新年号「令和」が発表され、改元まで残り1か月を切る中、「平成のうちに結婚式を挙げたい」という“平成駆け込み婚”が盛況だ。一方で、令和元年婚を目指す人向けの挙式プランも全国各地で続々登場している。改元を節目に幸せになりたい人たちと、商戦を盛り上げたいブライダル業界。それぞれの結婚式事情を追った。(樋口 智城)
東京・港区の「東京タワーから一番近い」が売りの結婚式場「ザ・プレイス・オブ・トウキョウ」は昨年6月、他社に先駆けて先着10組限定の「平成駆け込み婚プラン」を始めた。値段は招待客50人規模で約186万円と通常よりリーズナブル。さらに、ウェディングドレスとタキシードを各1着ずつ、計25万8000円相当をプレゼントする。鈴木大輔総支配人は「平成が終わるのをきっかけに、結婚式のあり方にもいろいろ注目が集まった。いろいろなプランを提示できればと思った」と説明する。
同式場では、5月以降に挙式する予定だったカップルのうち15組が、4月に前倒しして平成中の結婚式を予約。4月全体では90組が挙式の予定だが、約17%が「前倒し組」だった。3月の挙式件数も前年比23%もアップ。鈴木総支配人は「全体的には、平成間際の結婚は増えている」と話す。
駆け込み婚が増えた大きな要因は「平成生まれは平成にこだわる」という傾向。同式場の「前倒し15組」のうち、ほぼ全組が新郎・新婦とも平成生まれだった。婚活総合サービスIBJが20~49歳の男女1526人に行った調査によると、「すぐにでも結婚したい」男女の中で「平成駆け込み婚に期待する」と答えた人は約40%に上った。
3月初旬に同式場で結婚式を挙げた平成生まれの会社員・奥平直之さん(27)は「普段はあまり気にしてなかったんですけど、いざ結婚となると意識はしましたね」と心理を説明する。第1子となる男の子が今夏に誕生する予定で「子供は令和ベビーになるのが分かってるから、なおさら平成生まれの自分たちは平成のうちにいろいろ片づけたかった」。平成という時代に自身の歴史の転換点を刻みつけたい。「仲間内では、平成のうちに結婚できなかったことを『平成ジャンプしちゃった』とか言ってます」。今は子供に「平成の最後に結婚したんだよー」と言うのが楽しみなのだという。
日本人男女の平均結婚年齢は29・4歳。平成初期生まれの世代がちょうど適齢期なのも大きい。ならば、それより上の昭和生まれはどうなのか。
都内に住む会社員の岡雅美さん(仮名、43)は、大河ドラマ「いだてん」でおなじみ金栗四三の遠い親戚。「私くらいの未婚者はみんな平成婚、目指していましたよ。目標を立てないと、そのまま結婚できない気がするので」。結婚という競技でもゴールめがけて駆け込もうというわけだ。
週1回は婚活パーティーに出かけ、出会った女性たちとグループLINEで情報交換。「この年だと、男性への条件も慎重に考えてしまう。時期を区切らないと、みんな踏ん切りがつかないんですよ」。ただし平成にこだわっているのは女性だけで「婚活で会った男性には『考えたことない』って引かれました。ギャップがすごい…」と苦笑いする。
結局、岡さんは結婚どころか彼氏づくりにも失敗。「平成ジャンプ」は目前だ。今後どうするのか。「2020年に東京五輪婚ってのがありますよ。これを逃すと、もう区切りがなくなるからラストチャンス!」。昭和女子は、経験豊富ゆえキャッチーな目標を立て、逆算して結婚を考える傾向があるようだ。