シビル・トレローニのいない世界 作:一文
<< 前の話 次の話 >>
ドラコの入学した年から闇の魔術に対する防衛術の講義は閉鎖された。
毎年のように教授が変わる中、とうとうダンブルドアも教授を探すことができなかったらしい。
あるいはこの科目は呪われていて、ダンブルドアにさえその呪いの対処ができずに匙を投げたらしいとも囁かれた。
科目が閉鎖されることは異例中の異例のようであるらしく、新聞報道においては盛んに取り上げられたが、流石のクラウチでさえもダンブルドアの意思を変えることはできず、また閉鎖の理由も憶測が飛び交うままにして消えていった。こればかりは真相を知っているものはダンブルドアを除いて誰もいない。
スリザリンの寮監はブラック家の次男のレギュラス・ブラックだった。
ドラコの母の旧姓はブラックであったので、記憶にないほどドラコが小さい頃にもしかしたら会ったことがあるのかもしれない。
しかし、彼はドラコを特別扱いする気は毛頭ないらしく、またドラコもそれを期待したわけではなかった。
ブラック家はかつてマルフォイ家と双対を成すほどの名家として並び立てられていた名家であったが、マルフォイ家が失墜して以降、いよいよ唯一の存在としてその価値を高めていた。
純血の価値を無上のものとするスリザリン寮の寮監としては、これ以上ないくらいの人選であっただろう。
一方で、ドラコは孤独だった。
いくら純血を重んじるスリザリンであれど、基本的に保守的な彼らは時事に敏感だった。
他の寮生のように表立って罵声を浴びせたり、杖を向けて攻撃をしてくることはなかったが、誰もドラコには話しかけようとはしなかった。
だから、ブラック教授が執り行う魔法薬学においても、当然のようにドラコは誰ともペアを組んでもらうことができなかった。
ドラコは魔法薬学が得意だった。
屋敷にある鍋を持ち出して、一人で教科書を見ながら薬を煎じたこともある。
火をかけた鍋と向き合い、生々しい材料を切り刻んだり、やかましい沸騰音に包まれている間は、考えたくないようなことは頭から離れていき、目の前のドロドロの液体に精神を集中させることができた。
まあいいさ、とドラコは思った。
一年生のレベルなら、僕一人でも煎じられる。むしろ、一人の方がいいくらいだ。
ブラック教授の説明が終わり、ドラコが教科書を開いて大鍋に火をかけていると、すぐ横に誰かがやってくる気配を感じた。
どうやら、僕と同じようにあぶれたやつらしい、ドラコは自嘲しつつも、作業の手を止めなかった。