沖縄は再び重要な選択の時を迎えた。
玉城デニー氏の知事選出馬に伴い欠員が生じた衆院沖縄3区の補欠選挙が9日、告示される。21日の投開票日に向け、フリージャーナリストの屋良朝博氏(56)=無所属=と元沖縄北方担当相の島尻安伊子氏(54)=自民公認、公明、維新推薦=が立候補を表明し、前哨戦を繰り広げてきた。選挙戦は2氏による一騎打ちとなる見通しだ。
沖縄3区は本島北部と中部の一部を選挙区とする。米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設に向けて埋め立て工事が進む名護市辺野古を含むだけに、選挙戦の最大の争点は、新基地建設の是非だ。
昨年9月の県知事選や今年2月の県民投票に続き、その是非を巡る民意を示す機会となる。県の埋め立て承認撤回を取り消して工事を進める政府の姿勢と、これに法的措置などで対抗する県、それぞれへの評価も問われる。
2021年度に期限を迎える沖縄振興計画について、その後の在り方も争点だ。多くの観光地を擁する北部地区の振興や、渋滞緩和を図る交通施策、過疎地や医療への対策も政策の課題となっている。
3区の課題は沖縄全体の縮図であり、その解決手法は将来展望の試金石といえる。それを選ぶ今回の補選は、沖縄の未来を決める大切な選挙と位置付けられる。
本紙が4日に実施した両氏の座談会では、政策や立場の違いが一層明確になった。屋良氏は「安全保障イコール沖縄の基地というフレームを変える」と訴え、島尻氏は「南北の格差を解消し、沖縄の均衡ある発展を実現する」と主張、独自色を鮮明にした。
辺野古移設に反対する屋良氏は軟弱地盤の存在を念頭に「費用がいくらかかるか分からない工事を進めるのが責任のある政治と言えるのか。選択肢は他にもある」と述べ、機能移転によって普天間の危険性除去は可能だとの見解だ。
移設を容認する島尻氏は普天間第二小に普天間所属のヘリの窓が落下した事故を踏まえ「危険性除去のためには容認せざるを得ない。辺野古への移設は普天間の機能が100%移るものではなく、実質は整理縮小だ」と強調する。
次期振計についても両者の立場は異なる。屋良氏は、ものづくり関連産業の押し上げによる経済構造の転換を主張する。島尻氏は、教育、福祉などソフト面の充実や民間企業への支援強化を掲げる。子どもの貧困問題は両氏とも喫緊の課題として重視する。
告示後、両陣営はさらに政策論争を深め、有権者の声にも耳を傾けてほしい。それらを反映することで政策を磨き、より具体化することを望む。有権者は将来の沖縄を左右する選択であることを意識しながら両者の政策をじっくり見比べて判断してほしい。期日前投票が10日から始まる。ぜひ投票所に足を運び、貴重な1票を投じてもらいたい。