半数近い基幹統計で不正
毎月勤労統計の話に戻ろう。この統計は、労働者の賃金や労働時間の毎月の変動を見るために作られている。この数値を基にして雇用保険の給付水準などが決められており、GDPの推計にも用いられている重要な統計なんだ。
現在の安倍政権では、賃金上昇や働き方改革を主要政策として掲げている。労働者の賃金が上がっているのか下がっているのか、残業時間が増えているのか減っているのか。それを検証するための土台となる統計が間違っていたとなれば、もはや政策を議論する意味がなくなってしまう。
毎月勤労統計の不正発覚だけでも十分大きな衝撃だったけど、基幹統計の不正はそれ一つで終わらなかった。各省庁が調査した結果、56のうち26の統計で何らかの問題が見つかったんだ。
事あるたびに、中国の統計を疑う人がいるけど、基幹統計の約半数に問題を抱えた日本に、よその国のことをとやかく言うことはできないよね。
さて、ここでマナブくんの質問に答えよう。統計学は何の役に立つのか。僕が教える「数式なしで学べる統計学」は、例えばビッグデータを解析してマーケティングに役立てるような類いのものとはちょっと違う。統計データを読むときの「目の付けどころ」を養うためのものなんだ。これを身に付けて、世の中にあふれるデータに踊らされないリテラシーを鍛えてほしい。
「よく分かりました! それじゃさっそくですけど、統計ってどうやって作るのか教えてください!」
興味を持ってくれたみたいでうれしいよ。次回の講義で、統計作成の手順を分かりやすく説明しよう。