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パリで過熱する日本ブーム 300万人が訪れた「ジャポニスム2018」の立役者たち

2019年04月05日(金)19時00分
西川彩奈(フランス在住ジャーナリスト)

「文化が与える『憧れ』の力は非常に大きい」。ジャポニスム2018を通し、「分裂」の道を歩む世界に「和」を


これらの「日本ブーム」を巻き起こしている立役者が、「パリ日本文化会館」だ。同会館はセーヌ川に面し、エッフェル塔を見渡す美しい場所で、日本文化の展示、講演、アトリエ教室などの事業を行い、子供から大人まで幅広い層のパリっ子に「日本文化」を発信している。

このパリ日本文化会館で館長を務めるのが、過去に丸紅で経済研究所顧問や初代在ブルキナファソ大使を務めた杉浦勉氏だ。同氏は、「文化力」を通した企業戦略や外交に取り組んできた。館内でも従業員一人一人に柔らかな物腰で挨拶をする姿が印象的、そんな杉浦氏に「フランスでの日本人気の現在、そして未来」について伺った。

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パリ日本文化会館館長の杉浦勉氏。(Photo: Ayana Nishikawa)

――「ジャポニスム2018」はフランス各地の著名な美術館や施設で開催されました。しかし当初、美術館への交渉には大変なご苦労があったそうですね。

2016年の5月にフランソワ・オランド前仏大統領と安部首相が、フランスで「日本文化を紹介する一大イベント(ジャポニスム2018)」の開催に合意しました。その後すぐにパリ各地の施設に出向き、展覧会開催の交渉や打診をしましたが、ジャポニスム2018の準備は"ドラマ"と"苦労"の連続でした。

どの美術館も数年先まで展覧会の計画が既に入っており、準備に取り掛かっている。そのような状況で急に日本文化の展覧会を間に入れてもらうのは、非常に困難でした。

例えば結果的に7万5千人の来場者を4週間で動員した「若冲」展。当時、伊藤若冲はフランスではまだ知名度が低い作家でした。パリの大きな美術館では、1日当たり約2500人入らないと採算が取れません。また、フランスの展覧会の場合は3~4カ月間開いてこそ来場者がどんどん増えていくのですが、4週間の展覧会では期間が短すぎる。複数の施設から「人数が集まるか不安だ」、「自信がない」と断られました。

会場が見つからずに困り果て、一度すでに断られたプティ・パレ(パリ8区に所在する美術館)の館長に再び相談に伺ったところ、各主催者と交渉し、3年に渡ってすべての展覧会を3カ月ずらして「若冲」展を開催してくださることになりました。プティ・パレの館長のご理解の深さには感謝であり、感激でしたね。このような「ジャポニスム"裏"のドラマ」が多々ありました。

――パリでは、どのくらい日本文化が浸透していると感じられますか。

先日もタクシーに乗ったらアルジェリア人の運転手さんが「日本文化がすごく好きだ」と言ってくださり、「今年の夏は家族で日本へ旅行するのを心待ちにしている」と楽しそうに話していました。一方でフランス人の有識者の間でも「ジャポニスム2018」が話題になっています。

また、最近は若い世代が漫画をきっかけに、日本舞踊や雅楽など伝統文化へ興味を持つケースもあるようです。そういう意味では、非常に広範囲に浸透しているな、と感じますね。

――フランス社会の幅広い層の人の心に訴えかける――。日本文化のどのような点が、フランス人の美学に"響く"のでしょうか。

まず、フランス人は自国にない"日本特有"の感性に新鮮さを見出しているのかと思います。たとえば「人々の和を重んじる」ところ。或いは「自然を愛でる感性」などですね。

ジャポニスム2018全体を通じ、「自分が真っ先」という考え方が蔓延して世界が分裂の道を歩むなかで、「日本的な調和の取れた世界」をより多くの人に知ってもらいたいという意向が出発点としてあったと思います。

一方でフランス人と日本人に共通する国民性が、"好奇心"と"繊細さ"。特にお互い、自分にないものを求める強い好奇心を持っています。

例えば食においても、フランス人パティシエのピエール・エルメ氏は日本に70回も行ったけれども、「訪れるたびに新しいものが見つかる」と仰っています。今は"梅干し"に可能性を見出されているそうですが。日本人シェフがフランス料理店を営むケースも増え、2国間での"学び合いの精神"がうかがえます。

――杉浦館長は世界中のあらゆる層の人たちと文化交流をされています。今後、日本人が海外の人と接する際に大切にするべきことを教えてください。

2020年には、日本における「日本博」が開催されます。

今まで日本では"西洋のものを取り入れる"という明治以降の風潮がつよかった。今後、日本文化を知り、「こんなに素晴らしいんだ」と誇りを持つことが、国際交流をするうえで重要です。ただ、それが手前味噌になって他者を受け入れなくなると、逆効果にもなります。

文化の底流に流れる伝統的な文化が新しいものと出会ったときに、はじめて新しい創造が生まれる。その繰り返しが必要かと思います。

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