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福島県いわき市に水素ステーション開所!新エネルギーの地産地消を目指して、地元の企業が先陣

いわき鹿島水素ステーション

3月5日に開所式が行われた「いわき鹿島水素ステーション」。トヨタ自動車のFCV「MIRAI」24台がずらりと並んだ

水素社会の実現に向け、官民一体となって取り組みを進める福島県いわき市で、県内初となる定置式の水素ステーションが営業を開始した。手掛けたのは、地域に根ざし、ガソリンスタンド等を経営する総合商社・根本通商。その先進的取り組みを紹介する。

文/佐藤 淳子 撮影/村上 宗一郎 デザイン/弾デザイン事務所 企画・制作/AERA dot. AD セクション


 3月5日、福島県いわき市に定置式水素ステーション「いわき鹿島水素ステーション」がオープンした。開所式では、真新しいステーションを背景にトヨタ自動車の燃料電池自動車(FCV)「MIRAI」がズラリと24台整列。この光景に、水素社会実現を目指すいわき市の“未来”を見た人も少なくなかったのではないだろうか。手掛けたのは、1949年の創業から一貫して地域に根ざし、ガソリンスタンド等の事業を続けてきた総合商社・根本通商だ。

水素事業参入のきっかけはトヨタ「MIRAI」の発売

根本克頼社長
根本通商株式会社 根本克頼 社長

1962年、福島県いわき市出身。横浜国立大学経営学部卒業後、伊藤忠商事入社。後に、根本通商(49年創業)入社。2002年、社長に就任。セメント、石油など既存事業を受け継ぐ一方で経営の多角化を進める。いわき商工会議所副会頭。

 創業者である父親が掲げた「地元密着」「お客さま第一」の方針を受け継いだ根本克頼社長は、石油や生コンクリートなど従来の事業を拡充する一方で、ガソリンスタンド、レンタカー、風力発電事業といった分野にも手を広げ、多角経営に成功している。

 その根本社長が水素に関心を抱いたのは2000年に入った頃。次世代エネルギーとして有望視される水素は、地球上に無尽蔵にあるうえ、発電の際に排出されるのは水だけで、二酸化炭素を出さない「究極のエネルギー」とも呼ばれる。化石燃料の将来性を危惧する声の高まりとともに「いつか水素社会が来る」との思いは年々強くなっていくが、事業化までには時間を要した。現実味を帯び始めたのは、「トヨタ自動車の『MIRAI』の発売(14年末)がきっかけだった」と根本社長は語る。

 エネルギーの多様化と、地球温暖化抑制に向けたCO2排出量削減が急務の今、水素をエネルギーとして活用する水素社会実現に向けた動きは、世界各国で進行中だ。日本政府も、水素エネルギーを利用したFCVを2030年に80万台、水素ステーションを900カ所に増やすことなどを掲げた「水素基本戦略」を打ち立て、水素事業への取り組みを強化している。16年には、政府が福島県を拠点とする「福島新エネ社会構想」を立ち上げた。構想の一環として、浪江町に再生可能エネルギーを使った水素製造プロジェクト「福島水素エネルギー研究フィールド」の建設が始まり、ここでつくられた水素を、東京五輪で使うことも目指している。このとき根本社長が考えたのが、「福島県でつくった水素を東京に運ぶだけでなく、県内でためて使う仕組みをつくってもよいのではないか」ということだった。福島県内での「エネルギーの地産地消」である。

JHyM参画で水素事業の早期自立を図る

 こうした動きを加速させるため、18年2月に発足したのが日本水素ステーションネットワーク合同会社(JHyM/ジェイハイム)である。水素ステーションのネットワークを構築することでユーザーの利便性を高め、FCVの台数を増やし、水素ステーション事業の自立化を促す、という好循環をつくり出すのが同社の使命。設立メンバー11社には、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカー、インフラ事業者、金融投資家等が名を連ねた。発足から1年を経た今、さらに5社の金融投資家等と2社のインフラ事業者が加わり、多様な業種と数の広がりを見せ、参画企業は18社となった。

 根本通商はその事業者の一社だ。

 「設立メンバーは大企業ばかり。我々のような地域密着の中小企業の参画には躊躇もありましたが、逆に名を連ねることに魅力も感じました。自動車燃料が電気・水素と多様化していくなかで、エネルギー充填に時間のかかる電気ではなく、水素のほうがガソリンスタンド事業者には合っている。いずれ手がけることになるなら今やろうと思い切りました」

 懸念は、需要が十分あるか否か、つまりFCVの普及だ。こうした議論は「卵が先かニワトリが先か」のジレンマに陥りがちだが、根本社長は先陣を切ってチャレンジする道を選ぶ。そこには、地域の将来を思う強い気持ちとともに、当然のことながら事業化への可能性も感じていた。

