【スポーツ】[柔道]丸山V、阿部1強に風穴 男子66キロ級2019年4月8日 紙面から
◇全日本選抜体重別柔道の世界選手権(8月25日開幕、東京・日本武道館)代表選考会を兼ねた全日本選抜体重別選手権の最終日は7日、福岡国際センターで男女計7階級が行われた。男子66キロ級では、丸山城志郎(25)=ミキハウス=が決勝で世界選手権2連覇中の阿部一二三(21)=日体大=を破って優勝。初の世界選手権代表の座を射止め、東京五輪代表レースで一時は大きく水をあけられていた阿部に追いついた。 試合時間は13分を超えていた。丸山は得意の内股をこれでもかと繰り出し、逆に阿部の強力な担ぎ技は執念でこらえた。「気持ちの戦い。ただ投げることだけを考えていた」。最後は奇襲技の浮き技で阿部を畳に転がした。死闘に技ありで決着をつけ、大歓声の中で雄たけびを上げた。 早くから頭角を現し、世界選手権を2連覇し世界中から注目を浴びている阿部に対して、丸山は同じ階級で日陰の存在だった。天理大在学時の2014年には左膝前十字靱帯(じんたい)を断裂。「勝ったり負けたり」(丸山)の苦しさを味わった。 転機は2018年。夏のアジア大会で2位にとどまり、指導する天理大の穴井隆将監督(34)から「これからどうなるかわからないけど、全部注いでやってみろ。おのずと道は開ける」。何かが、吹っ切れた。重量級との乱取りを増やし、がむしゃらに練習した。 昨年秋に結婚した新妻の存在も助けになった。「食事の面でもサポートしてくれる。柔道に集中できる」。11月の国際大会・グランドスラム(GS)大阪では阿部を破って優勝。年明けのGSデュッセルドルフでも優勝した。阿部の背中を視界に捉え、2連勝した今大会でついに肩を並べた。 試合後、穴井監督は感涙にむせんだ。「世間が阿部、阿部と言う中、崖っぷちで踏みとどまった。私だったら柔道をやめていた」。阿部1強だった66キロ級に風穴を開けた、教え子の成長を手放しで褒めちぎった。 父は1992年バルセロナ五輪65キロ級代表の顕志さん。丸山は「五輪で優勝しておやじを超えたい。今はまだ五輪までの過程」と気を引き締める。夏の世界選手権で実現するであろう阿部との再戦へ、さらに先の東京五輪へ。苦労人の逆襲劇にはまだ先がある。 (木村尚公)
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