芥川龍之介の「ぼんやりした不安」の正体はなんでしょうか?
2013/10/622:57:51
ベストアンサーに選ばれた回答
2013/10/623:58:20
あの時代の教養人は全て、急速に進む西洋化へ警鐘を鳴らしていたんです。
既に近代化を終えようとしていた西洋にあって、その近代化への警鐘が同じくあったわけ。それも教養人が鳴らしていたものなんです。
要するに、明治期からの西洋化というのは、西洋が近代化に対して抱いていたものと等しい。
それは過去の美しいものを破壊し、捨て去ることによって、自分たちが自由に構築する、という生き方への変遷に他ならない。
日本に於いては、武士道という日本文化の根底が破壊されることだったんです。
武士道というのは、武士だけのものではない。日本人が崇高なものへ仕えるという美しい心のことなんですね。「仕へる心」というものが武士道なんです。それは武士の台頭以前から、日本人が抱いていた根源的な思想であり、日本人の宗教である先祖崇拝というものに通じている。
芥川龍之介の場合、晩年の作品にそのことが非常に明確に顕れています。『河童』に於いては、西洋化する現代から逃れようとした希望が語られ、また『或阿呆の一生』では、自分の心情が赤裸々に語られている。
芥川は日本の旧き美を描こうとした作家です。だから古典から発心した作品が多い。
しかし芥川は、その文学の理想を西洋の作品に置いていた。西洋の文学というものに触れ、大いに感銘を受けて、日本文学も西洋に追いつかなければならないと考えていた。
そうやって西洋を追い求めていた自分の人生が、現実に西洋化して行く日本社会と見た時に、違和感を感じて行ったんですね。そして次第に日本が西洋化していくことの意味をわかっていった。それは日本という美しい国の破壊に他ならない、ということだったんです。
自分が懸命に追い求めていたものが、実は日本の破壊に連なることであった。そうしたことが「ぼんやりとした不安」というもので表されたものなんです。
宮本顕治はそうした芥川の文学を「敗北の文学」と呼んだわけだけど、まあわかってませんね。芥川は西洋に憧れながら、日本の旧き美を残そうと格闘していた人間です。最後に自死したから「敗北」だと思っているようですが、そうではありません。
芥川を尊敬していた三島由紀夫も同じ志を持った作家です。だから最後に自死し、自分の文学というものを永遠に留めようとしたんです。
西洋的価値観と、日本の伝統的価値観は相容れないわけではありません。それは内村鑑三が喝破した「武士道とキリスト教は同じものであった」ということに帰結します。
西洋的価値観は、キリスト教に殉ずることです。それは武士が主君に殉ずることと等しいと言ったんですね。
芥川達が警鐘を鳴らしていたのは、あくまでも西洋が成し遂げた「近代化」というものです。人間が何かの崇高を抱き人生の中心とすることから、自分というものを中心に置くことへの危険性なんです。
西洋ではニーチェを筆頭に多くの教養人が同じく警鐘を鳴らしました。20世紀の中盤までは、そのような教養人がたくさんいたんです。
しかしそこを過ぎると、もう近代化は完了し、人々は自分の損得を中心とした思考に陥っています。だから文学を読まない人間は、この現代にあっては動物化を免れないことになります。
この回答は投票によってベストアンサーに選ばれました!
ベストアンサー以外の回答
1〜1件/1件中
2013/10/706:25:54
すてきな~ご質問とすてきな~解説をどうもありがとうございます。
ため息が出ます
・・・病魔!
精神的、肉体的、健康を蝕むほどの病気・・・
奥様はきっと気丈に看病されたのでしょうね
病気とは、職や食を失うほどお痩せになる当事者も壮絶ですが、より近くで見ている近親者もおつらいものです。
何もできないことは、わかっているのですが、そばで苦しんでいる姿しか見ていてあげることしかできないのですが、、、
それでもそばで、見守っていてあげたい・・・
死に際に・・・聖書
人は、一番苦しむとき、苦しみの原因の一番の解決者の元に非難しているだけでうれしいもの・・・
一番の解決の実力者のもとに、助けを求めたいもの・・・
身体的に最高の医師に・・・
精神的に最高の医師に・・・
薔薇
http://www.youtube.com/watch?v=ix5tV2N8d5Y
あわせて知りたい
- 芥川 龍之介の 「ぼんやりとした不安」 とは何だったのでしょうか?
