<登場人物・キャスト>
語り手:奈良岡朋子/おしん:小林綾子/ふじ:泉ピン子/なか:大路三千緒/定次:光石研/庄治:佐野大輔/正助:住吉真沙樹/こう:片桐尚美/きん:今出川西紀/つね:丸山裕子/圭:大橋吾郎/作造:伊東四朗/おしん:乙羽信子

<あらすじ>
最上川上流にある寒村の貧しい小作の家に生まれたおしんは、数え年7歳の春、雪どけとともに下流の町へ奉公に出ることになった。口減らしとして家を出なければならなかったのである。
おしんの二人の姉も、既にそうして奉公に出ていた。
明治40年、日露戦争が終わった2年後のことで、当時の東北の農村では、別に珍しいことではなかった。

夕方芝刈りから帰ってきた作造、ふじ、庄治。
日中、おしんの奉公の給金として届けられた米1俵のことをふじに伝えるおしん。

その夜は大根飯ではなく白いご飯が夕食になった。
「どういうつもりだ! 後先のことも考えねえで。この米は、安い米に代えてちょっとでも食いのばさなんねえんだぞ!」と言う作造の言葉に「この米はおしんが年季奉公と引き換えにした米だ、おしんに食わせて何が悪い」とふじは反論する。「何だと!」声を荒げて怒鳴る作造をおしんがなだめる。

なか「おしんは、奉公がどだなもんだか知らねぇがら、白え飯で喜んでるけんど、まだ小っちぇえのによお、オラ、むつこくて……」
ふじ「ばあちゃん、おしんの奉公先は、おっきな材木問屋なんだと。おしんの歳もわかってくれてる。むつっこい目には遭わせねぇべ」
なか「口入屋の言うことなど……」
ふじ「それば、信じなかったら、おしんはやれねっす」
(※むつこい=かわいそう)

  朝ドラ ブログランキングへ
明け方おしんが目を覚ますと、ふじはまだ起きて縫い物をしていた。
「つぎはぎの着物じゃよそさまやれねえ」と、晴れ着一枚こさえてやれなかったおしんのために、ふじは自分の嫁入りの時の着物をおしんの着物に仕立て直してやっていたのである。はるやみつが奉公に行く時も、ふじは自分の着物で支度してやっていた。

「母ちゃんは忙しくて、お前の面倒は何一つみてやれながった。んでもお前は小っちゃい時から、何でも一人で自分でやってきた。うちの手伝いも、子守もよくしてくれた。でもこれからは、ほんてん一人なんだぞ。誰も助けてくれねぇ。誰も頼りにしちゃだめだ。一人で生きていかんなんねえんだぞ。それだけはよーく覚えとけ。つれえ時も、帰りてえ時も辛抱するんだぞ。でもどうしても辛抱しきれなかったら、無理しねえで帰って来い。母ちゃんいつでも待ってっからな」
母の思いに、泣いて胸に飛び込むおしん。
「体大事にして、丈夫で帰って来い」
なかは寝床でやりとりを聞いて静かに涙していた。

次の日、中川材木店の使い・定次が迎えに来た。
肌着の替えと普段着を1枚ずつの支度だけで旅立つおしん。握り飯も入れてある。
なかが誰にも内緒で、50銭銀貨を握らせてくれた。
定次に話を聞くと、舟でなくいかだで下るのでできればみのがあった方がいいという。こんな小さい子をいかだのような危ないものに乗せるのかとふじは抗議するが、「ほんてんなら船賃使うてもオレの方で連れて行かんならねんだぞ、それば迎えに来てやる、そう言って下さったんだ。奉公さ出して給金もらったらもう、おしんは奉公先の人間だぐずぐず言うな!」と作造に言いくるめられる。
なかがみのを持ってくるが、「オレが持ってったら母ちゃんの分がなくなる」と遠慮する。

見送りに付いて行くふじを咎める作造。
「娘が家ば出るっていうのに、見送ってもやれねのが?! おまえそれでも父親か。誰のためにおしんは、奉公さ行ぐと思ってるんだ」
なかが作造を責める。

川べり。とうとう旅立つおしんをふじが見送っている。
「母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん! 母ちゃん!」
いよいよいかだが動き始めると、身を乗り出してずっと母を呼び続けるおしん。
ふと見ると、作造の姿が堤防の上にあった。
「父ちゃん! 父ちゃん! 父ちゃん!」
「おしん! おしーん! おしん……すまぬ……」

お父もつらいのだ、いや誰よりもお父が一番つらいのだ。家族の前では見せなかった父の姿を見て、おしんは初めて作造の思いを察していた。

川を見下ろして座っている圭とおしん。
圭「たった米1俵で、おばあちゃんこの川いかだに乗って売られていったのか」
おしん「誰が悪いわけでもないよ。小作はどこも苦しかったんだ。あの頃の東北の農村は、みんなそうでもしなきゃ生きて行けなかったんだから。今思うとねえ、父ちゃんだって家族を守るために必死だったんだよ。いつも怒鳴ってたんだって、娘を頼らなきゃならない弱みを見せまいとして」
圭「わかるような気がする」
おしん「今だって苦しい人は沢山いるだろうけど、昔の苦労に比べたら。……そう言うおばあちゃんだって、昔の苦労忘れちまって。あの奉公のつらさを思うと、何にも怖いもんなんかないはずなんだけど。どんな目にあったって、あの時の苦労に比べたら……」
圭「おばあちゃん」

今83歳のおしんが見つめているのは何なんだろうか。圭はふと黙り込んで、遠いものに思いを馳せているようなおしんの暗いまなざしを追っていた。

定次に支えられてよたよたと歩いてきたおしん。奉公先の玄関前でうずくまってしまう。
奉公先のおかみさんと使用人が出てきた。
きん「こんなおぼこか」
つね「来る早々これじゃ、使いもんになんねぇが」
きん「こだな意気地のねえおぼこに勤まるべか。それに9つにしちゃ体も小っちぇえし頼りねぇな。今のうち、返した方がえんでねべか」
つね「なに、ちょっといかだがこたえただけだと思うんだけんどがっす。気分さえ良くなったら、元気になるんじゃねぇがっす。オレがしっかり仕込むっす」
おしんは定次に抱き上げられて家の中へ連れて行かれた。
(第7話 おわり)

朝ドラ ブログランキングへ
最後まで読んでもらって感謝してるっす。人気ブログランキング投票←このリンクをクリックしてもらうど、オレのブログに投票されで、ランキングの順位が上がるっす。よがったらクリックして頂けるど嬉しいっす。