シビル・トレローニのいない世界 作:一文
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ホグワーツにおいて、ドラコは歓迎され得ない存在だった。
今まで他人からの悪意とは無縁の生活を送ってきたドラコにとっては、理解していたが体感するのは初めてのことでもあった。
両親は狂信的なマグル嫌いとして名が知られ、闇払いに殺されたときは新聞の一面を飾った。
多くの人間がその記事に溜飲を下げたのだろう。
それからおよそ9年の時が経った現在においてもなお、ドラコは自分が日陰者であることを知った。
魔法界は狭い。
情報は口述で伝えられることが多く、また子供は親の言葉を聞いて育つ。
マルフォイと言う名前が組分けの時に大広間に響くと、その場の人間が一斉に自分を睨み、敵意を向けてきたようにドラコは感じた。
組分けの帽子はドラコの頭に触れるか触れないかのうちに、スリザリン、と叫んだ。
ドラコは帽子を取って、静かにスリザリンのテーブルの一番端に座った。
組分けは続いたが、誰もドラコの近くの席には座ろうとはしなかった。
そのときになって初めて、ドラコは自分の姓を恨んだ。
マグル生まれだってこれほどの扱いは受けない。
かつては貴族のごとき高名な姓が、犯罪者の名前の如く扱われることに、彼は憤った。
しかし、両親への恨みは全く頭には浮かばなかった。
短い間であったが、両親はドラコに惜しみ無い愛情を注いでくれたことを彼は知っていたのだから。
だから、両親のお陰でどんな惨めな境遇に陥ろうとも、余すことなくそれを甘受しよう、そう決心して彼はここに来た。
しかし、実際にドラコがさらされた悪意の数々は、その決心をぐらつかせるほど11歳の少年にはひどく辛いものであった。
*
ピーターと同じくグリフィンドールを望んだハリーは、コンパートメントで知り合ったロナルド・ウィーズリーと共に念願のグリフィンドールに組分けされた。
ハリーは初めて何かを勝ち取ったように思えて、深い満足した気分で席に着いた。
ピーターに書く手紙の内容を考えながら、ハリーは目の前の豪華な夕食に手を伸ばした。
夕食は今までハリーが食べてきたどんな料理よりも美味しかった。
テーブルマナーの心得はなかったが、グリフィンドールのテーブルではどこも似たりよったりだったのでハリーは少し安心した。
ただ一人、同じくグリフィンドールの席に座っている栗毛の女子生徒だけは、その光景を不快そうな顔で見ていた。
彼女はハリーから見ればいささか気取り過ぎなほどショー・アップされた所作で食事をしつつ、非難気な眼差しを時折ちらちらと周りに向けていた。