<社説>宮古島ミサイル配備 同意なき建設計画撤回を

 陸上自衛隊の警備隊が配備された宮古島市上野野原の宮古島駐屯地に、住民に説明のないまま中距離多目的誘導弾(ミサイル)や迫撃砲が保管されていた。ミサイルを置かないよう求めていた地域住民を欺くだまし討ちであり、決して許されるものではない。

 岩屋毅防衛相はミサイルや迫撃砲弾をいったんは島外に搬出した上で、駐屯地から離れた市城辺の保良地区に整備する弾薬庫に、最終的に集約させる考えを示す。だが、保良地区でも地域住民は弾薬庫の建設反対を訴えている。住民の同意のない弾薬庫計画自体を直ちに撤回すべきだ。
 宮古島駐屯地には3月26日に警備隊380人が配備され、防衛省では引き続き2019年度末にも地対艦・地対空ミサイル部隊を順次配備していく予定だ。
 宮古島の自衛隊配備は島を二分する賛否の議論が今も続いている。17年1月の市長選で配備を容認する下地敏彦氏が3選したことで駐屯地の建設着工、警備隊の配備開始へと進んだ形だ。
 だが、当初は駐屯地の建設地である千代田地区の野原部落会や千代田部落会が配備反対決議を可決し、配備の中止を下地市長に要請していた。
 防衛省が開いた地元説明会では、地域の住民から「千代田地区にミサイル弾薬を置くのか」と施設配置に関し不安の声が上がった。そのたびに防衛省側は駐屯地で保管するのは小銃弾や発煙筒との説明を繰り返し、「誘導弾を保管する弾薬庫は整備しない」と地域に危険はないという認識を強調していた。
 しかし、実際に警備隊が配備されるや、同隊が使うミサイルや迫撃砲の装備も一緒に宮古島駐屯地に配備されたことが判明した。2日に岩屋防衛相は「弾薬の保管について明示的にしっかり説明していなかったのは事実だ。おわび申し上げたい」と保管の事実を認めて謝罪したが、地元への説明が「不十分だった」で済まされる問題ではない。
 国民の生命・財産の保護を掲げる防衛省が、砲弾や火薬類という危険物の管理で事前の説明と異なる運用を行うのは言語道断だ。都合の悪い事実を伏せ、部隊配備に向けて既成事実を積み重ねてきたとしか言いようがない。
 防衛省は今後、保良鉱山に整備する弾薬庫の完成後に、地対艦・地対空ミサイル部隊の装備とともに警備隊の装備も集約して保管する考えだ。
 だが、鉱山に隣接する保良部落会が17年12月に、七又部落会も昨年10月に弾薬庫の配備反対を決議している。弾薬庫建設に反対する地元が新たな装備の押しつけを受け入れられるはずもなく、何より今回の一連の対応により防衛省の説明姿勢に対する不信感が広がっている。
 ほかにも隠していることはないのか。情報の公開が不可欠だ。部隊配備のスケジュールありきで建設計画を進めることは許されない。