倉本先生の『勝海舟』降板はもちろん彼の書で知っていた。
NHKから完全に干され、破れかぶれになって北海道へ飛び、しばらく飲んだくれてたがそれが後に『前略おふくろ様』や『北の国から』の伝説的ヒットになるのだから人生は解らない。


ちなみに僕は二度監督を降板させられている。
自ら降りたのは抜きにして、二度も辞めさせられたのは僕だけだろう。
向いてないのだろうか?

そう思ったのは今だけではない。ずっとだ。
僕は今まで四度、アニメを辞めようとしている。


一度目は三年目の春、半年間干されたような状態になり、バカバカしくなって辞表を提出したが、もう一度チャンスをやると会社に説得され、演出に復帰した。
そこからは周りを顧みず大暴れした。

二度目は「『らき☆すた』事件」の時。
この時ばかりはオヤジに電話をかけ、しばらく厄介になるだろうと詫びを入れた。
しかし周りのスタッフに止められ、悩んだ挙句、会社を出た後Ordetを立ち上げた。

三度目は『フラクタル』の直後。
これは震災とぶつかって、ボランティア活動をする中で、今自分が被災地に貢献できるのはアニメでしかないと思い直し、自ら戻った。

四度目は約三年前。
『WUG』降板が決まった直後の大阪で、まだ一緒に仕事をする前の和田さんとDEBUに「もうアニメやらないから」と宣言したが、まさかのその和田さんが2か月後仕事を依頼してきた。

で、今がある。


ならばどうして辞めさせてくれないのだろう?
俺はずっと辞めるって言ってんの!
そんなに必要ならそれなりに優しくしてよ!


と、ずっと思っていたが、これは結構イキった発想だったと、最近気づいた。


アニメはまだまだ人手が足らないから、誰にでも声はかかるのだ。
自分が特別な存在なんだとか、そんな感覚は完全な自分の思い込みだったのだ。

完全に騙された!


今も「もうTVは絶対やらない!」と周囲に言っているのに、TVの話が来る。
思わず「どんな中身?」と訊いてしまったが、やっぱり止めといた方が良さそうだ。


これからは一本一本、「次はない」と思ってやる。
ていうか、そろそろアニメは「副業」と考えた方が良さそうだ。

そしてもうダメだ、と思ったら、今度こそ辞めよう。
今度は誰がどう止めても聞かない。
こんな腐りきった業界、腐りきったキチガイだけ残ってやればいい。