日本人の議論は「のんき」すぎてお話にならない

危機感をもって「本質」を徹底的に追求せよ

日本を覆うさまざまな問題の「根本原因」を特定し、対策を提言します(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け、『新・観光立国論』『新・生産性立国論』など、日本を救う数々の提言を行ってきた彼が、ついにたどり着いた日本の生存戦略をまとめた『日本人の勝算』が刊行された。
人口減少と高齢化という未曾有の危機を前に、日本人はどう戦えばいいのか。本連載では、アトキンソン氏の分析を紹介していく。

年初より続けてきた本連載も12回目を迎えました。今回が最終回となります。お付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。最終回ということで、まずこれまで本連載で展開してきた議論を総括してみたいと思います。

『日本人の勝算』は発売2カ月で5万部のベストセラーとなっている(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

経済規模を示すGDPは、「GDP=人間の数(つまり人口)×1人当たりの生産性」という式で表すことができます。これから日本では人口が減るので、生産性を上げないと経済の規模が縮小していきます。これは、かけ算さえ知っていれば誰にでも理解できる簡単な事実です。

人口が減っても高齢者の数は減らないので、年金や医療費をはじめとした社会保障費の負担は減りません。そのため、日本の場合、経済規模を縮小させてしまうことは絶対に許されないのです。

生産性を上げるとは、労働者の給料を上げること、そのものです。人件費をGDPで割れば、労働分配率が求められます。つまり、生産性と労働者の給料は表裏一体なのです。

英国銀行は、労働分配率を下げるとデフレ圧力がかかると分析しているので、デフレを早期に脱却するという意味でも、日本は労働者の給料を上げ、労働分配率を高めるべきです。

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  • NO NAMEc309e2ecd7bd
    日本すごい番組に象徴されるように現実を直視する勇気がない臆病な民族性に尽きるかなと。弱いどうしようもない民族ですね。国会見ていても議論はできない、都合が悪ければ強行採決をするの繰り返しでしょう。問題意識を持つ人が少なすぎる。
    up657
    down96
    2019/4/5 05:28
  • NO NAME5c7c17211512
    まさしくご指摘のとおりです。
    低生産性・低所得の中小企業と高生産性・高所得の大企業。
    最低賃金を徐々に上げる政策によって、中小企業主の意識改革が必要です。
    頭の弱い経営者は淘汰され、強い経営者が生き残るのが正しい姿です。吸収合併により企業規模を拡大せざるを得ないでしょう。
    up498
    down58
    2019/4/5 05:44
  • NO NAME8a43f42ffbbc
    一言で日本の難点をまとめると「ムラ社会」だ。他人の顔色を見るばかりで改革できない。出る杭は打たれるので表立って対立する事から逃げる。だから対症療法の玉虫色の案しか出せないし、事なかれ主義になり前例主義で同じ失敗を繰り返す。第二次大戦のインパール作戦では作戦会議において、将校が作戦が失敗するとわかっていても異議が出せず、顔色を見てわかって欲しかったとの手記が残っている。これは今の日本と無関係の話ではない。現代の日本人も同じことを繰り返している。全然進歩していない。敗戦の理由も今の日本の凋落も究極すれば全く同じなのだ。つまり、合理的な判断よりも、組織、ムラ社会の不都合な論理が優先されてしまう。沈みゆく泥舟だとわかっていても空気を読んで同調圧力に屈し自己保身を図るだけ。寄らば大樹の陰、長いものには巻かれろ、付和雷同を繰り返しているだけなのだ。ムラの空気による支配が続く限り日本はまた負けるだろう。
    up399
    down34
    2019/4/5 06:14
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