出てはいたようですが、結局は満席だったのではないでしょうか。そして実際に芝居を観てみて、席が埋まるのも納得だなぁと思いました。これならリピートしたくなるなぁと…そんな、大満足なクリスマスイブを過ごすことができました。
※ネタバレしています。伏せ字にしたりして頑張ってはいますが、それでも…まだドラマシティも、もちろん東京公演も残っていますし、お気をつけください!
※毎度のことですが、大して詳しくないファン、そして詳しくなりたいとはさほど思っていないファンですから、厳しいツッコミとかはご勘弁くださいね…
<Samourai(サムライ)>
○「なんかほとんどの人が死ぬらしい」ということ以外、大した情報も持たずに観に行ったわけですが、幕開けの音月桂・早霧せいな・緒月遠麻の3人による連獅子(連獅子というのですよね?)の舞からずっと、魅力的な人物造形とスピーディーなストーリー展開に圧倒されっぱなしで、「うわぁ、来て良かった!」「というかもういっかい観たい!」「…でももう観に来れる日がない…」と心が揺れ動きました。ベタだなーと思う部分なんかもありましたけれど、そのベタささえも好感度を上げる方向へ作用していた気がします。…なんだか、雪組は前回の大劇場公演があんなだったので、次の公演でこんな佳作に当たるとテンションも上がってしまいますねぇ…
○登場人物がどれも魅力的でした…。真っ直ぐで不器用な前田正名(音月桂)、ツンデレかと思いきや…なマリー(舞羽美海)、最後まで笑わせ泣かせてくれた渡会晴玄(早霧せいな)、熱いリーダーのフルーランス(緒月遠麻)、ものすごーくおいしい役だったチプリアニ(香綾しずる)、超美形がバリバリの悪役というのにゾクゾクしたガスタルディ(大湖せしる)等々…他の役もどれも良い役でしたし、メイクや髪型・衣装などの見た目も良く、また皆が皆、とても熱演だった…狭いドラマシティだから気付いただけかもしれませんが、演者の涙をこれほど何度も観たのは宝塚では初めてかもしれません。
○ところで、このお話はずっとフランス革命のときのものだと思っていましたが、実はパリ・コミューンのときの話だということに、会場に入ってパンフレットを読んで気づきました(笑)。そう錯覚していたのは、今回の話もベルサイユが戦いのキーになっていたからかと思います。「ベルサイユへ向かえ!」と市民軍が決起するシーンは、どこのベルばらだよという感じだったので…(しかもわたしが宝塚で唯一観たベルばらはあの『アンドレ編』だけなので、本家より今回のほうが格好良かったという…)。
○主人公の前田正名の次男はタカラジェンヌと結婚したのだということもパンフレットで知りました。このことは芝居上でもシーンを作りその元タカラジェンヌ・前田光子(芸名・文屋秀子)を麻樹ゆめみが演じて触れられていました。そりゃあこれは宝塚で演るべき話だよなぁ、今まで演らなかったのがおかしなくらいだ、と思いました。タカラジェンヌ絡みの部分がなくたって、このストーリーは“使える”話でした。
○序盤は日本でのシーンですが、登場人物の方言がかなりきつくて、聞き取るのについていくのが大変でした。坂本龍馬(緒月遠麻・二役)の土佐弁や正名の薩摩弁。渡会も広島弁かな。でも雰囲気がよく出ていて良かったです。フランスに渡ってもしばらくは方言なんですよね、これは訛ったフランス語を喋っているということをあらわしているのかな?渡会なんかは最後まで訛っていましたよね。それにしても、これらの方言を習得する演者は大変だったかと思います。
○そーいやマリーは、「正名」「渡会」と呼ぶんですねぇ。正名はいいですが、渡会は苗字だから冷静に考えると違和感。学生時代の同級生とかのサバサバした関係なら無くもないかと思いますが、マリーのような立場の人が苗字呼び捨てってちょっと面白かったです。特に渡会の○○のときとかね(←ネタバレ自粛の伏せ字)。
○渡会がチプリアニのことを「チプ公」と呼んでいて、なかなか良い味を出していました。どうでもいいですが、それをあとから思い出すとき「あれ?“チギ公”だっけ?いやそれじゃ自分の名前を呼んでることになるな…」とか考えて自分で笑ってしまいましたw
○正名が渡仏して断髪したあとの髪型もなかなか格好良かったですが、鬘の乱れか目のあたりに横の髪がかかっていることが多かったのはちょっと気になりました。顔に少しかかっているほうが個人的には好みの髪型ですが、演じている側は邪魔なんじゃないかなぁと思って…
○泣けるシーンはいっぱいありました。わたしが頑張って泣かなかったですが、周りのお客さんはけっこうやられてたなぁ…。チプリアニが「ラ・マルセイエーズ」を歌うシーンなんかはあざといって思う気持ちもあるのにそれ以上にグッと来てしまった。でもいちばんじーんときたのは「ショパン」のところかなぁ、あんな佳境でああいうこと言わせてあんな音楽流すのはちょっと反則気味だと思うほど。うまいこと泣かせるようにできていて、そういう意味でも良い舞台だったと思います。
○ほんまにみんな死んだよ…と芝居が終わったときにはしばし呆然。生き残ったのが○○と○○だけなんだ、まさか○○まで死ぬとは、と…(いちおうネタバレ配慮。東京公演が終わったら名前を入れます)市民軍には女性も多く参加しているので、軍人ではなく市民でしかも女性が舞台上でバタバタを射殺されていくのはなかなか衝撃的な図ではありましたし胸も痛みました。
けれど、主要人物の死がどれもツボを突いたもので…戦争の前に主人公たちの「サムライ」としての魂を刺激するような同胞の死・おそらく弟のように可愛がっていたであろう人物が戦いの序盤で顛れる・尊敬されるリーダーが皆を守りそして敵を倒して死んでゆく・それと、これでもう助かったと思える場面での死…所謂“感動的なストーリー”を作るのには、わたしでも思いつくある意味ベタともいえる展開ですが、ベタだからこそいい、良いものは受け継がれる、ということなのだなと実感しました。いや、何度も言いますが、良かったです。
○フィナーレの黒燕尾が格好良かった!それと、4組のデュエットダンスが美しかった。4組同時リフトにはちょっと感動。音月桂と舞羽美海のリフトだけ格段に長かったのもなんだか良い演出だなぁと思いました。ああ最後まで本当に楽しかった、と満足して劇場を出ました。その後、クリスマスの買い物で梅田を揉まれまくり大変でしたが、この余韻でなんとか乗り越えることができました(笑)。
○今は、原作の本を読んでみようかなという気持ちになっています。原作付きの宝塚の公演は数多くありますが、公演を観終わったあとに「原作も読みたい!」とこれほど強く思ったのは初めてです(『スカーレット・ピンパーネル』の原作『紅はこべ』を読もうかなとチラッと思ったことがあったくらい。結局読んでないし)。もうすぐ花組公演で大劇場に行くので、キャトルレーヴで『Samourai』の原作本を買ってみたいと思っています。
次回は、花組大劇場公演『復活 -恋が終わり、愛が残った-』『カノン-Our Melody-』を観に行く予定です。おそらく1月3日の公演かな、お正月三が日の公演って華やかで好きなので。(前回の『オーシャンズ11』のエントリに次回は雪組バウホール公演『インフィニティ』の予定、と書いていましたが、それよりも花組のほうが早くなりそうです)。
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