日本人の議論は「のんき」すぎてお話にならない

危機感をもって「本質」を徹底的に追求せよ

本来「Low road capitalism」は、他に選択肢のない途上国がとるべき戦略です。先進国である日本は「High road capitalism」を目指すべきだったのです。なぜならば、「High road capitalism」こそが、人口減少・高齢化社会に対応可能な経済モデルだからです。

日本は「のんきな議論」が多すぎる

今回の記事にはあえて挑発的なタイトルをつけました。このタイトルは、ある意味、私のフラストレーションの表れかもしれません。

それは、今の日本で交わされている議論は日本経済についての現状検証があまりにも浅く、当然それによって、政策は本質を追求できていない、対症療法的なものになってしまっているという印象を強くもっているからです。

先週の「日本人の『教育改革論』がいつも的外れなワケ」でも若干触れましたが、人口減少にどう立ち向かうべきかについて、日本で行われている議論の多くは本当に幼稚です。今日本が直面している人口の激減は、誰がどう考えても、明治維新よりはるかに大変な事態で、対処の仕方を間違えれば日本経済に致命的なダメージを与えかねない一大事です。

それほど大変な状況に直面しているというのに、日本での議論はなんとも「のんき」で、危機感を覚えているようにはまったく思えません。こういう議論を聞いていると、正直、どうかしているのではないかとすら思います。

「のんきな議論」は、日本社会のありとあらゆる場面で見ることができます。

のんきな「競争力」の議論

先日あるところで、最低賃金を引き上げる重要性を訴えていたところ、「最低賃金を引き上げると日本の国際競争力が低下するからダメだ」と言われました。ちょっと考えるだけで、この指摘がいかに浅いかわかります。

日本の対GDP比輸出比率ランキングは世界133位です。輸出小国ですから、限られた分野以外では、別に国際的に激しい競争などしていません。また、他の先進国の最低賃金はすでに日本の1.5倍くらいですから、同程度に引き上げたとして、なぜ国際競争力で負けるかわかりません。さらに、多くの労働者が最低賃金で働いている業種は宿泊や流通などサービス業ですので、輸出とはあまり関係がありません。いかにも議論が軽いのです。

のんきな「教育」の議論

教育についての議論も、実にのんきです。教育の対象を子どもから社会人に大胆に変更しなくてはいけないのに、日本の大学はいまだに、毎年数が少なくなる子どもの奪い合いに熱中しています。

教育の無償化に関しても同様の印象を感じます。「子どもを育てるコストが高い。だから子どもを産まない、つまり少子化が進んでしまっている。ならば、教育のコストを無償にすれば、少子化は止められる」。おそらくこんなことを考えて、教育の無償化に突き進んでいるのでしょう。確かに、この理屈はもっともらしく聞こえなくもありません。

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  • NO NAMEc309e2ecd7bd
    日本すごい番組に象徴されるように現実を直視する勇気がない臆病な民族性に尽きるかなと。弱いどうしようもない民族ですね。国会見ていても議論はできない、都合が悪ければ強行採決をするの繰り返しでしょう。問題意識を持つ人が少なすぎる。
    up658
    down96
    2019/4/5 05:28
  • NO NAME5c7c17211512
    まさしくご指摘のとおりです。
    低生産性・低所得の中小企業と高生産性・高所得の大企業。
    最低賃金を徐々に上げる政策によって、中小企業主の意識改革が必要です。
    頭の弱い経営者は淘汰され、強い経営者が生き残るのが正しい姿です。吸収合併により企業規模を拡大せざるを得ないでしょう。
    up498
    down58
    2019/4/5 05:44
  • NO NAME8a43f42ffbbc
    一言で日本の難点をまとめると「ムラ社会」だ。他人の顔色を見るばかりで改革できない。出る杭は打たれるので表立って対立する事から逃げる。だから対症療法の玉虫色の案しか出せないし、事なかれ主義になり前例主義で同じ失敗を繰り返す。第二次大戦のインパール作戦では作戦会議において、将校が作戦が失敗するとわかっていても異議が出せず、顔色を見てわかって欲しかったとの手記が残っている。これは今の日本と無関係の話ではない。現代の日本人も同じことを繰り返している。全然進歩していない。敗戦の理由も今の日本の凋落も究極すれば全く同じなのだ。つまり、合理的な判断よりも、組織、ムラ社会の不都合な論理が優先されてしまう。沈みゆく泥舟だとわかっていても空気を読んで同調圧力に屈し自己保身を図るだけ。寄らば大樹の陰、長いものには巻かれろ、付和雷同を繰り返しているだけなのだ。ムラの空気による支配が続く限り日本はまた負けるだろう。
    up399
    down34
    2019/4/5 06:14
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