■自作シンチレーション検出器の作り方と性能評価 / かにこむ青木

2012年 4月11日:更新
2012年 4月10日:開設
かにこむ 青木康雄


注:本コンテンツ中に出てくる「ポケットガイガー」「ポケガ」とは、radiation-watch.orgが企画販売するスマートフォン接続用の線量計「PocketGeiger」(Type-1)のことを指しています。2012年4月より秋月電子で取り扱いのはじまった「ポケットガイガーキット」とは異なりますのでお間違いなきよう。


今、ようやく値も落ち着いてきた線量計。でも、高性能なシンチレーション式の線量計はやっぱ高いです。GM管式の線量計は随分前から自作して遊んでいたのですが、街中に普通に放射性セシウムが落ちている今のこのご時世、シンチレーション式の線量計も欲しいなぁ・・・と。
堀場 Radi PA-1000 や Polymaster PM1703-MO1 を買ったのですが、買っただけでは飽き足らず、なるべくお手軽に、かつ、安く、しかも、ある程度の精度を持つシンチレーション式の線量計を自作しようと思い立ち、2011年末から実験試作を始めました。気が付けば堀場 Radi PA-1000 を2台買ってまだお釣りが来るほどの実験投資を行ってしまっていました。あぁぁぁ・・・

そんな試行錯誤の連続状態な、自作シンチレーション検出器の作り方、性能評価結果のご紹介です。

検出器の駆動プラットフォームにはポケットガイガーKit Type-1(以下ポケガ)を使っています。もし同じことをされる場合は、必ず電池外付けのType-1を買ってください。電池不要のType-2は、この手の改造ベース基板には向きません。
ポケガを分解して基板を取り出し、PDを全部外します。私はいろんなPDで性能評価するために、PDがあった場所にICソケットを載せ、いろいろなPD(+CsI)を付け替えて実験評価できるようにしました。が、単にポケガの高感度化を行うだけでしたら、こんなことするとノイジーになるだけなので自作検出器PDの足を直半田したほうがいいです。



非常にハイゲイン、ハイインピーダンスな回路なので、電池を含めた基板全部を真鍮板ででっちあげたシールドケースに入れてしまいます。この手のシールドにはよくアルミ板が使われますが、私ははさみで切れる 0.3mm ぐらいの真鍮板を好んで使います。なんと言っても半田付けできる点が超絶便利です。
部品代は全部合わせて1万円以内。

ポケットガイガーを使わないでも、いきなりオペアンプで駆動回路を自作してももちろん可です(その道チョイスの人はこちらにどーぞ)。


■身の回りのもので作る、現時点でbestな自作シンチレーション検出器

そりゃ光学セメントとか使えるなら使いたいところですが、なかなか普通には手に入りません。なんとか身の回りにあるもので性能のよいシンチレーション検出器が作れないものか・・・
話は結論から・・・ということで、今まで数多くの試行錯誤を繰り返し、多くのPDやCsI結晶を犠牲にすることで得られた知見から、私が現時点でbestと考える自作シンチレーション検出器の作り方をご紹介します。

●用意するもの
■自作シンチレーション検出器性能評価

ポケガ基板ベースで評価した結果と、自作OPAMP回路(別頁で紹介)で評価した結果をご紹介します。



■今までに自作試行したシンチレーション検出器について

雑談のノリでつらつら書いてみます。

キモは、PDとCsIの接合です。
はじめのうちは、巷の製作記事を参考に、放熱用の透明シリコングリスを使って、PDとCsIを光学的に結合することで使っていたのですが、これ、はじめのうちはよいのですが数日経つと動作が不安定になってきます。
結局これ、接着しているわけではなく、PDとCsIの間に入っているシリコングリスとテーピングにより密着しているだけなので、なにかの拍子にすぐはがれかかってしまうのです。

はがれかかると一気に放射線計数率が低下し、全く使い物になりません。

そこで、光学的にちゃんと「接着」するためにはどうしたらいいのか。吸湿で固化するタイプの接着剤は、CsIの光伝導面の潮解を誘発しそうなので却下。光学的に伝達ロスが低くなければならず、しかも、身近にあるもので・・・

いろいろ考え実験した結果、今の時点のbestな接着方法が「ピタガラスによる接着」ということです。