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♪~
(なつ)シューシャイン! いらっしゃい!
(泰樹)なつは いるか?(とよ)なつ?
こないだ来た あの子だ。ああ… あの子が どうかしたの?
(富士子)いなくなったんです。えっ!
今晩は こっちで保護するからね。
あの…。えっ?
すみません… お便所貸して下さい。
お~… 大丈夫か?
急ぐべ 急ぐべ…。
ほら こっちだ。
♪~
♪「重い扉を押し開けたら暗い道が続いてて」
♪「めげずに歩いたその先に知らなかった世界」
♪「氷を散らす風すら味方にもできるんだなあ」
♪「切り取られることのない丸い大空の色を」
♪「優しいあの子にも教えたい」
♪「ルルル…」
(剛男)逃げた!?ええ。
便所に行きたいって言うから行かしたらどうも そこから… 逃げたらしくてね。
う~ん…。なして 逃げたんですか?
あなた あの子に何したんです?何もせんよ。
何を言っとるんだ。
ただ 保護してやると言っただけだ。
そうか… あの子は また施設に送られると思ったんだ。
施設?東京で 警察の狩り込みにあって無理やり 孤児院に送られたんだ。(夕見子)かりこみって?
警察が 戦災孤児を一斉に捕まえてそういう施設に送り込むことだ。
浮浪児を保護するというより街を きれいにするために…まるで 野良犬を捕まえるみたいに!
ちょっと あんた。
警察が悪いみたいに…。
そもそも あんたんとこが嫌であの子は逃げ出したんでしょうが!
何を言っとるんだ。
♪~
あっ… どうだった?
ダメだ。警察からも逃げたようです。
まあ 逃げ足の速い子だねえ。
(妙子)お義母さん そのひと言余計だと思いますけど。
闇市を捜したんですけどどこにも いませんでした。
それなら もうこの近くには いないかもしれませんね。
だから 逃げ足が速いんだろう?
(雪之助)だけどさ 子どもの足でそんな遠くまで行けないでしょう。
(雪次郎)ただいま。お~ 雪次郎。
なしたの?お前 あの子 見なかったかい?
ほら この前 ここで 柴田のおじいさんとアイスクリーム食べてた…。
ああ… 夕見子ちゃん?バ~カ。 あれは なっちゃん。
本当の夕見子ちゃんは そこにいるべ。(雪次郎)えっ?
あっ… なっちゃんより めんこい。
知ってる。ねえ そんなことよりその辺で なっちゃん見かけなかった?見ないよ。 なして?
やっぱり あの子は東京に戻ろうとしたんです。
そのために 靴磨きをしてお金を作ろうとしたんでしょうね。
孤児院にいるお兄さんに会いたくてそこまで…。
あのきょうだいは特別な絆で結ばれてるんだ。
戦争によって そうなったんだ。私が 初めて孤児院で会った時…。
こら! 向こうへ行ってなさい!
すいません。
初めまして 柴田剛男と申します。
君たちのお父さんとは戦友です。
戦地で ずっと一緒にいた。とても仲よくしてもらってました。
奥原咲太郎君と なっちゃんでしょ?
君たちを捜し回ったんだよ。
やっと会えた。
あの… もう一人小さなお嬢さんがいらっしゃるとお父さんから聞いてたんだけどまさか…。
(咲太郎)千遥は 親戚に預けました。
親戚に? 妹さんだけ?
まだ小さい妹だけならばって 連れてった。
そうだったのか…。
それは つらかったね。
せっかく ためたお金もここのやつらに取られて…。
チクショー…。
お兄ちゃん 大丈夫だよ。
千遥は 幸せに暮らしてるよ。
ここにいるより ずっといいよ。
それで… 何の用ですか?
ああ… 実は戦死された君たちのお父さんから手紙を預かってきたんだ。
それを 渡さなくてはと思ってね。
軍隊の検閲を通さないお父さんの本当の手紙だ。
君たちへの思いが込められてる。
あっ お父さんの絵だ!
絵が とても上手だよね。
部隊では いろんな人の似顔絵を描いてお父さんは とても人気があったんだ。
明るくて 面白い人だったね。
嫌な上官の似顔絵を 面白く描いて暗い戦地でその時だけは 笑い声が起こった。
そのうち いろんな人から家族の似顔絵を頼まれるようになってお父さん 一生懸命にその人から 特徴を聞いて丁寧に 明るく すてきな絵を描いてね。
みんなに それで喜ばれて。
どうも ありがとうございました…。
ねえ あの… よかったらおじさんと 一緒に来ないか?
おじさん 北海道に住んでるんだけどとても広い所だ。
ここより ずっと広い。
これから そこに帰るんだけど一緒に来ないか?
君たちのお父さんと約束したんだ。
何かあった時には お互い助け合おうって。
♪~
おじさん!
咲太郎君…。
なつだけ… 妹だけ お願いできませんか?
君は どうするんだ?
俺まで行ったら下の妹が かわいそうだから…。
千遥を 迎えに行けなくなるから…。
それに なつのことも 必ずそのうち 迎えに行きますから!
だから それまで…。
大丈夫だよ なつ ちょっとの辛抱だ。
手紙を書くから。
兄ちゃん しっかり働いて必ず なつを迎えに行くからな。
千遥と一緒に 迎えに行くよ。
だから おじさんの家で辛抱して待っててくれ。
なっ?
♪~
おじさん お願いします。
なつを幸せにして下さい。
不幸にしたら 絶対 許さねえからな!
覚えとけ!
はい!
それから あの子は泣かずに 私についてきました。
今 思うと あの子は お兄さんの負担を少しでも減らそうとしたのかもしれない。
だから 必死に我慢して…。
そのお兄さんにどうしようもなく会いたくなってもそれは しかたがないさ。
あの子は さぞ怒ってるでしょうね。
大人らにあっちに行かされ こっちに行かされて。
怒りなんていうのはとっくに通り越しとるよ。
怒る前に あの子は諦めとる…。
諦めるしかなかったんだ。
それしか 生きるすべがなかったんじゃ。
あの年で…。
怒れる者は まだ幸せだ。
自分の幸せを守るために 人は怒る。
今のあの子には それもない。
争いごとを嫌ってあの子は 怒ることができなくなった。
(泰樹)あの子の望みはただ 生きる場所を得ることじゃ。
♪~
(天陽)うわ~…。
あっ 天陽君!
奥原… なつ?
どうしたの?兄ちゃんと 帯広に買い物に来て俺は ここで釣りをしてる。
お兄ちゃんがいるんだ。
君は?
うん… 私も家族と。
家族って 柴田夕見子の?
うん。
買い物に来て… ここで待ってるの。
とにかく その辺を捜してきます。
おい ちょっと待て。
あの子は賢い。
もし 一人で生きようとするなら 水だ。
よいしょ…。お~ 来た!
はい。
うわっ うまいな…。
ねえ この魚 頂戴。
もちろん いいけど… 食べるのか?
うん。
一人で?
家族を待ってる間に…。
おなか すいちゃった。
何かあったのか? 家で。
何もないよ。
どうして?
君が寂しそうだからに決まってるだろ。
寂しくなんかないよ。
(陽平)天陽。兄ちゃん。
誰だ?学校の同級生。
家族と こっちに来てるんだって。
こんにちは。こんにちは。
帰るぞ。うん。
一緒に帰るか?
ううん ここで待ってないと。そうか。
じゃあ 明日 学校でね。
学校で会おうな。
分かった。
ほら… 抱えて。
ありがとう!うん!
なつよ そんなに寂しく笑ってみせるな。