【正論5月号】【サヨナラ平成 その光と陰】ポリコレという言葉狩りの時代 評論家 潮匡人
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トランプの「PC」批判
二〇一六年七月、米共和党のトランプ大統領候補(当時)は、いわゆる指名受諾演説の冒頭部分で、こう述べた。
「私たちには、もはや政治的な正しさ(politically correct )にこだわる
余裕はありません。ですから、もし皆さんが、片寄った偏見や巧妙に仕組ま
れたウソ、メディアが捏造した神話を聞きたいというなら、どうぞ来週の民主
党・党大会へ行けばいい」
こうした主張が熱狂的に支持され、トランプ候補は同年の大統領選に勝利し
た。同年六月にも、トランプ候補はニューヨークで、キリスト教の指導的な牧
師や神父が多数、参加する「聖職者集会」で、こう訴えた。
「デパートの店員が、客に『メリー・クリスマス』と言える国にしよう」
私が早くからトランプ当選を予測できたのは、この集会の模様を、ネット配信された動画で視聴したからである。そのとき以来、当選確定の直前まで「最後に勝つのはタテマエではなく本音」と論陣を張ってきた。だがその当時、日本のマスコミはトランプを「泡沫候補」扱いしたあげく、投票当日まで「クリントン優勢」と報じ続けた。
デパートの店員が、客に「メリー・クリスマス」と言える国に暮らしている日本人には、ピンとこなかったのかもしれない。案外知られていないが、アメリカで「メリー・クリスマス」は「PC」(政治的な正しさ)に触れる禁句とされている。つまり「政治的に正しくない」。なぜなら「クリスマス」は、クライスト(キリスト)のミサであり、この言葉自体が、イエスをキリスト(救世主)とする信仰を前提とする。
したがって、そうした信仰を持たないユダヤ教徒やムスリム(イスラム教徒)などへの配慮から、最近のアメリカでは「メリー・クリスマス」と言わず、「ハッピー・ホリディ」と言う。
「神の下にある国」アメリカが、もはや公然とクリスマスを祝うことすら許されない国になってしまった。そうした過剰な「PC」に対する反発がトランプを大統領にした(詳しくは拙著『安全保障は感情で動く』)。
そもそも「PC」とは《言葉の使い方に偏見や差別が含まれていないことを指す言葉である。日本語では「政治的に正しい」と訳される場合もあるが、一般的には「言葉狩り」を婉曲にオブラートに包んであたかも言論の自由を侵害するものではないかのように装うために言い換えているものであると認識されている》(フリー百科事典「アンサイクロペディア」)。
堂々と「メリー・クリスマス」と言える国にしたトランプ政権を「ホンネ」の政治とすれば、それまでのオバマ政権やクリントン陣営は「タテマエ」の政治と言えよう。「タテマエ」を「綺麗事」と言い換えてもよい。さらに言えば、ホンネを覆い隠す「偽善」とも評し得よう。
「言葉狩り」の横行は深刻だ
英語で「PC」、日本語でも「ポリコレ」と略称されるように、こうした現象はグローバルに起きている。残念ながら、平成日本でもタテマエないし綺麗事の偽善と「言葉狩り」が横行した。
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【正論5月号の主なメニュー】
【特集 日本が危ない】
★改憲なくば未来なし 危機にあってなぜ踏み出さないのか 櫻井よしこ
★河野洋平にすがる朝日新聞 阿比留瑠比
★韓国の狂気、中国の脅威…日本よ立ち上がれ ケント・ギルバート×呉善花×石平
★神風神話と平和憲法から脱却を なぜ今、鎌倉武士なのか 井沢元彦
★自衛隊よ、「韓国が敵になる日」に備えよ 国防を徹底討論! 元空将 織田邦男×元
陸上幕僚長 岩田清文
★北の制裁破りを見逃し続ける日本の国連安保理決議違反 元国連安保理北朝鮮制裁委
員会専門家パネル委員 古川勝久
★日本の教科書は、なぜ韓国を“忖度”するのか 産経新聞客員論説委員 石川水穂
★日本共産党“ソフト化路線”の嘘を暴く 自由民主党職員 福冨健一
★《対談》消費増税のウソ 財務省と御用学者に騙される 大石久和×田村秀男
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【サヨナラ平成 その光と陰…】
★ポリコレという言葉狩り 潮匡人
★「ゆとり教育」を生んだ危ない思想 八木秀次
★堕ちた官僚と東大法学部 八幡和郎
★「開かれた皇室」という過ち 富岡幸一郎
★なぜ経済は低迷した? 高橋洋一
★人口激減ニッポン 河合雅司
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★文在寅は反日・反韓・離米を宣言した マスコミが伝えない「三・一」演説の核心 西岡力
★中国の戦術的“後退”にだまされるな 国家基本問題研究所主任研究員 湯浅博
★中国人は他民族と共存できるか 楊海英
★日弁連よ、韓国人の副会長でいいのか ケント・ギルバート
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★ルパン三世が天皇になれない理由 竹田恒泰
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★メディア裏通信簿 いだてんピンチ!