- 昔の文豪って自殺でこの世を去った人が多いんですが、何か訳があるんですか? ・...
- 芥川龍之介が自殺した時の「ただぼんやりとした不安」って何のことですか? 将来...
- コイン100枚 先日、友達と友達の子供、小学五年生の男の子と一緒にお祭りに行きま...
- 自分の哲学をもつってなに? 親父に哲学をもてとか言われたんだけど哲学をもつっ...
- 歯ぎしりと寝ているときの夢について 変な質問なのですが、私は寝ているときに「...
- ある本を探しています 絵本なんですが、スズメと油揚げの物語だった気がします ...
- 高3の女子ですが最近、芥川龍之介さんにはまってしまって仕方ないです。作品はも...
- 「将来に対する、ただぼんやりとした不安」ってありますか?
- ぼんやりとした不安を感じます。とてつもなく恐ろしいものでもなく、何か確定した...
- 東京大空襲や、広島長崎の原子爆弾を実際に体験された芸能人など、わかる方います...
- 人間は「将来に対する唯ぼんやり した不安」で自殺するものですか? ソー...
- MGSVの核兵器と英雄度についての質問です。 核兵器を作ると英雄度が下がると聞...
- 告白メールが返ってこない… 29日にスキな人に告白メールをしました。 ですが、ま...
- 文芸部を舞台とした小説を書きたいのですが 自分は運動部でしたのでその活動内容...
- 異常なまでのコンプレックスを解消するために自殺(最善策=死んでしまえば後は自...
- エヴァンゲリオン新劇場版に登場する「第3の使徒」の詳細な設定画を見たいのです...
- スイフトスポーツでクルーズコントロールの使い方を教えてください
- アパレルの接客販売員はブスではなれませんか?私な破滅的にブスです。化粧でどう...
- 怪物と戦う者は自らも怪物とならないように気を付けねばならない 「怪物と戦う者...
このカテゴリの回答受付中の質問
- 「細く小さな径」の詩の作者を教えてください。 春には春の草花を咲かせ蝶を呼...
- 古典です! 1、手づから 2、せうと 3、候はん 4、さやうのこと 5、侍らじ 6、修理...
- 古典です! 至急おねがいします! この問題を現代仮名遣いで答えてください! ...
- 再読文字の【応】と【当】は混合して使われている例もあるのですが、 その場合、...
- 短歌の詳細を知りたいです 漫画かネットの書き込みで読んだ短歌を探しています。...
- 古典の助動詞活用表を、この歌 https://youtu.be/a1LU4tUeZX4 で覚えているのです...
- Bのあとの らん が 完了+推量 か 現在推量かによって変わると思うのですが、どう...
- 馬の胴体の中で考えていたい という詩にある「のろのろとした戦車のような言葉」...
- 確か紫式部の俳句だったと思うのですが、訳が「絞り染は解くまで柄がどうなってる...
- 興味のある作家がいます。西村賢太、藤澤清造。この二人に関連する作家に他にどの...
このカテゴリの投票受付中の質問
- 今年かいた書き初めなのですが、下手ですか? 習字は習ったことがありません。
- 大殿=中宮ですか?
- 醒睡笑の中でも特に面白い話を教えてください。
- 文豪 森鴎外は後妻さんとの夫婦仲に悩んでいましたか?嫁姑関係が問題でしたか?
- 光源氏についての質問です。 光源氏は帝の息子ですよね?今で家は皇太子。なぜ帝...
- 寂しさや虚しさを詠んだ和歌、短歌を教えてください。出来れば意味も書いてくださ...
- 日本で句点が浸透してなかったころの、英語を和訳した日本文があったのですが 基...
- Can I have another seven hours? とは日本語であと7時間後でもいい?という意味...
- 教科書に出てくるような時代的にも模範的な漢文で「絶対」という熟語が出てくるの...
- 古文助動詞の質問です。 次の○に「たし」「まほし」のどちらかを活用させ、その活...
カテゴリQ&Aランキング
- 戻る
- 次へ
総合Q&Aランキング
お客様自身の責任と判断で、ご利用ください。