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      『あざみの歌』と『赤色エレジー』 - 『赤色エレジー』は盗作か?

       玄関脇にアザミが咲いた。
      植えたわけでもないのに、勝手に咲いた。
      我家の庭は半分野生のままである。


       アザミといえば『あざみの歌』という曲があり、これが自分は結構お気に入りである。
      抒情的で美しい。
      古臭いと思う人も居るのかも知れないが、自分は好きである。
      カラオケで歌うこともある。
      横井弘作詞、八州秀章作曲である。
      自分が若い頃、これと似た曲で『赤色エレジー』という曲もあった。
      あがた森魚が作詞、作曲をしている。
      シンガーソングライターの走りの頃である。
      ところが中々面白いことがある。
      『赤色エレジー』が最初にレコードになった時、作詞作曲あがた森魚となっている。
      ところが、次の年違うレコード会社から発売された時には、作詞あがた森魚で作曲八州秀章となっている。
      最初にこのレコードが発売されたのは1971年。
      幻燈社というところから発売されている。
      そして翌年、今度はベルウッドという会社から発売されている。
      一年で作曲者が変わった?
      これはどういうことなのか?
      一番簡単の考えられるのは、あがた森魚が盗作していたということである。
      そして、その盗作を認め、八州の了解をとって改めてレコードを発売した。
      そこでその謎を解明すべく、この2つの曲を同じイ単調に移調して並べてみた。


       まず曲の長さをみてみると『あざみの歌』が16小節で『赤色エレジー』も16小節。
      ならば、同じ長さかというとこれが違う。
      『アザミの歌』が6/8拍子なのに対し、『赤色エレジー』は3/4拍子となる。
      つまり、『アザミの歌』の方が倍の長さとなる。
      倍の長さとは、倍の拍数があるということである。
      従って、同じ速さで曲を始めると『赤色エレジー』の1番の歌詞が終わった段階で『アザミの歌』がちょうど中間地点ということになる。
      そこで今度はメロディーをみてみる。
      そうすると、前半は良く似ている。
      『あざみの歌』の4小節目、つまり『赤色エレジー』の8小節目までがかなり似ている。
      この範囲の中では2音しか違わないといっても良いだろう、
      32拍の中で2音であるから、ほとんど同一といっても良いだろう。
      その上、コードの進行も同じであり、強く盗作を疑わせる。
      ところが、後半に入ると殆ど音が重ならない。
      次の32拍の中で重なるのは2音だけである。
      コードの進行も違う。
      さらにそれ以降のフレーズは『赤色エレジー』にはないのだから、比較のしようもない。
           楽譜

       普通意図的に盗作をするのなら、こんなに見え見えなことはしないだろう。
      もっと上手に利用する。
      ただ『あざみの歌』がNHKの『ラジオ歌謡』で八州本人の歌声で最初に放送されたのは1952年の8月である。
      あがた森魚は1948年9月生まれであるから、まだ4歳にもなっていない。
      しかし、その後も『アザミの歌』はヒットし続けたのだから、幼いあがた森魚の脳髄に、いつの間にか入り込んだ可能性は大いにあると思う。
      実は、自分の父親は酔っぱらうと、この曲をよく歌ったり、マンドリンで弾いたりしていた。
      あがた森魚の親も大体自分の親と同世代だろう。
      あがた家(本名は山縣家)でも同じようなことがあったのではないだろうか?
      私はこれは無意識の盗作だったのだろうと思う。
      だから、あがた森魚はレコードを再発売する時に、それ程抵抗もせずに作曲者名から自分の名前を外すことに同意したのではないだろうか?


