提督の憂鬱 作:sognathus
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目的は提督との復縁を武蔵に許してもらった事の報告です。
が、その日に限って秘書艦だったのは……。
榛名「……」
彼女「あの、何か?」
榛名「少将は大佐の元恋人なんですよね?」
提督「榛名」
彼女「いいのよ。そうだけど、それが?」
榛名「今も“元恋人”なんですよね?」
彼女(なるほど、そういう事……)
彼女「榛名、さん」
榛名「っ、どうして本部の提督とは言え、階級も大佐より高い少将が私なんかに“さん”を付けるんんです?」
彼女「今から貴女にお願いしたい事があるからよ」
榛名「……お願い、ですか」
彼女「榛名さん、貴女、この人の事を好き……愛してるわよね?」
榛名「……はい。大好きです」
彼女「私は貴女のその気持ちを理解したうえでお願いしたいの」
榛名「大佐との仲直り、ですか?」
彼女「いいえ。復縁よ」
榛名「っ! 駄目です! 許しません!」
彼女「……理由を教えてくれるかしら」
榛名「榛名から大佐を奪わないでください!」
彼女「奪いはしないわ。ただ、昔と同じように恋人になってほしいd」
榛名「それが榛名達から大佐を奪う原因になるんです!」
彼女「何故?」
榛名「榛名は……私は、所詮艦娘です。人間じゃありません……。生まれた時から親もいなくて、ただ一人……」
榛名「少将、そんな私達にとって唯一常に傍にいて身近に感じる人、提督がどんな存在か解りますか……?」
彼女「……よく解るわ。だって武蔵にとっても私はたった一人の提督だもの」
榛名「なら……!」
彼女「榛名さん、私が貴女に訊きたいのはそんな事じゃないのよ? どうして私が彼と恋人に戻ったらいけないのか、を訊いてるの?」
榛名「……少将は人間じゃないですか」
彼女「そうね」
榛名「艦娘の恋が人間同士の恋に勝てると思いますか?」
提督・彼女「……」
榛名「人間同士ならいずれその……子供だってできますよね? もしそうなったらそれこそ、大佐は二度と榛名達の方を振り向いてくれなくなります」
榛名「私は……そんな絶望にあいたくありません。大佐を一生失うなんて考えられません!」
彼女「……それが理由?」
榛名「……そうです」
彼女「榛名さん、これを見てくれる?」
榛名「それは……ケッコンの指輪、ですよね?」
彼女「そう。これは、武蔵と私のケッコンの証の指輪よ」
榛名「っ!少将は、武蔵さんを裏切るんですか?」
彼女「そんなわけないじゃない。これは絶対に彼女を離さない誓いでもあるもの」
榛名「ならなんで大佐と……!」
彼女「……許しを貰ったの」
榛名「え?」
彼女「彼女に彼と寄りを戻していいっていう許しを……」
榛名「二人とも手に入れようしているんですか? 強欲が過ぎますよ?」
彼女「だって……好き、なのよ?」
榛名「な……」
彼女「この気持ち、止められると思う? 貴女なら」
榛名「引き際を……諦めを着けるのも、周りに迷惑を掛けない決意を表す選択なんですよ?」
彼女「そんなのごめんだわ。絶対に後悔するから」
榛名「え」
彼女「榛名さん、私は武蔵も彼も、“二人とも”好きなの。そんな我儘な私がどちらか一方だけを愛するなんてするわけないじゃない」
榛名「あ、貴女はさっきから何を言って……」
彼女「榛名……貴女も我儘でいいのよ? 私は彼の事を愛してるけど、絶対に貴女から奪うような真似はしない。だって貴女の気持ちを知ってるもの」
榛名「私は今でも十分我儘のつもりです。それなのにこれ以上なんて……」
彼女「なら諦める?」
榛名「っ! 嫌です!!」
彼女「私もよ。絶対に嫌」
榛名「あ……」
彼女「ね?」ニコ
榛名「あ……あぁ……」
彼女「もう我慢しなくていいわ。本当に心の底から貴女の好きなようにしなさい」
提督「……」(俺の艦娘なんだが……相変わらずなんという状況制圧力だ)
榛名「わ、私は……」
彼女「榛名……」フワ……ダキ
榛名「あ……」
彼女「ごめんね。女の胸なんかで。でも安心してほしいの。私を信じて。私も榛名と一緒に幸せにさせて?」
榛名「少将……」ギュ
彼女「いい子ね……大佐もそんな貴女の事がきっと好きなはずよ。もしかしたら、私よりも……」
榛名「そう……でしょうか? 榛名が人間の少将より大佐に好かれるなんて……」
彼女「自信を持ちなさい。貴女は艦娘である前に乙女なのよ? 乙女が男を虜にするのに自信がなくてどうするのよ?」
榛名「少将……」ウル
彼女「泣きなさい。全部受け止めてあげるわ。あ、でも大佐に抱き着くのは後にしなさい? 服が濡れちゃうからね。私は客人だからいいけど」
榛名「うわぁぁぁぁん! 少将おおおおお!!」ギュ
彼女「はいはい。いーこ、いーこ」ポンポン
提督「……」(俺はひょっとして無用の存在なのではないだろうか……)
――数分後
榛名「すん……」
彼女「……落ち着いた?」
榛名「はい……」
彼女「ついでに聞いて悪いけど、私の我儘許してもらえる……?」
榛名「少将ならっ」ニコ
彼女「っ、ありがとう!」ギュ
榛名「ん……少将、苦しいです♪」
彼女「あ、ごめんね。嬉しくて……。ね、更についでで申し訳ないけど……大佐に……彼に抱き着いていいかしら? 幸せが……止まらないの……」
彼女「彼に……受けて止めて欲しいの……」
榛名「もう少将と私は大佐の恋人同士じゃないですか。遠慮しないで下さい。あ、でも次は榛名ですよ?」
彼女「……うん!」
榛名(あ……可愛い……)
彼女「大佐……」
提督「……俺からは何も言う事は……いや、また恋人になってくれるか?」
彼女「勿論よ……!」ブァッ
ダキッ
彼女「ね、キス……」
提督「駄目だ。仕事中はそういう事はしない」
彼女「状況に流され易い癖に……ん、いいわ。今は抱き締めてくれるだけで」
提督「まあ、それなら……」ギュッ
彼女「ねぇ」
提督「ん?」
彼女「私今、凄く幸せよ?」
提督「知っている。さっき榛名に言ってたからな」
彼女「もう……雰囲気考えてよ」プク
提督「榛名が見てるのに雰囲気と言われてもな……」チラ
榛名『タイサ ファイト!』ブンブン
提督(身振りで……)
ギュッ
彼女「んっ、どうしたの?」
提督「いや」(本当に女には適わないな)
~扉の向こう側
加賀「……どう、思います?」
金剛「Oh……凄い、強敵ネ」
武蔵「むぅ……抱き着き過ぎだっ」
加賀「私達も負けてられませんね?」ニッ
金剛「当然ヨ!」
武蔵「ふっ、誰に口を聞いている?」
加賀(そう。例えケッコンしてなくても、人間でもなくても……恋は誰にも負けるつもりはないわ。……愛してます、大佐)
以上、彼女と大佐の復縁と榛名の攻略でした。
これで少なくともこの物語の榛名は少しは黒いところが少なくなるかもしれません。