「投票用紙や投票箱は武器ではない」。スペインのカタルーニャ自治州で活動する文化振興団体「オムニウム・クルトゥラル」のジョルディ・クシャント前代表が、ウルグアイ紙に発表した手記で訴えている
▼カタルーニャでは2017年10月、独立の是非を問う住民投票で独立賛成が9割を超えた。だが中央政府は投票を違憲としている。クシャント氏は投票を呼び掛けたことなどが騒乱罪に当たるとして逮捕され、拘束は1年以上に及ぶ
▼騒乱罪で有罪が確定するには武器を使って暴力を振るったことが立証される必要がある。しかしクシャント氏は「唯一の暴力はスペイン警察が投票に訪れた市民に対して行使した」と主張する
▼中央政府が派遣した国家警察は投票箱を押収し、住民を警棒で殴るなどして混乱を招いた。スコットランドの自己決定権を尊重し、住民投票を認めた英国政府とは対照的だ
▼研究者らは、中央政府が住民の声に耳を傾けなかったことでカタルーニャの独立支持者が増えたと指摘する。投票を弾圧したラホイ前首相の国民党政権は「独立主義を量産する工場」ともいわれた
▼県民投票で反対の民意が示されたにもかかわらず、名護市辺野古の新基地建設を強行する日本政府にも通じる。手記は「スペインの民主主義は脅かされつつある」と警鐘を鳴らした。日本国民も人ごととは言えない。