       しかしながら、私はこの2つの曲は曲としては別のものだと思う。
      確かにこの2つの曲はもの悲しさという共通性がある。
      メロディーが重なるところもある。
      しかし『あざみの歌』は昭和抒情歌なのに対し『赤色エレジー』は大正ロマンに対するノスタルジーである。
      違う言い方をすると、『アザミの歌』がセンチメンタルなのに対し、『赤色エレジー』は閉塞的である。
      その醸し出す印象はまったく違う。
      その一番の理由は拍子だと思う。
      最初に指摘したように『あざみの歌』が6/8拍子なのに対し、『赤色エレジー』は3/4拍子となる。
      『赤色エレジー』は『ジンタ』である。
      日本には伝統的に3拍子がなかった。
      日本に3拍子が入ったのは明治以降である。
      その初期の3拍子を『ジンタ』といった。
      『天然の美』などが有名である。
      それはそれで良いのだが、熟度という意味ではたとえばヨハン・シュトラウス一族などの曲と聞き比べるてみるとかなり見劣りする。
      それに対し『あざみの歌』はこの3拍子を6拍子に発展させ、見事な流れを作っている。
      これはかなり異論もあろうが、ヨハン・シュトラウス一族の曲と並べても決して見劣りしないと思う。
      そして、旋律は単音なのだが、音の厚みを感じさせる。
      独断と偏見で言わせてもらえば、『赤色エレジー』より曲としての熟度が高い。
      違う言い方をすると、プロの仕事である。
      『赤色エレジー』は良くも悪くも素人の仕事である。
      コード進行は主要3和音のみである。
      勿論、素人は素人の良さがあり、その生な表現がかえって聴衆を引き付けることもある。
      それを狙ったという言い方も出来る。
      実際『赤色エレジー』は多くの人を魅了し、60万枚の売り上げを記録した。
      今でも大勢のファンが居る。
      しかし、作曲家としての技量の差は歴然としていると思う。
      こんなことを言うと、森魚ファンにさらに叱られてしまうが、八州秀章が『赤色エレジー』を自分の曲とするのに、よく同意したものだと思う。
      『赤色エレジー』が出た1971年の時点の八州はすでに大作曲家である。
      『高原の旅愁』『港に赤い灯がともる』『さくら貝の歌』『山のけむり』『毬藻の唄』そして『あざみの歌』とヒットを連発していた。
      今更、『赤色エレジー』の印税が欲しかった訳でもないだろう。
      実は八州秀章もあがた森魚も北海道出身である。
      八州は真狩村、あがたは留萌市生まれの共に道産子である。
      八州としては同郷のよしみとしての善意だったのではないだろうか?
      こういった形であがた森魚を盗作疑惑から救った。
      レコード会社としては、すでに日本音楽界の重鎮だった八州とのトラブルを避けたかった。
      そして、あがた森魚自身も無意識の盗作の可能性を感じていた・・・。
      この3者の思惑や考えの結果、一年で『赤色エレジー』の作曲家があがた森魚から八州秀章に変わったのではないだろうか?


       八州は故人だから聞きようもないが、あがたはまだ現役で頑張っている。
      ただ、無意識の世界は本人も分からない。
      聞かれれば、自分の作曲だったとしか答えようがないだろう。
      実際この曲は(天から)降りてきたと言っている。
      まあ、いずれにしても『あざみの歌』』も『赤色エレジー』も良い曲である。
      カラオケで途中から違う曲の方へ脱線しないように注意しながら楽しもう。
      実のところ、自分も何年か遅れで、あがた森魚と同じ寮でガロを読みながら青春時代を過ごしたようである。


      「あざみの歌」
      横井弘作詞・八洲秀章作曲

      山には山の 愁(うれ)いあり
      海には海の 悲しみや
      ましてこころの 花ぞのに
      咲しあざみの 花ならば

      高嶺(たかね)の百合の それよりも
      秘めたる夢を ひとすじに
      くれない燃ゆる その姿
      あざみに深き わが想い

      いとしき花よ 汝(な)はあざみ
      こころの花よ 汝はあざみ
      さだめの径(みち)は はてなくも
      香れよせめて わが胸に



      「赤色エレジー」
      あがた森魚作詞・八洲秀章作曲

      愛は愛とて 何になる
      男(おとこ)一郎 まこととて
      幸子の幸(さち)は どこにある
      男一郎 ままよとて
      昭和余年は 春も宵
      桜(さくら)吹雪(ふぶ)けば 蝶も舞う

      寂(さみ)しかったわ どうしたの
      ああ 母さまの 夢見たね
      おふとん もひとつ ほしいよね
      いえいえこうして いられたら

      あなたの口から さようならは
      言えないことと 思ってた
      はだか電球 舞踏会
      踊りし日々は 走馬燈(そうまとう)
      幸子の幸は どこにある

      愛は愛とて 何になる
      男一郎 まこととて
      幸子の幸は どこにある
      男一郎 ままよとて
      幸子と一郎の 物語
      お泪(なみだ)頂戴 ありがとう


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