「MIRAI」に水素を充填する根本社長
FCV

(上)FCVは、非常時の電源としても利用可能だ。開所式では「MIRAI」の電気を使ってコーヒーが振る舞われた

(左)「MIRAI」に水素を充填する根本社長。ガソリン車の給油と要領は変わらない。

 その要因の一つが、県や市など地元自治体の姿勢だ。新エネ社会構想などにより、地元では新エネルギーへの理解と、水素事業に関わる助成制度などの取り組みが進んでいた。福島県といわき市は燃料電池(FC)バスやFCフォークリフトの導入も視野に入れている。

 自動車メーカーとの良好な関係も背景にあった。いわき市が、蓄電池関連産業の集積を掲げた「いわきバッテリーバレー構想」の一環として毎年開催している「バッテリーバレーフェスタ」で、トヨタ自動車の技術者がFCVの動く仕組みを学ぶプログラムを地元の小学生に提供している。同イベントをきっかけに、トヨタの技術者と意見交換するなかで、FCV販売に対するトヨタの積極姿勢も需要拡大を確信させた。

 こうして、根本通商は昨年5月、JHyMに参画、水素ステーションの整備を進めていく。整備に関しては、国と福島県からの補助金に、JHyMからの資金を活用することで、初期投資の負担は軽減された。ステーション開所に関わる申請や手続きは、豊富な経験があるJHyMのサポートが大いに役立った。「当社単独では成し得なかった」と根本社長は感慨深く振り返る。

 運営についても国の補助はあるが、未来永劫続くわけではない。補助のある間に事業の自立化を実現しなくてはいけない。JHyMは、この独自のスキームで事業者の安定運営を支え、早期の自立化を促すのである。

 水素ステーションには、販売とともにステーションで水素製造も行うオンサイトと、ステーション外から水素を運んでくるオフサイトがある。根本通商のステーションは後者だ。将来的には福島県内での水素サプライチェーン構築(つくる、ためる、つかう)を実現し、根本社長が考える「エネルギーの地産地消」を目指している。

2020年は水素認知の年に動き出すタイミングは今

日本地図

JHyMによる
水素ステーション整備構想

2020年3月末までに80カ所の水素ステーションを整備するのが目標。4大都市圏を起点に、全国に拡大していく。

※青色は、水素ステーションがすでに整備されている地域。楕円の枠は、JHyMによる水素ステーションの整備拡大イメージ。

 今回の開所にあたっては、根本社長が副会頭を務めるいわき商工会議所の呼びかけで、18の会員企業と団体がFCVを購入した。開所式の壮観はこうした地元の協力の賜物だが、そのうち3台は根本通商が購入したものだ。

 「娘を同乗させたら、『普通の車だね』と言われました(笑)。でも、この『普通に走れる』ことこそが大事なのです。私自身は、気体で車が走っていることが信じられない気持ちでした。これが当たり前の社会を、いち早くいわきで実現したい。そうすれば世界も注目するでしょう」

 もともといわきは、エネルギーに所縁の深い土地だ。かつては常磐炭田で栄え、小名浜港は石油の物流基地となっている。「時代に合わせたエネルギーの拠点として発展してきたいわきで水素事業を進め、世界に発信する。このこと自体に意味があると思います」と根本社長は言う。

 現在、日本全国の水素ステーション100カ所の9割が東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市圏に集中している。政府は20年までに全国160カ所の水素ステーションを整備することを目標としているが、今後の課題は数だけではない。地方の中核都市、政令指定都市にも拡大し、各都市を結ぶ地点にもネットワークを形成していくことが必須となる。

 「国内101カ所目となるいわきの水素ステーションは、JHyMが手がけた第1号です。全国津々浦々への拡充を担う我々にとって、根本通商のように地域に根付いた企業が手を挙げてくれたことは大きな前進」。JHyMの菅原英喜社長はこう語り、同じ志をもつ企業の参画を待望する。

 東京五輪が開催される20年は水素がエネルギーとして広く認知される年になると見る関係者は多い。

 「ある時点を境に一気にFCVは広がるでしょう。ステーションは立ち上げから開所まで約1年半かかる。先を見越せば、今が動き出すタイミングだと思います」。根本社長は、続く企業に力強いエールを送る。

JAPAN H2 MOBILITY JHyMとは?

日本水素ステーションネットワーク合同会社
=ジェイハイム

水素ステーション整備に向け、自動車メーカー、インフラ事業者に加え、金融投資家等が協業する世界初の取り組み。2018年2月、11社による合同会社として発足した(2月26日現在、18社)。FCV需要を最大化するための整備方針に基づいて事業者を募り、水素ステーションの戦略的整備と効率的な運営に貢献することで、事業の早期自立を目指す。

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