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中日春秋(朝刊コラム)

中日春秋

 『博士の愛した数式』などの作家、小川洋子さんが小惑星探査機「はやぶさ」の名前をつけた人は「偉いと思う」と書いていた

▼単なる形式的な番号名ではなく鳥の「はやぶさ」という名前を得たことによって物語になるという。「私の中では、勇敢な鳥が、宇宙の漆黒を旅している。宇宙の起源が解き明かされる喜びと、一つの物語を得る喜びは、等しく私を幸福にしてくれる」-

▼小川さんが書いているのは初代の「はやぶさ」のことだが、弟の「はやぶさ2」の世界初の快挙に人はどんな物語を見るか。小惑星りゅうぐうに金属弾を衝突させることに見事、成功した。これによってクレーターが作られた可能性が高く、ここから太陽光線の影響を受けていない地下の試料が採取できる

▼衝突で小惑星から岩石がカーテン状に飛び散る画像。まるで巨大な竜が飛翔(ひしょう)していくかのようである。追い立てられた竜が潜んでいた穴。その奥に地球誕生の秘密が隠されているかもしれぬ

▼飛散した岩石から退避する動作は地球からの操作ではなくプログラムによる自動制御で行われている。初代は通信が一時途絶するなど祈りと歓喜の物語だったが、弟の方は今のところ、技術の確かさに驚くばかりの物語である

▼技術開発には東日本大震災で被害を受けた福島の中小企業も携わっている。困難にも立ち上がる人の努力と夢の物語でもある。

 

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