日本人の議論は「のんき」すぎてお話にならない

危機感をもって「本質」を徹底的に追求せよ

生産性向上にコミットする経済政策を「High road capitalism」と言います。「王道」と訳されることもありますが、見方を変えれば「茨の道」とも言えます。当然、その反対は「Low road capitalism」です。こちらは、ある意味で「邪道」とも言えます。

経済の「王道」と「邪道」

簡単に言うと「High road capitalism」は高生産性・高所得の経済モデルです。「High road capitalism」の根本的な哲学は「価値の競争」です。市場を細かく分けて、セグメントごとにカスタマイズされた商品やサービスで競い合うのが競争原理になります。そのため、商品とサービスの種類が多く、価格設定も細かく分かれています。

High road capitalismを志向している企業は、商品をいかに安く作るかよりも、作るものの品質や価値により重きを置く戦略をとります。他社の商品にはない差別化要素であったり、機能面の優位性であったり、とりわけ、いかに効率よく付加価値を創出できるか、これを追求するのが経営の基本になります。

最も安いものではなく、ベストなものを作る。そのスタンスの裏には、顧客は自分のニーズにより合っているものに、プレミアムな価格を払ってくれるという信条が存在します。

High road capitalismを追求するには、もちろん最先端技術が不可欠です。そして、それを使いこなすために、労働者と経営者の高度な教育も必須になります。同時に機敏性の向上も絶対条件です。

「Low road capitalism」は1990年代以降、日本が実行してきた戦略です。規制緩和によって労働者の給料を下げ、下がった人件費分を使って強烈な価格競争を繰り広げてきました。

海外の学会では、Low road capitalismに移行すると、一時的には利益が増えると論じられています。しかし、Low road capitalismによって短期的に利益が増えるのは、技術を普及させるための設備投資が削られ、社員教育も不要になり、研究開発費も削減される、すなわち経費が減っているからにすぎません。Low road capitalismは先行投資を削っているだけなので、当然、明るい将来を迎えるのが難しくなります。まさに今の日本経済そのものです。

実は、「Low road capitalism」でも経済は成長します。しかしそのためには、人口が増加していることが条件になります。人口が減少していると、「Low road capitalism」では経済は成長しません。

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  • NO NAMEc309e2ecd7bd
    日本すごい番組に象徴されるように現実を直視する勇気がない臆病な民族性に尽きるかなと。弱いどうしようもない民族ですね。国会見ていても議論はできない、都合が悪ければ強行採決をするの繰り返しでしょう。問題意識を持つ人が少なすぎる。
    up657
    down96
    2019/4/5 05:28
  • NO NAME5c7c17211512
    まさしくご指摘のとおりです。
    低生産性・低所得の中小企業と高生産性・高所得の大企業。
    最低賃金を徐々に上げる政策によって、中小企業主の意識改革が必要です。
    頭の弱い経営者は淘汰され、強い経営者が生き残るのが正しい姿です。吸収合併により企業規模を拡大せざるを得ないでしょう。
    up498
    down58
    2019/4/5 05:44
  • NO NAME8a43f42ffbbc
    一言で日本の難点をまとめると「ムラ社会」だ。他人の顔色を見るばかりで改革できない。出る杭は打たれるので表立って対立する事から逃げる。だから対症療法の玉虫色の案しか出せないし、事なかれ主義になり前例主義で同じ失敗を繰り返す。第二次大戦のインパール作戦では作戦会議において、将校が作戦が失敗するとわかっていても異議が出せず、顔色を見てわかって欲しかったとの手記が残っている。これは今の日本と無関係の話ではない。現代の日本人も同じことを繰り返している。全然進歩していない。敗戦の理由も今の日本の凋落も究極すれば全く同じなのだ。つまり、合理的な判断よりも、組織、ムラ社会の不都合な論理が優先されてしまう。沈みゆく泥舟だとわかっていても空気を読んで同調圧力に屈し自己保身を図るだけ。寄らば大樹の陰、長いものには巻かれろ、付和雷同を繰り返しているだけなのだ。ムラの空気による支配が続く限り日本はまた負けるだろう。
    up399
    down34
    2019/4/5 06:14
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