日本人の議論は「のんき」すぎてお話にならない

危機感をもって「本質」を徹底的に追求せよ

「インフレは日本を救う」というだけの議論は、問題の本質を見極めていない議論です。企業の規模と給料には強い関係がありますから、企業規模を拡大し、給料を高めて初めて、金融政策・財政政策が生きてくるのです。

あらゆる問題は「給料が少ない」ことに帰する

デフレ、輸出小国にとどまっている問題、年金問題、医療費問題、消費税、少子化、国の借金、女性活躍問題、格差の問題、技術の普及が進まない問題、ワーキングプア、子どもの貧困、などなど。これらの問題の根源にあるのは、すべて日本人がもらっている給料が少なすぎることです。

今の政策は、ほぼすべてがただの対症療法です。問題の本質が見えていない。それでは病気そのものを完治させることはできません。

では、どうするべきか。『日本人の勝算』にも書きましたし、本連載でも述べましたが、やるべきことは明確です。世界第4位と評価されている優秀な人材を使って、先進国最低、世界第28位の生産性を上げればいいのです。それだけです。それには、賃金を継続的に上げる必要があります。

このことを、大半の日本企業の経営者が理解しているとは思えませんし、自ら賃金を上げる気のない経営者が多いのも間違いないので、彼らの奮起を期待してもムダです。だとしたら、「High road capitalism」に移行させるために、最低賃金を毎年5%ずつ上げて、彼らに強制的に生産性を引き上げさせるしか方法は残されていません。

それにあわせて、労働者を集約し、企業の規模拡大を促進するべきです。たとえ給料を上げても、企業の規模拡大を追求しない、もしくは小さな企業を守ろうとする政策を実施してしまえば、政策が矛盾し、「High road capitalism」は夢と終わります。

生産性の向上ができない経営者は、増える一方の社会保障負担を捻出するだけの才能がないのです。潔く企業経営から撤退してもらいましょう。人手不足は当分続くので、労働者は才能のある経営者のところに行けばいいのです。

最低賃金の引き上げの話を出すと、必ず昨年の韓国で起きたバカげた失敗事例を引き合いに出す人が現れますが、韓国は一気に16.4%も引き上げたから失敗したのです。このことは、すでに何回も指摘しています。だからこそ、日本は毎年5%でいいのです。

また、最低賃金を引き上げると、中小企業は皆つぶれるという意見も必ず寄せられます。しかし、そういう意見を持つこと自体、頭を使っていない証拠だと思います。

すべての中小企業の労働者が最低賃金で働いているわけでもなければ、すべての企業の経営がギリギリなわけでもないので、最低賃金を引き上げたからといって、中小企業が大量に倒産することはありえません。

日本人労働者の生産性は、イギリス人などのヨーロッパの人々とそれほど大きく違いません。しかし、最低賃金はたったの7割に抑えられているのです。

人材評価が大手先進国トップの日本は、それを武器に、大手先進国トップクラスの賃金をもらい、再び経済を成長させる。この挑戦にトライするしか、日本に道は残されていません。

それには、中小企業を集約させること。ここに「日本人の勝算」があります。

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  • NO NAMEc309e2ecd7bd
    日本すごい番組に象徴されるように現実を直視する勇気がない臆病な民族性に尽きるかなと。弱いどうしようもない民族ですね。国会見ていても議論はできない、都合が悪ければ強行採決をするの繰り返しでしょう。問題意識を持つ人が少なすぎる。
    up660
    down97
    2019/4/5 05:28
  • NO NAME5c7c17211512
    まさしくご指摘のとおりです。
    低生産性・低所得の中小企業と高生産性・高所得の大企業。
    最低賃金を徐々に上げる政策によって、中小企業主の意識改革が必要です。
    頭の弱い経営者は淘汰され、強い経営者が生き残るのが正しい姿です。吸収合併により企業規模を拡大せざるを得ないでしょう。
    up501
    down59
    2019/4/5 05:44
  • NO NAME8a43f42ffbbc
    一言で日本の難点をまとめると「ムラ社会」だ。他人の顔色を見るばかりで改革できない。出る杭は打たれるので表立って対立する事から逃げる。だから対症療法の玉虫色の案しか出せないし、事なかれ主義になり前例主義で同じ失敗を繰り返す。第二次大戦のインパール作戦では作戦会議において、将校が作戦が失敗するとわかっていても異議が出せず、顔色を見てわかって欲しかったとの手記が残っている。これは今の日本と無関係の話ではない。現代の日本人も同じことを繰り返している。全然進歩していない。敗戦の理由も今の日本の凋落も究極すれば全く同じなのだ。つまり、合理的な判断よりも、組織、ムラ社会の不都合な論理が優先されてしまう。沈みゆく泥舟だとわかっていても空気を読んで同調圧力に屈し自己保身を図るだけ。寄らば大樹の陰、長いものには巻かれろ、付和雷同を繰り返しているだけなのだ。ムラの空気による支配が続く限り日本はまた負けるだろう。
    up403
    down34
    2019/4/5 06:14
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