提督の憂鬱 作:sognathus
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そんな彼女が今日の秘書艦なわけですが、提督は彼女の事でなにか気になることがあるみたいです。
何を気にしているんでしょう?
提督「そういえば那珂は、歌が得意なのか?」
那珂「えっ。ど、どうして?」
提督「いや、ふと気になっただけだ。よくお前は自分の事をアイドルと言っているからな」
那珂「い、いやまあそうなんだけど。別にアイドルだからって歌に拘る必要はないんじゃないかな?」
提督「というと?」
那珂「ば、バラエティとか……」
提督「この辺境の地でバラエティか……」
那珂「にゅ、ニュースキャスターとか!」
提督「歩く情報発信源みたいな奴が既にいるからな。それもどうだろう」
那珂「うぅ……」
提督「……もしかして、ただ目立ちたいだけだったか?」
那珂「なぁ!?」ギク
提督「図星か。何故そんなに目立ちたがる?」
那珂「だ、だって……わたしってあまり特徴ないじゃん?」
提督「特徴?」
那珂「一時は改二になって凄くはりきってたけどさ、神通姉さんが改二になってからはあまり戦闘で活躍するのもどうかなって」
提督「姉に気を遣ったのか?」
那珂「あ、気を遣ったのは川内姉さんにだけどね。ほら、神通姉さんは私が言うのもなんだけど、凄く出来た人じゃん?」
提督「なるほど。あいつ最近元気がないと思う時があったが、そういう事だったのか」
那珂「あ、やっぱり? わたしももう直ぐ姉さんの番だよって励ましたりしてるんだけどね」
提督「そういうのはなるべくやめておけ。神通じゃないと逆効果だ」
那珂「それってどういう意味!?」
提督「普段の行いの所為だろう」
那珂「う……。ま、まあそういうわけで那珂的には適当に目立って皆の印象に残ろうかなって思ったわけでありまして……」
提督「そうか」
那珂「め、迷惑だった?」
提督「いや、迷惑というより、余計に印象が悪くなるだけだから寧ろこれからは控えた方がいいと思うぞ」
那珂「ええ!?」
提督「那珂、自覚してるかもしれないが、お前は軽巡としては優秀な部類に入る。そんなお前が実力を出し惜しみしてどうする?」
那珂「でも川内姉さんが……」
提督「川内はあれで、なかなか責任感があって妹思いのしっかりした姉だ。そんなあいつがお前が遠慮していることを知ったらどう思うと思う?」
那珂「……」
提督「妹の負担になってると知ったら、きっとあいつは今以上にショックを受けるぞ」
那珂「あり得るかも……」
提督「那珂、お前は無理に自分のイメージを作る必要はない。目立ちたいなら自分の実力を誇ってみせろ。実力に見合った戦果を示してみろ」
那珂「大佐……」
提督「お前は元々真面目な性格だと俺は思っている。勿論、決めつけるのはよくないが、それでも姉思いなのは間違いないだろ?」
那珂「うん……」
提督「なら、それを隠してどうする。寧ろその姿を姉たちに見せつけて、お前が一人前である事を伝えてあいつらを安心させてやれ」
那珂「姉さんたちを安心……させる……!」
提督「自信が出てきたか?」
那珂「うん! 大佐、那珂ちゃ……ううん。わたし頑張る! わたしがわたしである証をど真ん中にアピールしてみる!」
提督「良い意気込みだ。正に艦隊のアイドルだな」
那珂「ちょ、今それをここで言うのー?」プク
提督「はは、悪い。だが、お前の活躍で仲間の士気があがれば、アイドルという異名もそう悪くはないと思うぞ?」
那珂「わたしの活躍で皆の士気を……」ゾク
提督(前々から思っていたが川内は元々だったが、下の妹2人も姉に劣らずに戦闘では頼もしい面を覗かせる。神通は改造によって自信を持ったが、こいつの場合は自分を見失っていたのかもしれないな)
那珂「大佐」
提督「ん?」
那珂「これからのわたしの活躍、期待しててね?」
提督「いい顔になったな。頼もしさを感じる」
那珂「そ、そうかな?」テレ
提督「だがな那珂」
那珂「あ、はい!」
提督「本当に頼もしさを感じさせてくれるなら、目の前にあるこの書類の束を減らすのにも力を貸して欲しいんだが?」
那珂「えっ。あー……な、那珂ちゃんはぁ、アイドルなのでぇ……」
提督「おい、さっきの頼もしさは何処に行った? 一気に本当に人気があるのか怪しいアイドルになってるぞ?」
那珂「じ、事務処理は苦手なんだよーぉ」
提督「そこは姉に負けてるのを認めるわけだな」
那珂「ま、負けてると言っても神通姉さんだけだし! 川内姉さんはズボラだから絶対にこういう仕事不得意なはずだし!」
提督「お前それ、絶対に川内の前で言うなよ? あと、不得意を競うな」
那珂「う……」
提督「事務処理が苦手なら克服すればいい。神通に聞いてもいいし、今ここでなら俺も教えてやれる」
那珂「た、大佐が教えてくれるの? 仕事遅れちゃうよ?」
提督「先行投資というやつだ。将来が有望なアイドルなら投資して然るべきだろう?」
那珂「あ……」ポ
提督「輝いてくれるか?」
那珂「うんっ任せて!」
那珂はもっと落ち着けば人気が出ると思うんです。
そんな筆者は彼女を根気強く育ててみましたが、未だに落ち着いてくれません。
何故だ……。